June 18, 2012 / 12:57 AM / 6 years ago

ギリシャ再選挙、緊縮派が過半数確保:識者はこうみる

[アテネ/ロンドン/東京 18日 ロイター] 17日行われたギリシャの再選挙は、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)と合意した緊縮策を支持する新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が過半数を確保した。緊縮推進派は18日、連立に向けた協議に入る見通し。

一方、前回の選挙で躍進し、緊縮策の撤回を求めていた急進左派連合(SYRIZA)は敗北を認めた。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●不安要素が一つ後退、世界的なリスクオフの巻き返しへ

<マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>

ギリシャ再選挙で緊縮派が勝利したことを受け、不安要素の1つが後退し、市場には安堵感が広がった。欧州債務問題とユーロ圏の金融システム不安は一朝一夕で解決する問題ではないが、危機の深まりとともに各国当局による対応がとられ、前向きなコミットメントも目立つなどグローバルでの対応が市場にとって良い方向に出てきている。一番厳しい局面は過ぎたとみており、今後は世界的なリスクオフムードの巻き返しが起こるだろう。

目先は市場の視点が米経済に移りそうだ。米マクロ指標の悪い数値を受けて米経済減速が懸念される一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加金融緩和への期待感も根強い。ツイスト・オペの延長など何かしらの緩和策が出れば一段のポジティブ材料となる。米国での追加緩和により外為市場でドル安・円高が進めば日本株の戻りは限定されそうだが、日経平均は6月4日安値で底打ちし、きょうのマドを空けた上伸により三角もち合い上放れの様相が強まっている。目先は200日移動平均線(8945円97銭=15日)水準への戻りが期待される。

●ユーロ圏債務問題は長期継続、ユーロ買い戻しも弱い

<ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト 村田雅志氏>

新民主主義党(ND)の勝利を受けて想定通りユーロが買い戻されたとはいえ、買い戻しは弱い。世論調査で前週末あたりからNDが勝利しそうだということがわかっていたということもあろうが、緊縮支持派が過半数をとったことでユーロ離脱はないと言っても、今後ユーロ圏当局との条件闘争に入るというスタンスは変わりない。

フランスの大統領がオランド氏に代わって成長戦略重視に舵を切り、ドイツも寄り添う姿勢を示してきたことで、債務問題は先送りになる可能性が高い。そうなると、ギリシャだけでなく、ポルトガル、スペイン、イタリアといったユーロ圏の高債務国の債務問題はずっと続くと想定できる。

IMMのポジション動向では、引き続きユーロのショートポジションが高止まりしている。買い戻しへの警戒感はあるにしても、ギリシャでNDが勝ったというだけで素直に買い戻しにはなりにくい。債務問題はずっと続く問題であって、ギリシャ再選挙通過で短期的にすぐに買い戻すのではなく、少し慎重になっている姿がうかがえる。

●リスクオンでドル/円は最終的には上昇へ

<大和証券投資戦略部担当部長 チーフ為替ストラテジスト 亀岡裕次氏>

ギリシャ選挙を受け、今後(欧州で)財政統合と成長戦略が進むようであれば、さらにリスクオンの状況になっていくだろう。当面は成長戦略をいかに具体化していくかというのがポイントで、実際そこは進んでいくと思う。必要な緊縮をやりつつも、成長に必要な部分の支出もそれなりにするということで、リスクオンになっていく可能性が高い。

ドル/円は、クロス円の動きに追随していくことになるだろう。米金利上昇に結びついていない段階なので初動は鈍いが、リスクオンになれば、ドル/円も最終的には上がっていくとみている。

●ひとまず最悪のシナリオ回避、連立協議を注視

<第一生命経済研究所 主席エコノミスト 田中理氏>

ギリシャの総選挙で、財政緊縮推進派の勝利という結果となり、ひとまず最悪のシナリオが回避される方向となった。ただ、新民主主義党(ND)の単独での過半数を獲得できていないことから、これからの連立協議次第だが、どういう形で固まっていくのかというのに多少の注意が必要だ。

NDと全ギリシャ社会主義運動(PASOK)という暫定政権を支えていた2つの党が一緒になれば、一定の安心感が広がろうが、これにもう1党加わることになれば安定過半数となり、政権基盤はより安定する。ND、PASOKの2党だけだと、それほど余裕はない。今後の政権運営を考えた場合、例えば財政緊縮の追加法案を通す必要性が出てくるため、できれば3党合意などで固まる方が望ましいのではないか。

ギリシャ以外に控えている問題として大きいのはスペインの話。ギリシャ不安が多少一服すれば、スペインに対する危機の波及懸念が後退するが、前週までの緊張感を考えれば、不安感はまだ残る。今週の20カ国・地域(G20)首脳会議、ユーロ圏財務相会合、来週の欧州連合(EU)首脳会議といった政策対応の場で、スペインなどへの危機波及を封じ込めるのかが問われることになりそうだ。

