August 23, 2012 / 4:41 AM / 7 years ago

焦点:アップルとサムスンの裁判、賠償算定は「錬金術」

[サンノゼ(米カリフォルニア州) 22日 ロイター] 米アップル(AAPL.O)と韓国のサムスン電子(005930.KS)の特許訴訟は22日、米カリフォルニア州サンノゼの連邦地裁で9人の陪審員による評議が始まった。同評議で白黒が付いた場合、次の焦点は、実際の損害賠償額が一体いくらになるかに移る。

8月22日、米アップルと韓国サムスン電子の特許訴訟は、陪審員による評議が始まったが、白黒が付いた場合、次の焦点は実際の損害賠償額が一体いくらになるかに移る。写真はアップルのiPhone4(右)とサムスンのギャラクシーS2。ソウルで昨年8月撮影(2012年 ロイター/Jo Yong-Hak)

スマートフォン業界に大きな影響を与えるであろう今回の裁判。約3週間にわたった証人尋問などを通じてアップルは、サムスンが「iPhone(アイフォーン)」やタブレット型端末「iPad(アイパッド)」のデザインや一部機能を模倣したとの主張を裏付けようとした。

そうした中、アップル側の証人として法廷に立ったマサチューセッツ工科大学(MIT)のジョン・ハウザー教授の証言は、スマホ特許訴訟の中心部分に切り込んだものだった。スマホに盛り込まれたさまざまな機能の1つが、実際にはいくらの価値があるのかという問題だ。ハウザー教授は、タッチパネル上で2本目の指を認識する機能の値段は、1台当たり39ドルだと証言した。

仮にこうした機能がハウザー教授の指摘通りの価値があるとみなされ、アップル側に有利な評決が出れば、それは巨額な損害賠償金以上の意味を持つことになる。サムスンの携帯端末の販売差し止めという、アップル側が求める判決につながるかもしれない。

損害賠償金は一体いくらになるのか。その答えを出すには、「錬金術」のような複雑な計算が必要になる。前提がわずかに違っただけで、最終的に数十億ドルの違いが生まれる。両社が呼んだ証人の証言をどう判断するか、判事や陪審員それぞれのとらえ方も千差万別だろう。

アップルは、争点となっている一部の機能は消費者の間で大きな需要があるとし、サムスンに少なくとも25億ドルの賠償金支払いと製品の販売停止を求めている。アップル寄りの評決になれば、今後スマホ業界の広い範囲で似たような訴訟のリスクが発生することになるだろう。

<顧客調査の問題点>

一部機能に対する「市場の需要」が大きな価値を生むというアップル側の主張は、MITのハウザー教授がサムスンの顧客に対してネット上で行った調査に凝縮されている。そしてそれは、この裁判でアップル側の主張の柱とも言えるものだ。

ただ、陪審員や判事の一部は、こうした調査に懐疑的でもある。アップルが米グーグル(GOOG.O)傘下のモトローラ・モビリティと争っていたスマホ特許裁判では、リチャード・ポスナー判事は、両社とも損害を証明できる十分な証拠がないとして審理を棄却している。

ロイターが先月行ったインタビューでポスナー判事は、企業が製品開発の過程で行う顧客調査と、訴訟のために準備する顧客調査は区別されるべきだと指摘。訴訟用の顧客調査は「信頼性で大きく劣る」と語った。

アップルとサムスンの裁判ではしかし、両社が呼んだ専門家の証言の多くが証拠として採用されている。

特許裁判ではこれまで、知的財産の評価法としていわゆる「25%ルール」が慣例的に使われてきた。敗訴した企業は、該当技術が製品全体に与える影響の大小にかかわらず、特許侵害製品が生み出す利益の25%を支払うというものだ。ただ、このルールは不当に大きな損害賠償金につながるとの批判もあり、昨年にはそれを覆す判決も出ている。

企業の損害賠償問題に詳しいロイ・エプスタイン氏は、最近の特許裁判で「特定の機能」と「消費者の需要」を結び付けようとする調査資料が多く出されるのは、こうした25%ルール否定の動きが背景にあると指摘する。

どの調査資料を陪審員たちの判断材料として使うかは、判事が決定する。ポスナー判事は、ある特定の技術的特徴に対する消費者の関心に焦点を当てた資料は、当該特許の重要性を人為的に誇張しかねないと指摘している。

一方、ハウザー教授は裁判所に提出した資料の中で、調査ではさまざまな機能を持った複数のスマホを消費者に見せたことで、この問題はクリアされていると主張している。

<賠償金算出の根拠>

ハウザー教授は、マルチタッチ機能などアップルが持つ3つの特許にスマホユーザーは100ドル支払うと指摘。また、アップル側の証人として出廷した公認会計士のテリー・ムシカ氏は、サムスンは1台当たり7.14ドルの特許使用料を払うべきだとの見解を示し、争点となっている機種からサムスンが得た利益は約22億ドルと算出している。

アップル側はこの算出額の根拠としてサムスンの利益率を35.5%と見積もっているが、サムスン側は、この数字はマーケティング費用や研究開発費などのコストが考慮されておらず、実際の利益は5億1900万ドルだと反論している。

陪審員は今後、訴訟で争われているアップルの特許7件、サムスンの特許5件について、20ページに及ぶ評決文をまとめる。複雑な法律問題が絡んでおり、評議には数日間かかる見通しだ。

(原文執筆:Dan Levine記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)

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