May 23, 2012 / 4:07 AM / 7 years ago

焦点:存在意義を自問するNATO、「アフガン後」の役割は

[シカゴ 22日 ロイター] 米シカゴで開催された北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は21日、2日間の日程で終了した。会議は問題なく閉幕したようにみえたが、現実にはユーロ圏の債務危機で同軍事同盟は弱体化しており、2014年のアフガニスタン撤退後、どのような役割を担うべきかを問う「アイデンティティーの危機」に直面している。

5月22日、北大西洋条約機構は、21日に閉幕した加盟国の首脳会議で2014年のアフガニスタン撤退方針を確認したが、アフガン後にどのような役割を担うべきかを問う「アイデンティティーの危機」に直面している。写真はアフガンで任務に当たる米兵(2012年 ロイター/Danish Siddiqui)

今回の首脳会議では、NATOがアフガンに展開する治安部隊13万人の大半を14年末までに撤退させる方針を確認したほか、アフガンの治安権限を2013年半ばまでに同国側に移譲することで合意した。

28カ国が加盟するNATOは、63年前の冷戦時に誕生した防衛組織。今回の首脳会議では、2014年以降に同盟がどのように対応していくべきかが問われていた。多くの政府が財政赤字削減のため防衛費を大幅に抑える中、米国はアジア太平洋地域での軍事問題への関与を拡大させ、他のNATO加盟諸国も自国の経済問題に追われ、外国での軍事介入にほとんど関心を示していない。

NATOの軍事費の4分の3は米国が支出しているが、同国が今後もNATOにコミットし続けるかどうかは明らかでない。匿名の米高官は、「米国はNATO結成時から常に(司令塔役の)クオーターバックだった。それは構わない」と述べた。しかし欧州では現在、経済的圧力が高まっているとし、「われわれ(米国)がクオーターバックだけでなく全ての役割を同時に務める必要があるのか、その懸念が増している」と述べた。

<防衛費は「格好の標的」>

米国防総省も、今後10年間で総額4870億ドル(約39兆円)の防衛費削減を強いられているが、多くの国では防衛費が予算削減の「格好の標的」となっており、米国と欧州のNATO加盟国の間に存在する差は拡大するばかりとみられる。

ドイツや英国など欧州の大国は防衛費の大幅削減に着手している。NATOでは、国内総生産(GDP)の2%を軍事費に支出することが基準とされているが、それを満たしているのは加盟国のうち5カ国のみだ。

軍事費不足に対するNATOの回答は「スマート防衛」だ。つまり、設備や施設の共有で費用を抑え、それぞれの加盟国が異なる防衛分野を専門とすることを意味する。

NATOのラスムセン事務総長はロイターのインタビューで、「今回の首脳会議は、防衛費の削減や経済危機があっても、欧州の加盟国が将来必要とされる軍事的能力を得るという明確なメッセージを送ったと思う」と述べた。「近い将来に防衛費が増えないことは明らかだ。新たな方法で物事を進める必要があり、多国間協力が重要だ」との見方を示した。

NATOが将来的にどのような役割を果たすべきか──世界の異なる地域で戦闘に参加すべきか、それともNATO域内の防衛に集中すべきか。シカゴで開催された会議では、こうした課題が問われていた。

<アイデンティティーの再構築>

NATOは過去に何度もアイデンティティーを再構築してきた。当初は、冷戦時の北米と西欧の相互防衛協定に基づき結成され、1990年代にはソビエト連邦崩壊を生き延び、ユーゴスラビアの紛争に介入した。

アフガニスタンでの任務はこれまでで最も野心的なものとなった。NATOは50カ国が参加する国際治安支援部隊(ISAF)を主導している。昨年には、英国とフランスが中心となり、カダフィ政権の崩壊を目指してリビアで軍事介入を実施。中東の民主化運動「アラブの春」において大きな節目となった。

NATOで治安問題を担当するジェイミー・シア氏は、米シンクタンク「カーネギー国際平和財団」のウェブサイトに寄稿し、近いうちにNATOが主要任務を欠く軍事同盟になる可能性があると指摘。紛争などの危機が突発的に起こることはあるが、今後のNATOによる軍事介入は過去の任務とは異なるものになるとの考えを示し、「空域と海域での作戦に重点を置くようになるだろう」とした。

ブルッキングス研究所のクララ・オドネル客員研究員は、過去の任務に参加してきたポーランドやオランダのような加盟国が、リビア空爆については不参加を表明したことを挙げ、域外での任務に対する不支持を反映していると指摘した。

ただ、米国によるNATO離脱や、NATOの解体が実際に起こるとの見方はほとんどない。米政府は、危機発生時には欧州の加盟国が適切に対応すると考えており、自国利益の追求において欧州諸国から政治的支援を受けているからだ。

米国防大学・戦略研究所のレオ・マイケル氏は、「アフガニスタン(での問題)はいずれ解決する。しかし、また別の問題が発生するだろう」とし、「欧米諸国はより良い方策が見つかるまで、それに対応する手段が必要となる。もうしばらくの間、NATOは存在し続けるべきだ」と述べた。(原文執筆:David Brunnstrom記者、Adrian Croft記者、翻訳:本田ももこ、編集:橋本俊樹)

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