●安心感広がるが、欧州の問題は残る

<大和証券 投資戦略部部長 高橋和宏氏>

緊縮財政策を支持する新民主主義党(ND)が勝利を収めたことで、目先のギリシャのユーロ離脱リスクが後退。市場に安心感を与えることになりそうだ。前週末の米国株が期待先行で上昇していたこともあり、日本株にも買いが先行、日経平均は8700円台をうかがう展開が予想される。ただ、これによって欧州の問題が解決するわけではない。スペインの不良債権問題も過度なリスクが緩和するかもしれないが、依然課題として残っている。一段の上値を試すには20カ国・地域(G20)首脳会議や米連邦公開市場委員会(FOMC)を見極める必要がある。

●本質的な問題残る、円債下値は限定的

<ドイツ証券 チーフ金利ストラテジスト 山下周氏>

ギリシャの再選挙ではサマラス氏が率いるND(新民主主義党)が勝利。選挙結果は、リスクオフを巻き戻すインパクトはある。ギリシャのユーロ離脱の可能性が低下したことで、リスクシナリオが低下し、リスクオフを巻き戻す余地が出てくるだろう。

もっとも、ユーロ圏の問題は本質的な面で残っている。ギリシャにしても財政問題が好転するかというと、そういうわけではない。スペインに代表される金融問題も依然としてユーロ圏に残る。リスクオンになるには、まだ解決しなくてはならない問題が多く、構造的な問題がある。

ひとつのイベントを越えて、リスクオフの巻き戻しで円債が売られているが下値は限定的とみている。長期金利は当面、0.8%台で推移するだろう。

●くすぶるユーロ離脱リスク、金利低下の可能性

<UBS証券 シニア債券ストラテジスト 伊藤篤氏>

ギリシャの選挙結果は、新民主主義党(ND)とPASOKを合わせた議席数が過半数を上回り、今日の欧州時間にも政権が発足する見通しとなった。今後の連立政権交渉、政権発足の不透明性、再選挙リスクが大幅に後退したことから、リスク資産にとってのポジティブ・サプライズにみえる。

しかし、為替市場でユーロの買い戻しが鈍く、反応は限られている。週明けの欧州市場を待ちたいとの見方があるのだろうが、ギリシャ連立政権が発足してもマクロ経済の厳しさは変わらない。緊縮財政策の再交渉が必要となりユーロ離脱リスクもくすぶり続けることや、スペインの金融セクター問題などギリシャ以外のリスクを市場が意識しているためではないか。

円債市場は、押し目買いの機会とみていたが、目立った押し目局面をつくれない可能性がある。連立政権で緊縮財政策の再交渉の不透明感で10年0.75%か、挙国一致内閣による意思決定の遅さで10年0.70%へ金利低下とみている。

●いったんは危機シナリオ回避

<JPモルガン証券 チーフ債券ストラテジスト 山脇貴史氏>

ギリシャの再選挙ではサマラス氏が率いるND(新民主主義党)が勝利。PASOKがどこまで本格的にNDのサポートをするかによって新政権の安定性が変わってくるが、ND/PASOKの連立政権が樹立することはほぼ確定的であろう。いったんは危険シナリオを回避し、安心感が広がりそうだ。 再選挙でNDが勝利することが判明した後の為替市場や米国債先物をみていても、それほど大きな動きにはつながっていない。手放しでリスクオンに戻ることは無いだろう。

今後はND/PASOKの連立政権がトロイカとの緊縮財政再交渉をいかに速やかに決定できるかに焦点が移る。交渉が難航すれば、預金流出の再加速、ポルトガルへの伝播、予算停止による社会不安などが再燃し、リスク回避的な行動が再び広まるであろう。ギリシャの銀行が預金流出に対応するための資金をELAから確保できなくなれば、ユーロからの離脱に相当するため、預金流出の加速が最大のリスク。再交渉が早期に決着することが求められる。

ただ、NDは 選挙戦のために緊縮財政の一部撤回を公約とした。一方で、スペイン救済で銀行への直接資本注入を認めなかったドイツの姿勢を踏まえると、欧州サイドの大幅譲歩も考えにくい。着地点を探るのには相応の労力が必要。選挙結果を受けて、リスク回避の巻き戻しが予想される。しかし、他の懸念材料(景気後退エリアの拡大・金融政策の限界・スペイン救済など) を踏まえると、本格的なリスクオンにはつながらない可能性が高いのではないか。

●ユーロ相場は楽観を許さない、1.30ドル上抜けは困難

<野村証券 金融市場調査部 チーフ為替ストラテジスト 池田雄之輔氏>

ギリシャの総選挙は想定されるシナリオの中では最善の結果となった。ギリシャがユーロの離脱を迫られるというテールリスクの確率は大きく後退したといえよう。為替市場では総じてリスクラリーを期待できる展開であり、豪ドルなどリスクセンチメントに左右されやすい通貨にとっては追い風となるだろう。

