April 16, 2012 / 8:57 AM / 7 years ago

コラム:橋下市長が強める反民主カラー、消費増税法案の採決先送り機運も

田巻 一彦

4月16日、橋下・大阪市長が関西電力大飯原子力発電所の再稼働問題を契機に、野田佳彦首相と民主党政権への対決姿勢を強めている。写真は2009年7月、都内で撮影(2012年 ロイター)

[東京 16日 ロイター] 橋下徹・大阪市長が関西電力(9503.T)大飯原子力発電所の再稼働問題を契機に、野田佳彦首相と民主党政権への対決姿勢を強めている。

このまま野田内閣の打倒を声高に主張する展開になれば、野田首相が政治生命を賭けて成立を期している消費税増税法案の動向にも大きな影響が出かねない。橋下市長が民主党政権との対決色を鮮明にした場合、解散回避のムードが民主党内に強まって、消費税増税法案の採決先送り機運が台頭し、通常国会の会期大幅延長というシナリオに注目が集まるだろう。同法案成立の可能性が揺らげば、海外投機筋による日本国債の仕掛け売りリスクも高まると予想する。

<原発問題、総選挙の争点化に思惑>

橋下市長は13日、政府が大飯原発再稼働の方針を決めたことについて「次の選挙で民主党政権に代わってもらう」「民主党政権には反対でいく」と記者団に述べた。15日に「大阪維新の会としては、民主党とは連携しない」と発言。大阪維新の会幹事長の松井一郎・大阪府知事は14日の緊急幹部会後、記者団に対し、民主党と全面対決になるが仕方がないとの見解を表明したという。

16日になっても橋下市長の舌鋒は鋭く、大飯原発再稼働問題での政府対応は「国家的危機」と指摘。共同通信によると、大阪維新の会が最重要課題としてしてきた「大阪都」構想より優先すべき課題だとの認識を示した。このことは、もし衆院解散・総選挙が実施された場合、大阪維新の会が原発問題を争点に掲げて選挙戦に臨む可能性があることを示している。

大阪維新の会は、大阪府以外の近畿圏で高い人気を保っており、次の衆院選に近畿圏で幅広く候補者を立てることができれば、かなりの議席を獲得する可能性が出てきている。神戸新聞が今月2日─8日に兵庫県内の有権者を対象に調査を実施。次の衆院選・比例代表で投票する政党について質問したところ、大阪維新の会が24%、自民党が15%、民主党は10%だった。

また、16日付朝日新聞朝刊の世論調査によると、大飯原発の運転再開に対し、賛成は28%、反対は55%と反対が賛成の2倍近い規模に達していた。このまま原発問題を争点に大阪維新の会が衆院選になだれ込んだ場合、近畿圏の地域政党から全国的な政党に脱皮し、200人の当選者を目指すという目標が「過大な目標」でなくなる可能性も出てくる。

<消費増税法案の採決、大幅に先送りのシナリオ>

こうした情勢の変化に、与党議員は敏感になるだろう。衆院解散の可能性が高まる消費税増税法案の衆院採決はできるだけ引き延ばそうという思惑が、民主党内で高まる展開が予想される。鍵を握るのは、輿石東幹事長であると考える。輿石幹事長は15日、橋下市長が民主党政権への対決色を強めたことに対し、「受けて立つ」と述べた。だが、額面通りに受け止めて、選挙態勢を整えるとみるのは早計ではないか。

1つのシナリオとして、消費税増税法案の審議入りを大幅に遅らせ、徹底審議を旗印に6月21日の会期末ぎりぎりまで、同法案の衆院採決に入らないという展開が予想できる。通常国会の会期を今年秋以降まで大幅に延長すれば、衆院解散なしに秋までたどり着けることが可能になる。世論調査での支持率が低いままの民主党議員の多くが内心では、最も望んでいるのがこの解散先送りシナリオではないだろうか。

<法案たなざらしなら、海外勢の日本国債売りも>

だが、そのケースでは同法案がたなざらしになり、野田首相の指導力に陰りが出かねない。政治生命を賭けた同法案の採決ができないようであれば、政権の求心力が弱まり、マーケットでも同法案の成立が危ぶまれる展開になる可能性が高まると予想される。何も決められない日本の政治の実態が、世界の市場関係者の前で一段と明白になり、日本国債や日本株の仕掛け売りに意欲を持っている海外投機筋にとっては、絶好の局面と映るに違いない。

衆院での同法案の採決先送りが現実に起きるかどうかは、輿石幹事長の国会運営における采配にかかっている面がある。別の見方をすれば、野田首相と輿石幹事長の思惑がどのように交差して、政治的な結果が生み出されるのか、という点が大きなポイントになるだろう。

<注目される自民党の動向>

野党第1党のトップである谷垣禎一・自民党総裁が、4月26日の小沢一郎・元民主党代表の政治資金規正法違反事件の判決以降、どのような政治的決断をするかも、今後の政局を大きく左右する。もし、4月末から5月中に内閣不信任案を提出するようなら、民主党内の小沢氏に近い議員の造反次第で、不信任案可決の可能性も出てくる。

不信任案が可決されるなら、野田首相は総辞職ではなく、衆院解散を決断し、消費税増税の是非を国民に問うだろう。そうなれば、解散先送りシナリオは挫折し、政界再編のうねりを伴いながら、総選挙になだれ込むことになる。

橋下市長が大阪で上げた原発再稼働反対ののろしは、後から振り返ると、「暑い政治の季節」が始まった節目として記憶されることになるかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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