July 26, 2012 / 5:20 AM / 7 years ago

焦点:中国経済に早期底打ち論、日本の国内生産への波及力は弱まる

[東京 26日 ロイター] 減速感の広がりとともに先行き慎重論が浮上している中国経済だが、早期の底打ちの兆候を読み取る専門家も出てきた。住宅価格下落に歯止めがかかってきたことや下期に本格化する公共投資への期待感が背景にある。実際、4―6月期の経済指標の中には上向きに転じ始めているものもある。

7月26日、減速感の広がりとともに先行き慎重論が浮上している中国経済だが、早期の底打ちの兆候を読み取る専門家も出てきた。写真は昨年9月、上海で撮影(2012年 ロイター/Carlos Barria)

一方、日本経済や企業への波及の面では、従来のように中国経済の回復が直接的に効いてくる流れは徐々に弱まっている。強気の事業計画を出す企業ほど、計画の下方修正を余儀なくされる可能性もある。

<下げ止まり指標相次ぐ、政策効果表れる>

日本の中国向け輸出が安定に向かう兆しが出てきた。25日発表の6月貿易統計では輸出の前年割れに注目が集まったが、足元の変化に目を凝らすと違った姿が現れる。シティグループ証券によると、中国向け実質輸出が前月比で2.6%増加と伸びを高めており、安定感が出始めている。4―6月期でみると小幅ながら3四半期ぶりに前期比プラスに転じた。調査機関の間では中国景気そのものが安定化し始めており、夏場には底入れするとの見方が広がっている。

中国自体の景気指標でも、最悪期を脱しつつある兆候を示唆するものがいくつか出てきた。

先週発表された6月の中国主要70都市の新築住宅価格は前月から横ばいとなり、8カ月連続の下落に歯止めがかかった。北京や上海では昨年6月以来初めて前月比上昇に転じたほか、7月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI、HSBC発表)が5カ月ぶりの高水準となったことも、底打ち感をうかがわせる。

4─6月の中国実質GDPが前期比で7.4%に伸びを高めたこともあり、「中国経済の底入れは近づいている」(伊藤忠経済研究所・主任研究員・武田淳氏)との見方に変更する専門家も出てきた。前年に比べ経済活動の水準はまだ低いものの、足元は消費、固定資産投資、輸出ともに回復傾向となったためだ。特に、第12次5カ年計画に沿った公共投資の本格化に加え、鉄道事故で停止していた鉄道車両のほか、電力や空港など従来型の投資を中心に、景気下支えに一役買っている。

<下期回復パターン、1兆元の公共投資で9%成長も視野に>

この先も底打ちから緩やかな回復を予想する声が徐々に増えている。下期は、秋の全国人民代表大会を控え、夏場から金融面、財政面でアクセルを踏み込むことが想定される。「政府が力を入れる環境や省エネ型の投資が中心となり、5カ年計画に沿って環境やバイオ関連、それに交通渋滞緩和に必要な地下鉄投資などを中心に、上期を上回る投資が本格的に出てくる」(ニッセイ基礎研究所・上席主任研究員・三尾幸吉郎氏)と予想されている。みずほ総研中国室の鈴木貴元・上席主任研究員によると、公共投資は下期に1兆元程度にのぼる見通しで、前年比10─20%増加。GDPを半年で2%程度押し上げる試算だ。年末には成長率は9%台に届く可能性もあるという。

消費も雇用・所得環境の改善を背景に堅調を続ける見通し。物価上昇率を差し引いた実質ベースでは、2ケタの伸びを続けており、経済成長率を上回る伸びとなっている。物価上昇率の低下と所得水準の向上により実質購買力は高まっており、今後も消費は安定して拡大を続けるとの見方となっている。

<中国成長しても、日本経済連動せず>

一方で、底打ちは近いとはいえ、まだ経済活動は低い水準にある。日本企業の中国事業も回復の実感は得られていない。日立建機は25日、中国の油圧ショベル需要の落ち込みが想定より大きいことを主因に2013年3月期の業績予想を下方修正した。需要回復は来年1─3月期からとの予想だ。

ロイターの7月企業調査でも中国事業を手がける製造業の4割が下期計画について下ブレの見通しと回答している。従来の中国市場の2─3倍という拡大ペースの余韻が残り、下ブレを余儀なくされているとの指摘もある。

しかも今後、下期にかけて中国景気が底打ちから回復に転じても、従来のような高度成長期はすでに終焉したことを念頭に置く必要がありそうだ。専門家は中国の労働力人口比率は低下局面に入り、従来9%程度と見られていた潜在成長率が7%程度に減速しなければ、供給力不足によりインフレが加速、軟着陸が難しくなるとみている。今回、金融緩和を連続して実施しても回復力が従来ほどでないのは、労働力人口の減少で成長の下方屈折が始まった可能性を示唆していると指摘する声も浮上している。昨年までの9%程度の成長期には、ブルーカラー労働者の有効求人倍率が2倍を超すひっ迫状況の地域もあり、このままでは拡大する需要に労働供給が追い付かないということにもなりそうだ。今後は中成長期に入るため、経済成長のペースは鈍って当然との認識が必要だ。

加えて「中国経済動向が、パラレルに日本の国内経済や輸出に結び付くとは限らない」(みずほ総研鈴木氏)という厳しい指摘もある。企業にとっては事業拡大につながっても、国内経済の空洞化が進む可能性もあるためだ。

乗用車の海外生産は今や日本からの輸出の3.4倍にのぼる。自動車、電機では中国での現地部品比率を7─8割に引き上げ、今年も複数の部品工場が稼働予定となっている模様。25日にはトヨタ(7203.T)が中国に無段変速機工場を立ち上げることを公表した。企業の中国事業にとっては、こうした戦略が収益拡大に結び付く一方、日本国内の生産や雇用の拡大ペースを鈍化させている一因にもなり、国内生産水準はリーマンショックから3年たっても2000年代半ばの水準に戻っていない。

中国経済の回復は期待できるとしても、日本企業は従来のような中国経済の高成長を前提にした事業計画や経済のシナリオを再検証する必要がありそうだ。(ロイターニュース 中川泉 編集 橋本浩)

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