ただし、ユーロ相場は楽観を許さない状況が続いており、節目の1.30ドルを目指すことはあっても上抜けするのは難しいと判断する。

その理由は、第1にギリシャでは緊縮派の安定政権が誕生した場合でも、トロイカとの融資条件の再交渉が必須であること、第2にスペインの銀行問題を巡っては欧州による支援スキームが依然不透明であること、第3に欧州景気の失速が鮮明になってきており、海外マネーにとって投資対象としてユーロ圏資産の魅力が低下していること──があげられる。

●債券市場の不安続く、スペインなど懸念

<クレディ・アグリコル(ロンドン)の金利ストラテジスト、ピーター・チャットウェル氏>

債券市場に安心感が広がるとは言いがたい。スペイン、イタリア国債に安心感が広がるとは言えないからだ。スペインの運命はスペイン自身の行動にかかっている。市場のメカニズムによって行動しなければならない。

イタリアはスペインの状況に左右されるだろう。

一部の資金はドル建て資産から欧州市場に戻るだろうが、周辺国の債券が大きく上昇するとは思えない。上昇しても一時的だろう。

例えば、スペインは今週入札がある。スペイン国債が上昇する局面では、かなりの売りが出て入札に備える展開になるだろう。

●市場にプラス、次はG20と流動性対策に注目

<REYL(ジュネーブ)のフランソワ・サヴァリ最高運用責任者>

新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の連立の可能性が出てきたのは良いことだ。ドイツも金融支援プログラムの再交渉に前向きのようだ。市場にとってはプラスだが、まだ経済成長とスペインの問題が残されている。

新たな資金供給は必要だろう。ドイツ連邦債は、ギリシャの支援コストをドイツが負担するとの見方から売られる可能性がある。

次のポイントは20カ国・地域(G20)首脳会議と新たな流動性供給の決定だ。

選挙結果を受けて市場に安心感が広がるかもしれないが、これで問題が終わったわけではない。

●とりあえず安心感広がる=クレアインベスト

<クレアインベストのファンドマネジャー、ION-MARC VALAHU氏>

選挙結果が確認されれば安心感が広がるだろう。とりあえずは、ギリシャや欧州連合(EU)にとって最悪の事態はさけられることになるためだ。また、再選挙の実施は他のEU諸国に対し、ギリシャは緊縮策だけでは生き残っていけないことを認識させることになった。

当面は市場が安定する見込みで、ユーロは既に対ドルで1.27ドルを上回っている。もっとも、危機が終息するにはほど遠く、今後数週間にわたってユーロ圏を守るために重要な会合や決定が行われることになる。

●ユーロ残留確信できれば転機に

<UBSイタリアSIM(ローマ)の会長、INNOCENZO CIPOLLETTA氏>

ギリシャの選挙結果は欧州連合(EU)とのさらなる交渉に役立つ。従って市場にとっても、より好ましい結果と言えるだろう。

市場は現在、どの国がユーロを維持し、あるいは維持しないかで疑心暗鬼の状態だ。ギリシャがユーロ圏にとどまると市場が確信すれば、ターニングポイントとなる可能性がある。一方、ユーロ圏が長続きしない方に市場が引き続き賭けるのであれば、ギリシャ、イタリア、その他の国には災厄を意味する。

●政権基盤ぜい弱、リスクオンは一時的

<RIAキャピタル・マーケッツ(エジンバラ)の債券ストラテジスト、ニック・スタメンコビッチ氏>

連立政権の樹立は可能かもしれないが、政権基盤は極めてもろいものになるだろう。新民主主義党(ND)の急進左派連合(SYRIZA)に対するリードはごくわずかだ。大きな政策変更を議会で通すのは非常に難しい。

市場に安心感が広がったとしても一時的だろう。ただ、最悪のシナリオは避けられた。

急進左派連合の敗北で、ユーロ離脱の可能性が大幅に低下したため、株式などリスク資産市場全般に安心感が広がるとみられるが、すぐに基本的な状況に変化はないとの見方が浮上し、伸び悩む展開になるだろう。

市場では、数カ月後にはまた選挙があるのではないかとの懸念が浮上するとみられる。

●政権の安定がカギ、問題先送りも

<チャネル・キャピタル・リサーチ・ドット・コム(米ニュージャージー州)のチーフ・インベストメント・ストラテジスト、ダグ・ロバーツ氏>

現時点で決定的な打開策はなく、今後一定の妥協を迫られるとみられる。連立政権の樹立を目指す可能性が最も高いが、政治的な駆け引きの結果、政権がどの程度安定するかが本当の問題だ。

ただ現時点では、問題を先送りして時間を稼ぐ可能性のほうが高い。いずれにしても安定した状況とはいえない。

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