September 20, 2012 / 6:22 AM / 7 years ago

焦点:中国政府に高まる弱腰批判、反日デモが新指導部の足かせに

[北京 19日 ロイター] 日本政府による尖閣諸島(中国名・釣魚島)の国有化に端を発した中国の反日デモ。中国政府は当初デモを容認する姿勢を取ってきたが、その方針は結果的に、胡錦濤政権から権力を引き継ぐ新指導部に影響が跳ね返ってくるリスクがある。

9月19日、中国政府は当初、反日デモを容認する姿勢を取ってきたが、その方針は結果的に、新指導部に影響が跳ね返ってくるリスクがある。写真は北京の日本大使館前で18日に行われたデモ(2012年 ロイター/David Gray)

尖閣問題をめぐる大規模な反日デモは、中国政府が日本に対して弱腰だとの批判も含まれており、10年に1度の権力移行を目前に控えた新指導部には強硬姿勢で外交に臨むよう圧力がかかっている。

中国の次期最高指導者と目されている習近平国家副主席は、療養中だったとされる2週間は姿を見せず、数日前になって公務に復帰した。現在、習氏を含む指導部には、対日強硬路線を求める世論から耳をそむけようとしているとの批判が高まるリスクもある。

「政府は軟弱すぎると感じている。だから、われわれの考えを示したい」。北京の日本大使館前のデモに参加した食品販売業者のZhang Xinさん(25)は怒りを吐露。「中国は強国としての要求を行うべきだ。今の政府には失望を感じる。民主的とは言えず、われわれの声を聞き入れてくれない」と不満を口にした。

反日デモで盛り上がった愛国心は、共産党には心強さと同時に憂慮すべき意味合いも含まれる。それは、デモ参加者が中国政府の領有権の主張を熱狂的に支持している一方、指導部にはその主張を行動に移す力がないと公に訴えようとする参加者が多いからだ。

また今回の反日デモでは、中華人民共和国建国の父とされる毛沢東の肖像画が多く掲げられた。毛沢東の肖像画は、日本政府の尖閣国有化について公にコメントを発表していない胡錦濤国家主席ら現指導部に向けた非難としても利用された。

海産物の販売員Shi Leiさん(25)は「毛沢東は新中国の最初のリーダーで、外国人に厳しく対応する策を知っていた。もし彼が生きていれば、今ごろ戦争になっていた。胡錦濤らは日本の挑発を前にして役立たずで軟弱だ」と痛烈批判。

会社員のChi Lixinさん(29)も「毛沢東は日本と戦い勝利した英雄だ。今の指導部は平和外交しか口にせず、ただ見ているだけ。われわれの領土を手放そうとしている」と語気を強めた。

<愛国心と不満>

愛国心と不満が入り混じった感情は、北京や上海、広州など多くの都市に広がった。これに対し、当局は反日行動が反政府デモに発展するのを防ぐため、数千人の警官や武装警官を配備。北京の日本大使館前では19日までに、警察がデモの封じ込めに乗り出した。

政治コメンテーターのLi Weidong氏は、「もちろん日本との問題は存在する。ただ、政府はそれを国内の不満のガス抜きに利用している」と指摘。「政府は不満の度合いを見計らっている。統制不能にはしたくない」と語った。

中国政治の専門家は、習氏ら新指導部が直面するリスクについて、長い目でみておく必要があると口をそろえる。

中国政府は早ければ来月に行われる共産党大会での指導部交代を最優先。しかし、その権力移行はスキャンダルなどで揺らいだ上、政府は予想外の経済成長の減速にも苦慮している。

そんな中、日中関係の不安定化は不確実性が増すことにつながる。強硬路線を求める世論に押されれば、中国指導部が弱腰批判を受けずに妥協点を探ることは一段と難しくなる。

米カリフォルニア大学のスーザン・シャーク教授は「誰だって日本に弱腰だとは思われたくない。皆が出世を競っており、弱腰だとの評判は将来にとって決していいことではない」と説明した。

たとえ日中の軍事衝突の可能性は低いとしても、中国側に妥協を探る外交の余地は狭まっており、領有権問題を早期に片付けるための選択肢も少なくなっている。

<歴史の新局面>

日本を研究する中国の専門家は、この先「大変な時期」が訪れると予測する。

「われわれは新たなステージに突入した」。こう話すのは北京・清華大学のLiu Jiangyong教授。「これまで中国政府は領土問題を脇に置き、2国間関係の発展に努力してきたが、その時代は終わった。歴史の新たな局面を迎え、日本の(尖閣)国有化も不可避だった」と分析する。

胡氏のポストを引き継ぐ習氏にとっては特に、この新たな局面は対応が難しいかもしれない。習氏は、過去の指導者らの影響力が色濃く残った状況においても、権威の確立に努めなければならない。また、胡氏よりも自己主張が強く機敏なリーダーになることへの期待感も高い。

中国のアナリストや西側の外交官らは、習氏は強硬派ではないとの見方を示す。しかし、尖閣諸島の奪還を目指す活動家らは、習氏はリスクを冒してでも対日政策で前政権より強硬な姿勢を見せなくてはならないと主張する。

中国民間保釣連合会の代表で活動家のTong Zeng氏は、今年7月に習氏が行った演説を引き合いに出す。習氏は清華大学での演説で、中国は「国家主権と領土保全を断固として主張する立場に基づき、近隣諸国との関係と地域の安全を守っていく」(新華社)と訴えた。

Tong氏にはその演説が、尖閣諸島などの領土問題で習氏が強硬路線にかじを切るシグナルに映ったという。Tong氏は「習氏が最高指導者になれば、政府はこの問題に対して新たな政策を打ち出すだろう」と期待を込め、「国民は釣魚島を守ることに圧倒的多数で賛成だ。だからこそ、政府はこの問題に注力していくはずだ」と強調した。

(原文執筆:Chris Buckley記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)

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