June 25, 2012 / 6:53 AM / 7 years ago

アングル:量的緩和は江戸時代の藩札制度か、紙幣「紙くず化」も

[東京 25日 ロイター] 日米欧の中央銀行が推し進める事実上の量的緩和は、疑似紙幣を大量に増刷した江戸時代の「藩札(はんさつ)制度」と重なる。当時は金や銀の裏付のない「ペーパーマネー」の氾濫で、紙幣は紙くずとなった。

6月25日、日米欧の中央銀行が推し進める事実上の量的緩和は、疑似紙幣を大量に増刷した江戸時代の「藩札(はんさつ)制度」と重なる。2010年2月撮影(2012年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

危機対応と景気刺激を目的に大量の資金を供給している今回も、世界的に貨幣価値の劣化を示す兆候がみられており、これ以上の緩和政策を危ぶむ声が出ている。

<紙幣の紙くず化>

江戸時代の日本では、通貨が不足すると各藩が独自に領内で紙幣(藩札)を発行し、財政難の解消を試みた。しかし藩札は金銀に裏打ちされておらず、各藩の財政をもとに信用創造された紙幣だった。乱発した結果、価値が幕府発行の貨幣に対して著しく低くなり、インフレを招くケースが多く見られた。

日米欧各国が推し進める量的緩和は、藩札の乱発と同じ効果をもたらす可能性がある。現在の量的緩和は銀行に対し流動性を供給し、間接的にリスクマネーの拡大を期待する仕組みだが、国債などに集中している多量の流動性が貸出や投資を通じて市中に広がれば、ハイパーインフレによって紙幣は「紙くず化」しかねない。

日銀の白川方明総裁は4月に米ワシントンで講演し、「中央銀行の膨大な通貨供給の帰結は、歴史の教えに従えば制御不能なインフレになる」と警鐘を鳴らしている。

これまでは「紙幣が紙くずになる前にバブルが発生し、バブルによって緩和政策にブレーキを踏む機会が与えられてきた。だが、現在のバブルは株や不動産などの万人にわかりやすい指標ではなく、過去最低利回りを更新する各国の国債に潜んでいる」と東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は話す。国債は利回りが低下しているのでデフレ的だという認識に陥りやすいが、既発債の価格から判断すれば明らかにバブルだという。

<債券バブル>

実際、日米独の国債利回りは歴史的な低水準を記録している。米財務省証券10年物利回りは6月1日に1.4420%と過去最低を更新した。独国債10年物利回りも同日1.1270%と過去最低水準まで低下。日本国債10年物利回りは6月4日に0.790%と9年ぶりの低水準をつけた。

現状では、現在金融危機の真っただ中にあるユーロ圏をはじめ、米国も日本も資金が銀行に滞留し、実体経済はバブルもインフレも無いとの認識が広がっており、ブレーキどころかさらにエンジンをふかす準備をする中央銀行もある。

しかし、白川総裁は今月4日「最適なスピードを超えてアグレッシブに国債買い入れを行うと、金利が反転上昇することも起こりうる」と国債価格の下落リスクを指摘している。

債券価格以外にも紙幣価値の劣化を表す指標がある。今年5月まで100ドル台の高値圏にあった石油価格は、金の価値を基準とする(金価格で割る)と2009年3月以降は大きな変動が無く安定的に推移している。石油や金価格の上昇は、こうした商品相場の値上がりではなく、紙幣の価値が低下したとみなすことができる。

<異常な超過準備>

世界的な「藩札制度」の影響は、国債価格のバブルのみならず、各国で異常な水準に達している超過準備(金融機関が中央銀行に保有する預金のうち所要準備を超える部分)にも現れている。世界金融危機以降、民間の信用創造機能がまひし、流動性が安全を求めて国債や中央銀行預金という究極の安全資産に集まるためだ。

2008年9月のリーマンショック以前は10億―20億ドルだった米銀の超過準備は、過去最高の1兆6000億ドル(約129兆円)まで膨れ上がっている。ユーロ圏銀行の超過準備も7765億ユーロ(約78兆円)と過去最高水準に達している。日銀の当座預金残高は25日に42兆6000億円と過去最高を更新する見込みだ。

「もしもFRBが超過準備を放置すれば、過剰流動性はいずれ実体経済に流れ込みインフレを招くだろう。しかし、急激に吸収すれば、金融機関はバランスを崩し、自己防衛のため貸し剥がしに走るだろう」とスタンフォード大学のジョン・テイラー教授は3月29日付ウォールストリートジャーナル紙で予想した。同様の混乱は日本が2000年のゼロ金利解除後に通った道だ。

<暴走するペーパーマネー>

これだけ刷ってしまった紙幣をどう始末するのか。ペーパーマネーの世界では、一度規律が緩むと引き締め直すのが難しい。1971年のニクソンショック以来、金という裏付を失った紙幣は発行に制御が効きづらく、いつ紙くずになるかわからないというリスクを背負っている。

「基本が紙なので、金融危機や財政難に遭遇すれば、結局は刷ればいいということになって、どうしても極端なところまでいってしまう」と、ある外国銀行のアナリストは指摘する。

前出のテイラー教授は、ペーパーマネーの弱点を踏まえ、規律に基づいた政策運営が最重要と主張する。FRBは80年代から90年代、物価安定という明確な目標の下、予想可能なルールに基づいた政策を運営してきたものの、2003―05年に金利を引き下げ過ぎ、緩和を長引かせすぎた(too low for too long)という。それが過剰なリスク志向を生み、住宅ブームを煽動したと、同教授は批判する。「(最近になって)FRBは裁量権を乱用し、再びtoo low for too longの領域に足を踏み入れている」。

(ロイターニュース 森佳子;編集 伊賀大記)

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