August 20, 2012 / 6:17 AM / 6 years ago

アングル:「LINE」をどう味方につけるか、通信事業者に迫る競争変化

[東京 20日 ロイター] 若者を中心にスマートフォン(高機能携帯電話、スマホ)向けアプリ「LINE(ライン)」の『インフラ化』が進んでいる。これまで通信事業者の独壇場だった通話やメールが無料でできるため、LINEの利用者が急増。そのスピードはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手の米フェイスブック(FB.O)を大きく上回る。

8月20日、若者を中心に「インフラ化」が進んでいるスマホ向けアプリのLINEだが、急成長がこのまま続けば通信事業者の競争環境を大きく変える可能性がある。写真は同アプリのアイコン。16日撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

LINEの急成長がこのまま続けば通信事業者の競争環境を大きく変える可能性がある。

<利用者急増、企業も販促チャネルに>

「無料だから友人との会話はすべてLINEです」。20代女性会社員はそう話し、スマホの画面を指先で軽く叩いてみせる。絵文字で感情を表現する「スタンプ」も使って会話する中身は待ち合わせの連絡や飲み会の日程調整、「疲れたー」など他愛もないやり取りもある。通信事業者のメールよりもLINEのほうが「とにかく早くて手軽だ」という。

フェイスブックがサービス開始から3年以上かけて達成した利用者5000万人超えを、わずか399日で成し遂げたLINE。運営するNHNジャパン(東京・品川)によると、現時点で国内では2500万人に達し、毎週160万人以上のペースで増えている。今や9億人超に上るフェイスブックの背中はまだ遠い。だがIT調査会社MM総研の篠崎忠征アナリストは、LINEは無料で簡単、スタンプや複数人数への一斉送信などの点が多くの人に受け入れられ、「近い将来フェイスブックのような存在になるポテンシャルがある」とみる。

「オープン」なネットワークが基本のフェイスブックに対し、LINEは既存の「クローズド(閉じた)」な人間関係にこだわっていることも魅力のようだ。フェイスブックでも情報公開する人の範囲を限定できるが、「設定作業が煩わしく面倒」(30代女性会社員)で、一般的には家族や同僚、友人などとの会話や写真が一律に公開されてしまう。一方、LINEは簡単な操作で人間関係をグループ分けできるため、「相手を選んで本音で話せるのが楽だ」(同)。

企業もクーポン配布などの販促チャネルとして活用し始めた。現在は日本コカ・コーラなど11ブランドが公式アカウントを開設。配信情報を受け取れる「友だち」の数が最大のローソン(2651.T)は、6月の開設以降、約1カ月半で300万を超えた。2010年10月に開設したフェイスブックの公式ページのファン数は約36万に過ぎず、LINEの集客スピードがいかに速いかがわかる。他のチャネルに比べて「クーポン利用率が高く、効果は絶大だ」(ローソン広報)という。

<「土管屋」回避できるか、顧客つなぎとめに腐心>

LINEは通信事業者の戦略にも影響を与え始めている。国内ではほとんどの人が携帯電話を持つようになった今、通信事業者にとって新規顧客の獲得は難しく、これまで家族割引などあらゆる施策で顧客を囲い込んできた。通信事業者を変更しても同じ電話番号が使える「番号持ち運び制度」の開始で通信事業者は変えやすくなったが、メールアドレス(メアド)の変更を伴うため「変えるのは面倒だ」という声もまだあり、通信事業者のメアドもつなぎとめに一役買っていた面もある。

だが情報通信総合研究所の岸田重行・主任研究員は「スマホではGメールやSNSでメールをしている人も少なくない。LINEを使えば通信事業者のメアドはますます不要になり、つなぎとめ効果がなくなる」と指摘。そして今後ますます通信事業者は「単なる通信網としての役割が強まり、利用者は通信品質で選ぶ度合いがこれまで以上に大きくなる」とみている。

だが通信事業者は通信品質を競いデータを送受信するだけの「土管屋」になるのを避けるため、新たな収益モデルの確立を急いでいる。通信網だけの勝負は、アプリ提供者が利益を得る一方で通信事業者はネットワーク投資が押し付けられる上、通信網の価格競争に追い込まれかねないからだ。NTTドコモ(9437.T)は「これからは端末上で提供できるサービスの勝負になる」(加藤薫社長)として、音声応答サービス「しゃべってコンシェル」やテキスト翻訳などのサービスを強化中。KDDI(9433.T)、ソフトバンク(9984.T)含めて3社とも動画配信などのコンテンツサービスも拡充させ、顧客の囲い込みを図ろうとしている。

<LINEを味方にしたKDDI>

KDDIは3月から開始した毎月390円でアプリ取り放題サービス「auスマートパス」でLINEと提携した。9月にはアプリの品ぞろえに専用のLINEを加えることで同サービスの加入者増を狙う。利用には「auID」の登録が必要。このIDがLINEの登場で薄れつつある通信事業者と顧客との接点を築けば、「顧客の囲い込みにつながる可能性がある」(岸田氏)。

一方、ドコモとソフトバンクはLINEと業務面で提携できるかどうか「まだ可能性を探っている段階」(両社広報)。NHNジャパンの森川亮社長は、LINEは未成年保護や通信品質などの安心安全面でKDDIとの提携効果を見込む。同様の観点から、ドコモやソフトバンクとも「話し合いはいろいろしている」(森川社長)という。

LINEの躍進で通信事業者の音声収入が一段と減少すると心配する声もある。だがNHNジャパン広報によると、実際は通話よりメールのほうが圧倒的に使われている。LINEを利用する親しい間柄ではすでに家族割や料金設定での無料通話分などで賄っている場合も多く、「音声収入の減少が加速するとは考えにくい」(岸田氏)との指摘もある。

<データ通信量負荷低減ではドコモとも協力>

7月には音楽やゲームなども配信するプラットフォーム(基盤)に進化し、8月からは写真なども使って近況を報告するSNS機能を追加したLINE。通信事業者にとって「データ通信量の増加につながり、メリットのほうが多いはずだ」(森川社長)。データ通信量が増えれば通信障害も招きかねないが、LINEはすでにドコモと技術者間で対策の検討に入っているという。このところ通信障害の頻発が目立つドコモだけに信頼をこれ以上落とすわけにはいかない。また通信事業者各社は今秋以降、LTE(高速通信サービス)に対応したスマホ端末を拡充。現在主流の第3世代携帯電話(3G)からLTEへの移行を促して回線を分散化し、通信障害を避けたい考えだ。

4月下旬から一部有料化したスタンプ(絵柄40種類で1セット170円)は7月中旬で約5億円に達するなどLINEの課金は順調だが、あくまでも利用者拡大が最優先で収益化は急がない。「利用者数で世界一にならないと生き残れない」(森川社長)としてフェイスブック超えを目標に、まずは年内1億人を目指す。

LINEでサービスが多様化してプラットフォーム化が強まれば、「通信事業者の有料コンテンツも使われにくくなる可能性がある」(MM総研の篠崎氏)。LINEをどう味方につけるか。その力はまだ未知数だが、人気アプリを前に通信事業者は今後難しい戦略構築を迫られるかもしれない。

(ロイターニュース 白木真紀、取材協力:斎藤真理)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below