September 18, 2012 / 7:52 AM / 7 years ago

コラム:反日デモで日本経済下押しも、対中投資見直しの契機に

田巻 一彦

9月18日、中国における反日デモに伴う混乱が長期化すれば、日本から中国への部品輸出が減少し、日本経済への下押し圧力が増大するだろう。写真は北京の日本大使館前で撮影(2012年 ロイター/David Gray)

[東京 18日 ロイター] 中国における反日デモに伴う混乱が長期化すれば、日本から中国への部品輸出が減少し、日本経済への下押し圧力が増大するだろう。

中国経済の減速に加え、日系企業の操業度低下が長引けば、対中ビジネス依存度の高い企業は業績下振れリスクが大きくなる。だが、中長期的には中国経済に与える打撃が大きくなると予想する。中国にとって「反日デモ問題」は、潜在成長率の不連続な低下を表面化させた出来事として歴史に残るかもしれない。

<自動車・IT関連で部品輸出減の可能性>

18日は81年前に柳条湖事件が発生した日であり、中国国内では少なくとも80都市で反日デモが行われた。15日にはデモ参加者の一部が暴徒化し、日系企業の工場や自動車販売店、商業施設などが被害を受けた。

もし、日系企業への被害が想定される緊張状態が継続するなら、日系企業が経営する工場の操業停止が広がり、さらに期間も長期化しかねない。自動車やIT(情報技術)産業を中心に日本から中国への輸出は、完成品から基幹部品に主体がシフトしている。操業度の低下が長期化するれば、日本からの部品輸出が大幅に減少しかねない。2011年度の日本の対中輸出額は、対米輸出額の10兆3219億円を上回り、12兆4805億円と国別では最大。部品以外にもマイナスの影響が出る可能性が高い。

<対中依存高い企業、業績下振れリスク>

また、反日ムードの長期化は、自動車に代表される耐久消費財における日系商品の売り上げを押し下げる要因になる。製造業だけでなく、デパート、スーパーなどの流通各社は中国全土に店舗網を展開しているところもあり、混乱の長期化は、日本企業の連結ベースの収益見通しにとって、無視できないマイナス要因に浮上するリスクが高まっている。

以上のようなマイナス要因は、対中ビジネス依存度の高い企業にとっては、経営の先行きを左右することにもなりかねない。日中両国政府が事態の鎮静化に努めれば、今回のショックは短期的に対応可能だろう。しかし、根っこにあるのは領土問題であり、両国政府とも大幅な譲歩は難しく、日中関係の緊張が長期化するリスクは、相当に高まっている。

<対中投資、見直しの契機になる可能性>

「チャイナリスク」の高まりは、中長期的に日本企業の対外投資計画を大幅に変更させる契機になるかもしれない。中国では沿海部を筆頭に賃金上昇のうねりが強く、労働コストの低さが魅力だった数年前までとは様相が異なってきた。日系企業に対する風当たりが弱まらないようなら、ミャンマーやラオス、カンボジアなど中国周辺の低賃金国に日本企業の投資先がシフトする可能性がある。そこから中国市場に輸出できれば、中国国内に投資する必要性が低下しているからだ。

同じことは日本以外の外資系企業にも共通に言えることではないか。労働コストの上昇に見合った利益率の確保が見込めない中で、今は日本企業に向けられている批判の目が集中するリスクがあるなら、ベネフィットとリスクを比較衡量し、中国から他の地域に生産拠点を移す選択肢が視野に入るだろう。

青島や長沙でみられた一部デモ隊の暴徒化は、主要7カ国(G7)ではほとんど目にすることのない無秩序な状態だった。法的な秩序が政治的な理由で動揺しやすいことを、世界のメディアを通じて中国は露呈したことになる。このリスクを意識せずに中国に投資しようとする海外企業は、ほとんどなくなったのではないか。

<高齢化で鈍る中国経済の成長性>

一方、中国は欧州債務危機の影響で、主力の欧州向け輸出が前年比マイナスとなり、一部商品の過剰在庫が際立って多くなっている。さらに2008年9月のリーマン・ショック後に実施された4兆元の財政出動の結果、一部の業界や企業で設備過剰が目立ち、足元での調整局面を長引かせている。

そのうえ急速な高齢化で2015年には生産年齢人口が減少に転じると予測されている。余剰な農村人口の都市部への流入がなくなる「ルイスの転換点」も、そう遠くない時期にやってくるとの試算もある。こうした要因が成長力を下方屈折させることは、日本などの例でも明らかだ。この20年間に9─10%成長を達成してきた中国経済の成長性が、急速に低下するリスクは決して無視できない。

<日本の石油危機との共通性>

そのような構造上の変化が起きているかもしれない時期に、投資リスクを意識させるようなショックが起きれば、あたかも高度成長の終えん期に石油ショックが重なった日本のように、成長率が不連続になることも想定される。

とすれば、中国における反日デモの激化は、日中双方の経済にとってマイナスになるだけでなく、欧州債務危機や米国の「財政の崖」リスクなど多様な危険性を抱える世界経済にとって、新たな「火薬庫」を抱え込むことを意味する。直近のマーケットではリスクオンのムードが高まっているものの、それとは対照的な暗い影が、世界経済に差してきている。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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