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ブログ:変動相場制と金本位制
2012年9月6日 / 00:36 / 5年前

ブログ:変動相場制と金本位制

森 佳子

昨年1月、クロアチアで撮影(2012年 ロイター/Nikola Solic)

米共和党が全国大会で先月末採択した政策綱領に、金本位制への復帰を検討する委員会の設置を盛り込んだことが為替市場で話題を呼んだ。

米共和党の「ゴールド・コミッション(金とドルとのリンク復活の可能性を探る政策)」の背景には、現政権による量的緩和の行き過ぎや、実物の裏付けのない貨幣(ドル)を刷り続け、ドルを希釈化することに対する根強い警戒感があるとみられている。

ロムニー候補は自身が大統領に当選した場合には、2014年1月に2期目の任期が切れるバーナンキ現議長を再指名する意思がないと言明しており、米大統領選の結果次第では、40年余り続いている国際通貨システムが変容する可能性がでてきた。

世界銀行のゼーリック前総裁は2年前、主要経済国は為替相場の指針となる新たな金本位制の導入を検討すべき、との見解を示し、ブレトンウッズ体制が1971年に崩壊した後を引き継ぐ変動相場制に代わる体制が必要であると主張した。

新しいシステムではドル、ユーロ、円、英ポンド、人民元の参加が欠かせないとした。「インフレやデフレ、将来の通貨価値に対する市場の期待を反映する国際的な基準として金を採用することも検討すべきだ」と同氏は述べている。

この時、バーナンキFRB議長はゼーリック氏の考えに反対し、金本位制は経済状況へ対処する政府の能力に影響を及ぼすと批判している。

変動相場制は1971年8月15日に、当時のニクソン大統領が「ドルと金の交換停止」を一方的に宣言したニクソンショックから始まる制度で、ニクソンショックによって、金とドルの交換を前提に構築されていた固定相場制(ブレトンウッズ体制)は崩壊した。

ニクソンショックから41年を迎えた日本は、この間にバブル経済とその崩壊を経て、1990年代から2000年代初頭まで「失われた10年」を経験し、「失われた10年」と2000年代以降の景気低迷を合わせて「失われた20年余り」に突入している。

変動相場制は、為替相場のボラティリティが高まり、ミスアラインメント(均衡レートからの乖離)が発生しやすいという特徴を持つ。変動相場制の各国への影響は国の規模や産業構造によって一様ではないが、日本が最も大きな負担を背負わされているという気がする。失われた年月のなかでも最近の数年は、特にこのシステムが日本の屋台骨を侵食しているように思う。

「管理変動相場制」をとる中国や事実上の管理変動相場制を採用する韓国は、変動相場制の下で苦しむ日本を反面教師として、通貨管理の手を緩めることはないだろう。

一方欧州では、変動相場制から約30年を経てユーロが誕生した。

ユーロ分裂や崩壊の可能性を指摘するエコノミストやアナリストは、国内外を問わず数多く存在する。その理論的・実証的な説明はともかくとして、その根底には、意識するしないに関わらず、「変動相場制は優れた制度であり、これに代わる制度はない」という米国的な考えが潜んでいるのではないかという気がする。なぜならユーロは変動相場制度のアンチテーゼとしての固定相場制度だからだ。

ブレトンウッズ体制のもとでは、米国とその他諸国の役割が非対称的であった。つまり、米国以外の国々は固定相場維持のため介入義務を負ったが、米国にはそれがなかった。

この伝統は変動相場制においても引き継がれ、介入しているのはもっぱら通貨の強い米国以外の国である。この非対称性を今後どうするのか、ユーロはその答えの一つであるのだろう。(東京 6日 ロイター)

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