February 10, 2012 / 6:57 AM / 8 years ago

焦点:最悪期脱しつつある日本のETF市場、拡大には課題も

[東京 10日 ロイター] 日本の上場投資信託(ETF)市場が最悪期を脱しつつある。取引所主導で上場銘柄を増やしてきた効果が出始めており、売買代金や資産残高が徐々に増加してきた。証券各社間で商品設定の競争が高まっており、コモディティや新興国株など投資対象を多彩に組み込んだ海外商品を販売することで投資家のすそ野が広がっている。

2月10日、日本の上場投資信託(ETF)市場が最悪期を脱しつつある。その一方で、本格拡大には課題も。昨年2月撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)

ただ、さらに流動性を高め市場をさらに拡大するためには国内機関投資家の本格的な参加が不可欠だ。

<回復する日本のETF市場>

2011年のETF市場は、売買代金でみるとニューヨークとナスダック(米国)が9兆ドルと圧倒的だ。欧州はロンドン、ドイツ、ユーロネクストで8200億ドル、アジアは韓国、香港、中国、日本、台湾、シンガポール、マレーシアを合計しても3230億ドルにとどまっている。

米国は機関投資家やヘッジファンドがデリバティブ商品の代替として、商品数が充実しており、市場が確立されている。一方、アジアは「資産運用が高度化していないので米国に比べかなり立ち遅れている」(大手証券)という。

ただ、ブラックロックによると、2011年のETF市場は世界全体の資産残高が対前年3.0%増となったが、地位別では米国5.5%増、欧州6.2%減に対し日本は8.6%増。日本ではリーマン・ショック後に市場規模が大きく収縮したが、2000年代半ばごろから、証券取引所主導で商品ラインナップの拡充を急いだ効果がここにきて出始めており、取引量が増えてきた。

2011年の東証1部売買代金は341.6兆円と2007年の735.3兆円の半分以下に落ち込んだが、ETFの取引量は回復しつつある。世界取引所連盟(WFE)のデータで、ETFの売買代金は東証・大証を合わせると2007年が5兆円。2009年と2010年には4兆円程度に減少したが、2011年は4.7兆円に回復した。

投資信託協会のデータによると、純資産総額をみても2011年は2.7兆円で2007年の3.9兆円には及ばないものの2009年の2.3兆円を底に2年連続で増加している。東証では「現物株に比べ最悪期を脱した」(上場審査部)とみている。

また日銀は2010年12月以来、資産買入等基金による指数連動型上場投資信託受益権(ETF)を8475億円購入しており、需給面で大きく寄与したことは事実だ。みずほ総研シニアエコノミストの武内浩二氏は「ETFの価格水準を押し上げ、それによって投資家を引き付けた可能性がある」と話す。ただ日銀の購入はあくまで緊急措置であり、日銀に頼らない市場拡大が求められている。

<新商品投入で取引量拡大ねらう東証>

東証は新商品の投入で市場の拡大を図ろうとしてる。投入検討を始めたレバレッジ型・インバース型は、ある指標を「原指標」としてその騰落に一定の掛け目を乗じ、原指標の騰落を増幅・反転させた指標に連動することを目的とするETF。3月上場を可能とするよう規則の整備を進めている。インデックスが下がると儲かるインバース型は空売りの代わりに使えそうだとされ、投資家は「取引が活発化するのではないか」(企業年金を運用する担当者)との期待が出ている。

東証にとってETFは取引量回復のカギだ。「韓国では上場本数はETF全体の1割であるにもかかわらず、売買代金は8割を占め、取引が活発」と東証の斉藤惇社長は期待を寄せる。東証は2011―13年度の中期経営計画(3年間)で東証に上場する国内・海外のETF売買代金について、株式売買代金比で足元1%から5%への拡大を目指している。またETFの国際的動向を踏まえた上場制度の整備等に関してパブリックコメントを募集中だ。

ETF先進国の米国では、リーマンショックの際、ミューチュアルファンドからは資金流出が相次いだが、ETFには資金が純流入した。金融危機の最中、流動性の高いETFが活用されたためだ。欧州の債務危機問題が長引くなか市場では「個別銘柄投資よりも、指数で市場のエクスポージャーを持つ方が流動性の観点からも有効」(国内投信)との指摘も出ている。

<個人投資家に人気の海外ETF>

一方、個人投資家の間では海外ETFへの人気が高まっている。低迷する日本株を尻目に、リーマンショック後、戻り高値を更新する海外市場や、今後の世界経済の成長をけん引する新興国市場のエクスポージャーを持ちたいと考える投資家が増えているためだ。

楽天証券によると、同社の海外ETF残高はリーマンショック以降、約3倍に増加した。「個別株より指数を買う個人が増えている。為替が円高傾向であることも個人の海外投資を後押ししている」(楽天証券外国株式事業部長、兼国際ビジネス推進室長の新井党氏)という。楽天証券が実施する個人投資家サーベイでも、ETFに興味を示す投資家のウエートが2割を超え、新興国や商品への興味は高い。

あすかアセットマネジメントのインベストメントストラテジスト、岡田章昌氏は日本のETF市場拡大について「個人投資家が長期投資で投信よりも手数料が割安なETFを進めることで普及してきた」と解説する。最近では、国債取引では運用益を上げられない地銀がETF商品に関心を示しているとの指摘もある。

ただ、日本でのETFの市場拡大については楽観視はできない。現時点では流動性が十分ではなく、機関投資家の関心が低いためだ。

「市場全体のボリュームが出てこないと結局は流動性が生まれない」とあすかAMの岡田氏は指摘する。「昨年10月から11月にかけての株価下落局面で日銀がETF買いで下支えしたのに合わせるように生保が数億円買った程度だ」(欧州系証券の株式トレーダー)という。

ある大手生保は全体の数十兆円規模の運用資産のなかで、新興国の株を保有する際に海外のETFを外国株として購入することはあるものの、国内株のETFに関してはわずかだという。広報担当者は「ETFだから買わないということはないが、日本株に関しては主力の個別銘柄を多く保有しており配当を含め運用益を得られている」と述べる。

十分な運用益を確保できない状況下では、個人をはじめ機関投資家の間でも、比較的コストの低いパッシブ運用が選好される傾向にある。ETFには指数連動銘柄であれば、多くの銘柄を保有しなくても保有資産を一括管理できることなどのメリットがあるほか、流動性の高い海外ETFが多く上場すれば機関投資家の需要も高まる。流動性拡大と市場拡大を同時進行させることができるかが今後の課題だ。

(ロイターニュース 吉池威 岩崎成子 編集:伊賀大記)

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