July 20, 2012 / 6:44 AM / 7 years ago

アングル:ANA公募価格は予想以上の割引率

[東京 20日 ロイター] 全日本空輸(ANA)(9202.T)の公募増資は、新株発行の条件決定でこれまでにない変化がみられた。ヘッジファンドの空売りが減少したため増資発表後も株価下落は限定的で、海外の投資家の需要を喚起するため、大き目のディスカウントを迫られた。

7月20日、全日本空輸(ANA)の公募増資は、ヘッジファンドの空売りが減少したため発表後も株価下落は限定的で、海外の投資家の需要を喚起するため、大き目のディスカウントを迫られた。写真は新千歳空港で今月3日撮影(2012年 ロイター/Issei Kato)

背景にあるのは金融庁が導入した増資に伴う空売り規制。資本市場の健全化を狙った規制が皮肉にも健全な海外投資家の意欲もそぎ、ANAの増資と同様のケースが今後も起きる可能性がある。

<「レギュレーションM」が株価下落を抑制>

ANAが18日に決定した新株の発行条件1株184円は、同日終値192円を4.17%下回った。日本企業がこのところ実施した公募増資のディスカウント率は3%台。4%を超える高水準になったのは珍しい。

理由の1つとして証券関係者が挙げるのは、金融庁が昨年末に導入した規制の影響。「レギュレーションM」と呼ばれるこの規制は、増資発表後から発行条件決定日までの間に空売りをした投資家が、増資企業の新株を取得することを禁じている。2009年以降、日本では企業の公募増資決議前後に株価が不自然に変動する事例が多発。新たな規制は新株の発行価格を歪められないようにする目的で導入された。

増資発表前後に大量の空売りを仕掛け、価格を引き下げようとしたヘッジファンドは、増資に応募した後、割り当てられた新株を売って利益を上げることができなくなった。ANAのケースでは空売りが減り、条件決定日までに株価が大幅に下がらなかった。新株発行の決議前日(7月2日)から発行条件と決める18日までの下落率は14.2%。希薄化率が39.6%だったのに比べると、底堅い値動きだった。

もっとも、「ANAの貸し株が貸し株市場にあまり流通していなかったことも、空売りが多発しなかった理由」(ヘッジファンドのマネージャー)など、株価の大幅下落を免れたのはレギュレーションMだけの影響だけではないとの声もある。

<国内投資家の需要が救い>

いずれにしろ、ANAは株価が大幅に下落しなかった分、投資家の需要を呼び込むために4.17%という通常より高めのディスカウントを余儀なくされた。とりわけヘッジファンドの需要が大きく減少。ある証券会社の引受担当者は「いつもなら必ず応募株数でトップ10に入る大口のヘッジファンドが今回は最初から関心も示さなかった」と話す。

ヘッジファンドほどではないものの、年金基金といった長期運用を主体とする海外投資家の需要も鈍かった。彼らは価格に敏感で、一定の価格以上は却下と明言する傾向があり、「今回は179円辺りでの引き合いが多かった」(引受証券)という。ANAの幹部も「過去に価格を指値で入れてくる投資家はこんなにいなかった」と指摘する。

結果として海外投資家は減少。当初は新株の3割を海外投資家に配分する予定だったが、13%に低下した。それでもANA幹部は「空売り目的のヘッジファンドが大量に抜け、結果的に純粋に当社の株を持ちたいという投資家が多かった」と指摘。ヘッジファンドは減少した一方で、残る海外投資家は長期運用の投資家になったという、構造的な変化があったと言えそうだ。

また、ANAにとって救いだったのは国内投資家の需要が大きかったこと。7割の予定だった国内募集を逆に87%に高めた。配当利回りの高さや株主優待制度の特典などを加味すると、国内の投資家には投資妙味が高く、引受担当者によると、国内の需要は3─4倍あった。このため、ディスカウント率をさらに拡大し海外投資家への配分を無理に3割にとどめるより、国内投資家の旺盛な需要で海外分を補うのが賢明との判断につながったという。

(ロイターニュース 江本 恵美、ネイサン・レイン、編集:久保信博)

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