May 10, 2012 / 11:02 AM / 7 years ago

デフレ脱却を問う:日銀法改正で物価目標に責任を=岩田教授

[東京 10日 ロイター] 岩田規久男・学習院大学経済学部教授は、日銀が2月に公表した「物価安定の目途」と追加緩和、その後の総裁講演などが、人々のデフレ予想をインフレ予想に変え、円安・株高をもたらす効果があったと評価した。

5月10日、岩田・学習院大学教授は、日銀が2月に公表した「物価安定の目途」と追加緩和などが人々のデフレ予想をインフレ予想に変え、円安・株高をもたらす効果があったと評価した。写真は昨年10月、都内の日銀前で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

このことは「金融政策だけではデフレ脱却できない」との日銀理論の誤りを実証しており、日銀はこの結果を受け止めて、2─3%のインフレ目標の達成にコミットすべきだと主張。そうでなければ、日銀法改正によりインフレ目標の達成を義務づける必要があるとの考えを示した。10日、ロイターのインタビューで語った。

<2月の追加緩和以降、インフレ予想に転換>

岩田教授は「デフレ脱却のためには、まず人々のデフレ予想をインフレ予想に変えなければならない」と強調する。実際、2月14日の日銀による当面1%の物価上昇を目指すとした「中長期的な物価安定の目途」の発表と、追加緩和の決定、2月17日の白川方明日銀総裁講演における「消費者物価前年比上昇率1%達成へのコミットメント」への言及の3点セットが、そうした効果を発揮したと評価した。

同教授によると、その後3月15日までの1カ月間に、まず、人々の物価の変化に関する予想がデフレ予想からインフレ予想に変化。物価連動債の変動から割り出した予想インフレ率は、3点セット前より0.17%ポイント上昇したという。

次にインフレ予想が円安をもたらし、平均的に3円31銭の円高・ドル安効果を発揮したと分析。さらに、インフレ予想と円安が株価を引き上げ、日経平均株価を1日当たり平均で242円引き上げる効果を発揮したと実証分析した。

こうした結果を見れば、「金融政策にはデフレ予想をインフレ予想に変える力がある」との考えを示した。

<その後の流動性供給姿勢足りず>

しかし、せっかく3点セットの効果が実証されたにも関わらず、「その後日銀自身が本気でデフレ脱却に向けて流動性供給を増やす姿勢はうかがえない」と岩田教授は指摘する。

同教授は「白川総裁のその後の発言からは、引き続き政府の成長戦略などで生産性を高める必要性や、過度な流動性供給の副作用への言及などがうかがえ、副作用を恐れてデフレを甘受するという日銀理論が垣間見える」という。

さらに、「日銀の流動供給の仕方を見ていると、3月のマネタリーベースは昨年に比べて減少した」と指摘。本来、デフレ脱却のために流動性供給は増やし続ける必要があるが、日銀は、年末年始や決算期、そして大震災後など、流動性が不足するタイミングでのみ資金を供給、信用市場対策に過ぎないと指摘している。同教授は「日銀の考え方は、流動性が不足していない時に供給しても意味がないというもので、マネタリーベースの供給はデフレ対策のためにやっているのではない、信用市場対策のためにやっている、と言っているようなもの。流動性供給により予想インフレ率が変わるということがわかっていない」とした。

<現行日銀法に重大な欠陥、日本は3%程度のインフレ目標が妥当>

本来、物価の安定、つまりデフレ状態を脱することは日銀の使命と考えられているが、現行の日銀法には、目的としてそれが明記されていないと岩田教授は指摘する。

確かに1998年に改正された「日本銀行法」では、目的に「信用秩序の維持」が掲げられているが、物価の安定は記されていない。代わりに理念の項に「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」と記されている。

このため、日銀自身がインフレターゲットにコミットしないのであれば、日銀法を改正して物価の安定を目的と定め、義務付ける必要があるとの考えを示した。

岩田教授は、「物価の安定」を具体的に数字で表すなら、世界の経験上、最低2%、日本の場合はデフレが長期間続いたため、3%程度が妥当だと主張する。

その上で改正内容として、1)まず政府が日銀の目的として、物価安定とは何かを決めること、2)手段については口出ししないこと、3)日銀はインフレターゲットをきちんと実行すること、4)達成期間は2年程度を目安とし、日銀には責任を課すことが必要だとした。

例えば、英国の中央銀行法では、イングランド銀行が財務相に提出する書簡では、同行自身が、物価目標を足元で超えていても、ほぼ2年以内に目標に収めると言っており、過去の実績もそうなっていることから、市場もそれを信頼していると指摘。

実際、自民党の日銀法改正案ではこうした内容が盛り込まれ、さらに物価目標が達成できない場合には説明責任を課し、納得が得られない場合には、総裁、副総裁、審議委員に対する罷免権を持つとされているが、英中銀と同じくインフレターゲットを採用するニュージーランドでも、罷免権の及ぶのは総裁一人だけとなっていると指摘。岩田教授は「自民党案はあえてハードルを高くし、実際には反対派との妥協点を探るために、説明責任にとどめる英国型の中央銀行法が落としどころになる」とみている。

(ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)

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