March 23, 2012 / 9:22 AM / 8 years ago

コラム:中国は資本主義も模造品

Ian Bremmer

3月21日、Ian Bremmer氏が、中国の資本主義は形はそれらしく見えるかもしれないが、依然として世界最大の資本主義経済である米国とは似て非なるものと指摘。写真はワシントンで昨年1月撮影した米中の国旗(2012年 ロイター/Hyungwon Kang)

中国の資本主義システムは、果たして米国のそれより優れているのだろうか。私自身は、こと資本主義システムに関しては、米国が依然として成功のお手本であるということに疑いを持っていない。しかし最近、シンクタンクや投資家や政治家の間に、資本主義の展開という点で、中国が米国を打ち負かしつつあるという考えを発信する人が出てきた。

もっと正確に言えば、こうした人たちは、規制過剰なうえに肥大化し、非効率かつ低成長な米国経済より、中国独自の中央計画的な資本主義はうまく回っていると主張する。米国の資本主義は先進国のコスト構造によって行き詰まっており、安全な投資先を求めて世界の資金が向かうような競争力ある投資の中心地には2度となれないという。

でたらめだ。

中国は確かに、過去10年で飛躍的に成長してきた。近代化や工業化を前代未聞のスケールで成し遂げたのは、国として大きな名誉だ。13億人の人口を抱える同国には、まだ大いに成長する(追いつく)余地もある。しかし、法の支配や透明性、言論の自由など、米国経済を動かす複数の重要な要素がこの国には欠けている。中国経済の大部分は、国家が計画し、国家が所有し、国家が運営している。中国政府は自由市場を真に体現する手段としてではなく、国家全体を効率的に支配するという欲求を満たすために資本主義を利用している。

つまりそれは、国家が主役を務める、国家の、国家による、国家のための資本主義といえる。米国が「純粋な」資本主義に折り合いをつけて、社会的セーフティーネットや従業員や製品の安全などを優先させるのとは好対照だ。

中国はまだまだ成長できるが、その独特な資本主義にはもう1つ問題がある。中国の生産は米国に比べ、はるかに不安定でかつ予測が難しい。中国人民銀行が資金を保有している場所は、流動性が高く、恐らく最も安全な米国債だ。もし中国が米国債よりも良い外貨準備の運用先を見つけられるなら、必ずそうするだろう。しかし、実際には見つけることはできない。もし他のアジアの国々が、中国は全てをお見通しだと考えているなら、なぜ皆(あのミャンマーでさえ)、米国が最近発表したアジア重視の姿勢を温かく歓迎したのだろうか。

最近の調査では、中国の億万長者の50%以上が、米国での生活を望んでいることが示された。こうした富裕層が理性ある人たちだと仮定しよう。彼らは、安定した生活環境やビジネスチャンス、政府に管理されない資本を求めて米国に来たとしよう。中国の経済成長の恩恵を最も受けた、数少ない幸運な人たちだ。もし彼らが賢く、米国に住むことを選ぶのであれば、米国のシステムの方が中国のそれより優れていることを示す明らかなサインになる。

中国の経済モデルが抱える大きな問題の1つは、いつ何時でも、国家が企業に介入でき、自分たちの目的のためにゆがめることができる点だ。決算の粉飾、損失の隠ぺいや資金洗浄のほか、会社を丸ごと倒産させることさえできる。中国には、グーグルやフェイスブック、ツイッターを模倣したハイテク企業があるが、こうした米国企業は中国で本格的に活動できていない。中国が求めているのは、革新的なハイテク企業が花を咲かせる環境ではなく、こうした新興企業の国営版なのだ。そこでは起業家精神が育つことはない。

自動車から時計、iPhone、ソーシャルネットワークに至るまで、ありとあらゆる外国製のものをコピーする中国だが、国家資本主義の微調整にどんなに優れているとしても、真に自由な資本主義経済を成し遂げることはできない。

米国では、次に何が大きな産業になるのかは誰にも分からず、それは素晴らしいことだ。シリコンバレーはまた新製品を発明するかもしれない。オイルサンドやフラッキング(水圧破砕)による天然ガス採取法は、抽出技術のさらなるブレークスルーの恩恵を受けるかもしれない。電気自動車や太陽光パネルは一世代中に桁違いに伸びるかもしれない。大富豪のビル・ゲイツは、前途有望な明日の新技術に投資する可能性を示している。まったく世に知られていないアイデアが、大学や政府の研究室から生まれるかもしれない。いずれにせよ、どんな形であれ、米国経済にはこうした発見をこれからも期待できる。iPhoneの量産は雇用を増やすかもしれないが、21世紀に必要な新たな産業や経済の土台にはならない。

要するに、過去数年の出来事を拡大解釈し、米国経済の勤勉さや回復力はもう終わりだと案じるのが流行なのだ。米国は確かに分岐点にある。しかし、それは行き止まりにいるのとはまったく違う。

米国は、世界のどの国にも劣らないほど創造的破壊を行う。考え方を根本から変えるようなイノベーションで、世界を何度も何度も変えていく。中国は、粗削りな金融システムを国家統制経済にはめ込むことで、ある程度は良い結果を出せると分かった。資本主義を少しだけかじることで、自分たちが裕福になれるということを知った。しかし結局のところ、国家資本主義は、状況が厳しくなっても全体主義に頼らない本物の資本主義のイミテーションにすぎない。iPhoneのコピー商品と同様、中国の資本主義は、形はそれらしく見えるかもしれないが、依然として世界最大の資本主義経済である米国とは似て非なるものなのだ。

(21日 ロイター)

*このコラムは、ニューヨークで3月13日に開催された討論会「China Does Capitalism Better Than America」を基にしたものです。

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*筆者の略歴を追加して再送します。

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