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ソニー、今期はエレキ収益化で5年ぶり最終黒字を「必達」

[東京 10日 ロイター] ソニー6758.Tは10日、2013年3月期の連結当期純損益が300億円の黒字になると発表した。液晶テレビ事業の赤字の圧縮とともに、東日本大震災やタイ洪水の影響がなくなることでデジタルカメラやパソコンの回復を見込む。堅調な映画・音楽・金融に頼るだけでなく、不振のエレクトロニクス事業の黒字化を図って、5年ぶりの最終黒字化を目指す。

5月10日、ソニーは、2013年3月期の連結当期純損益が300億円の黒字になると発表した。都内の同社で2009年1月撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)

過去最悪の最終赤字4566億円を計上した前期からの回復を計画するが、会社側の300億円の最終黒字予想は、トムソン・ロイター・エスティメーツによる主要13人のアナリスト予測平均711億円の黒字を大幅に下回った。

13年3月期の想定ドル/円レートは80円前後、(12年3月期は78.1円)、ユーロ/円レートは105円前後(同107.5円)。今期は、1円の為替変動が与える営業利益への影響は、ユーロが60億円。これに対してドルはインパクトはゼロという。

記者会見した加藤優最高財務責任者(CFO)は「今期はエレクトロニクス(エレキ)の立て直しが喫緊の課題」と述べて、今期は、(1)エレキ事業の黒字化、(2)最終黒字化、(3)キャッシュフロー黒字化―を「必達目標」として目指していく考えを示した。

<今期エレキの黒字額は非開示>

今期の連結売上高予想は、前年比14%増の7兆4000億円を見込む。連結営業損益予想は、映画・音楽・金融事業の好調を持続するとともに、エレキの黒字化で1800億円の黒字(前期は672億円の赤字)を計画。営業損益は、アナリスト13人の予測平均1694億円の黒字を上回っている。

営業損益に含まれる構造改革費用は、人員削減にかかる費用中心に750億円(前年同期は548億円)を計画。また、12年3月のエレキ事業の営業赤字額の合計は2500億円だったが「これを今期は黒字にする」(加藤CFO)方針。ただ、今期の連結営業利益1800億円に占めるエレキ事業の利益額は「開示していない」(同)とした。

<テレビは9年連続赤字へ>

13年3月期の液晶テレビ販売は1750万台を計画。12年3月期は1960万台の実績だった。先進国の成熟化や価格下落を受けて数量を絞り込む。営業損益は12年3月期の2080億円(液晶合弁解消の減損損失含む)の赤字に対し、今期は800億円の赤字に圧縮する計画。9年連続で赤字の見込みだが、オペレーションや固定費改善などで収益改善を図り、来期の黒字化を目指していく。

13年3月期の据置型ゲーム「プレステ3」と「プレステ2」の販売計画は1600万台(12年3月期実績は1800万台)、携帯型ゲーム「VITA」と「PSP」販売計画は1600万台(同680万台)とした。昨年12月に発売したVITAは12年3月期に180万台を販売。12年3月期のプレステ3の値下げやハッカー攻撃などによる事業悪化を受けてゲーム事業全体は減収減益だったが、13年3月期は、VITAの売り上げ拡大で増収増益を見込む。

携帯電話事業は、スマートフォンの販売台数増を見込むが、営業損失は残る見込み。12年3月期の携帯事業は、旧ソニー・エリクソンの完全子会社化で評価差益を計上したことで314億円の黒字だったが、この評価差益の特殊要因を除くと、スマホの競争環境悪化で赤字だった。13年3月期のスマホ販売台数は3330万台を計画。前期は2250万台だった。

<前期は非エレキで2000億円超の営業利益>

12年3月期の連結業績は、東日本大震災、タイ洪水、円高進行で売上高が9.6%減の6兆4932億円。さらに営業赤字の672億円は、液晶テレビ事業の赤字計上と携帯事業の損益悪化のほか、リストラなど構造改革費用548億円を計上したのが響いた。これに加え、米国子会社の繰り延べ税金資産の取り崩しで過去最悪の最終赤字に陥った。

12年3月期のエレクトロニクス事業の営業損益は赤字に陥ったが、映画・音楽・金融の「非エレクトロニクス3事業」で合計2024億円の黒字を稼いだ。13年3月期については、映画事業は「増益(前年同期は341億円)」(加藤CFO)、音楽事業は「ほぼ前年並み(同369億円)」(同)の水準を見込む。12年3月期に1314億円を計上した金融事業については「前期比で減少を見込んでいるが引き続き高い利益貢献を見込んでいる」(同)という。

<業績予想の達成可能性に疑問との指摘も>

松井証券のシニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は「営業利益の会社予想が市場予測を若干上回り、株価にはポジティブ。液晶テレビ事業で採算重視の戦略を採っていることは評価できる。ゲーム事業もソーシャル系に押されるなかで携帯ゲーム機『VITA』などを中心にまずまずの販売計画。同社株価は年初来安値圏に沈んでおり、全般相場が落ち着けば、今期見通しを評価して切り返しの動きが期待できるだろう」と評価する声が出ていた。

一方で、インベストラスト代表の福永博之氏は「数字的には頑張っている印象はあるが、具体的に何をやって収益を上げていくのかが見えない。達成できるかどうか疑問がまだ残っている」との指摘も出ていた。同氏は、液晶テレビの収益改善について「固定費改善などでテレビの収益を改善するということだがこれまでのソニーの動きや前期の実績をみる限り信憑性に欠ける」とみていた。

(ロイターニュース 村井令二 布施太郎 取材協力:杉山容俊 ソーフィ・ナイト 編集:宮崎大)

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