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QE3後のリスクオンは小振りか、財政との「タッグ」期待できず
2012年9月12日 / 05:17 / 5年前

QE3後のリスクオンは小振りか、財政との「タッグ」期待できず

[東京 12日 ロイター] 12日から始まる米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和第3弾(QE3)が導入された場合、いったんリスクオンが進むとみられている。ただ、過去のQEに比べインパクトは小さいとの見方が多い。

9月12日、米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和第3弾(QE3)が導入された場合、いったんリスクオンが進むとみられている。写真はニューヨーク証券取引所。7日撮影(2012年 ロイター/Brendan McDermid)

米国の財政赤字が問題視されており、今回は財政出動との「タッグ」が期待できないほか、中国など新興国の経済減速も懸念されているためだ。一方、肩透かしとなった場合も失望感はいったん広がるが、景気減速懸念が根強いなかで金融緩和期待は継続し、本格的なリスクオフにはならないとの予想が出ている。

<米株の上昇は限定的か>

リーマン・ショック以前の2007年末以来、約4年9カ月ぶりの高値水準まで上昇してきた米ダウ.DJIやS&P総合500.SPX。米金融緩和期待が原動力だっただけに、実際にQE3が決定された場合、材料出尽くしになる可能性も懸念されているが、強気な見方は多い。「景気減速への懸念が強まっているから追加緩和効果はQE1やQE2より乏しいとの指摘もあるが、当時も景気が悪いから金融緩和したのであって、今回も一段のリスクオンは十分ありうるし、資産効果で景気への刺激効果も期待できる」と、国内投信の関係者は言う。

トムソン・ロイターの調査によると、米S&P総合500種指数採用企業の2007年の一株利益は85.12ドル。リーマンショック後の2009年には60.80ドルまで落ち込んだが、2011年には97.82ドルまで回復。2012年は103.42ドルに上昇する見通しだ。単純計算で2007年末のS&P500の株価収益率(PER)は約17倍だが、2012年の予想PERは11日の終値をベースにすると13.8倍。米企業による業績予想の下方修正が増えているほか、高値警戒感も出ているが、バリュエーション面では当時よりも割安感があるため、米株の上昇余地は小さくはない。

ただ財政政策の後押しもあった過去のQEと違い、今回は米国の財政赤字問題がクローズアップされるなかで、金融緩和と財政支出が「タッグ」を組むのは難しい。ムーディーズ・インベスターズ・サービスは11日、米国の来年度の予算協議で、債務の対国内総生産(GDP)比率の低下トレンドが示されない場合、米国は最高位の「Aaa」格付けを失う可能性があると警告している。金利はすでに歴史的な低水準であり、金融政策だけでは景気回復と金融緩和が併存するというリスクオン相場に好都合な状況を作り出すことは難しい。

中国など新興国や欧州の景気減速感が強まっていることも前回のQE導入時とは違う点だ。米国経済は外需減速の影響を受け始めており、QE3を好感し、株価が上昇しても上げ幅は限定的となるとの見方が市場では多い。「QE1やQE2当時より景気の楽観的見通しは少なく、財政出動も期待しにくい。現在、1万3300ドル近辺にあるダウが1万4000ドルに乗る程度だろう」とトヨタアセットマネジメントのチーフストラテジスト、濱崎優氏は予想している。

<読みにくい米金利とドル/円の反応>

日本株はドル/円の動きが大きく影響するため、QE3の波及経路は一段と複雑だ。米株が上昇しても円高が進めば効果は半減する。ドル/円は米金利の動きに左右されるとみられるが、米金利はQE3の金融緩和効果と景気刺激効果のどちらを重視して動くのか不透明感が強い。

金融緩和という点を市場が重視すれば米債価格が上昇・米金利が低下し、ドル安・円高になる可能性がある。ただ「18─19日に日銀決定会合を控えているほか、介入警戒感もあるため、ドル/円は下落しても限定的となりそうだ」(三菱UFJ投信・戦略運用部副部長の宮崎高志氏)との見方もある。

一方、株高が進めば、債券のネガティブ要因になることから、米債安・米金利上昇となり、ドル高・円安が進む可能性もある。「(ドル/円は米金融緩和を)前日の下げである程度全般的に織り込んでしまっている感じがある。FOMCが予想通りだった場合、若干買い戻して上値の重さをとりあえず確認しにいくような感じになる」と新生銀行・市場営業本部部長の政井貴子氏は予想する。

QE3で何の資産を購入するかによっても影響が異なる可能性がある。米国債のみの購入であれば、ドル余剰感が強まりドル安修正は進まず、米金利が低下するなかドル安・円高の状況は変わりにくい。一方、MBS(モーゲージ担保証券)の購入であれば、底打ち感が強まりつつある米住宅市場の後押しとなり、景気改善から米金利が上昇し、ドル高・円安に進むとの期待も出ている。

<「失望」も小振りか>

一方、今回はQE3見送りとの見方も少なくない。米国はいわゆる「財政の崖」などの問題が待ち受けており、ここで「切り札」を出す必要はないとし、前出のトヨタアセットの濱崎氏や三菱UFJ投信の宮崎氏もQE3見送りの可能性は大きいと指摘する。ロイターが米雇用統計発表後に実施したエコノミスト調査では、今回QE3が実施される確率は60%となっているが「意外と少ない」(国内証券)との声もある。

マーケットではQE3を織り込む形でドル安・米株高が進んでいることから、QE3が見送られれば、いったん失望するとみられている。QE3導入を見込んで構築されていたポジションは巻き戻され、米株は下落し米金利は上昇、ドル高・円安が進む可能性がある。円安は日本株のプラス材料だが、米株安が進む中で日本株だけが買われるとの期待は小さい。

ただ「失望」されたとしても市場のネガティブ反応は限定的だとみられている。「景気減速感が強いなかではバーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長は市場の緩和期待を維持するコメントを出すはずだ。緩和期待感が残る中では相場は大きく崩れにくい」(東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏)という。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 久保信博)

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