September 26, 2012 / 1:32 PM / 7 years ago

インタビュー:物価1%到達、後ずれの可能性=佐藤日銀審議委員

[東京 26日 ロイター] 日銀の佐藤健裕審議委員は26日、ロイターとのインタビューに応じ、日銀が事実上の目標に掲げている消費者物価(CPI)の前年比上昇率1%の達成について、現段階で日銀が展望している「2014年度以降、遠からず」というタイミングの「不確実性が強まっている」と後ずれを示唆した。

9月26日、日銀の佐藤健裕審議委員はロイターとのインタビューに応じ、日銀が事実上の目標に掲げている消費者物価(CPI)の前年比上昇率1%の達成について、現段階で日銀が展望している「2014年度以降、遠からず」というタイミングの「不確実性が強まっている」と後ずれを示唆した。都内で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

世界経済は引き続き下方リスクが大きいとし、日銀が描く日本経済の見通しから、さらに経済・物価が下振れるがい然性が高まる場合には追加金融緩和を「躊躇(ちゅうちょ)しない」と語った。

就任会見で新たな政策手段として言及した日銀による外債購入は「期待インフレ率を引き上げる有効策」と述べる一方、法律上の制約や海外当局との関係など実現に向けた課題の多さをあらためて指摘した。

<中国経済減速は想定以上に長引いている、内需に変調の兆し>

日銀は9月18、19日の金融政策決定会合で、資産買入基金の10兆円増額を柱とする追加金融緩和に踏み切った。理由について佐藤氏は、海外経済の減速の強まりを背景に、輸出や生産が減少する中で、先行きを含めて景気判断を「はっきり下方修正した」と指摘。日本経済が持続的な成長経路に復帰するという「当初想定していた経路を踏み外さないために追加緩和を実施した」とした。起点となった海外経済は、特に中国経済について「景気の減速した状態が想定以上に長引いている。中国の景気刺激策も発動ペースが抑制的だ」とし、「その他の新興国にも相乗作用をもたらしており、中国の需要動向が今一つ芳しくないことで輸出が軒並み弱含んでいる」との見方を示した。一方、年前半に堅調に推移していた国内需要も、個人消費などに「変調の兆しが見られ始めていることを懸念している」と指摘。こうした足もとの経済状況を踏まえれば「景気回復の時期は後ずれしていると率直に言わざるを得ない」と語った。

<世界経済は下振れ意識、リスク顕在化なら日本は景気後退も>

先行きについても「世界経済をめぐる不確実性は非常に大きい。金融・為替市場が景気・物価に及ぼす影響にも注意が必要だ」と世界経済の動向を警戒。「(世界経済の)リスクバランスは、どちらかというと下方を意識している」とし、尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日中間の緊張の高まりを含めて「中国の問題も下振れリスクの1つだ」と語った。特に欧州債務問題がさらに深刻化した場合の国際金融資本市場の動揺や、世界経済が一段と下振れするリスクを「最も警戒すべき」と強調。これらの世界経済をめぐるリスクが顕在化した場合には「日本経済が景気後退に陥るリスクもある」と語った。

物価動向については、景気の持ち直しが一服し、先行きも横ばい圏内の動きが続くとみられる中、「当然、需給ギャップの回復ペースも遅れてくる」と説明。生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)の前年比下落率が「一段と拡大していく地合いにはない」としながらも、日銀が現段階で見込んでいる「2014年度以降、遠からず」というCPIの前年比上昇率1%の到達時期は「不確実性が強まっている」と語った。

<経済・物価下振れれば追加緩和を躊躇せず、新たな手段も選択肢>

こうした情勢を踏まえた金融政策運営では、前回会合で下方修正した景気見通しをベースに点検するとしたが、「さらに経済・物価が下振れるがい然性が高まってくると判断された場合には、新たな手を打つことを躊躇(ちゅうちょ)しない」と強調。その際の手段について「期待インフレ率に働きかけ、実質金利の低下を促すことが重要」とし、1)バランス・シートの拡大、2)自国の為替レートの減価、3)リスク性資産の買い入れという3つが考えられると語った。日銀は国債を中心とした資産買入基金の累次の増額でバランス・シートを拡大させており、リスク性資産の増額も「オプションとしてある」としたが、「必要性が生じた段階で効果と副作用などを総合的に勘案して対応の是非を探っていきたい」と述べた。その上で、経済見通し下振れの可能性が景気回復の障害になる場合は、「新たな措置も当然オプションとして出てくる」と基金以外の緩和手段も選択肢になるとの考えを示唆した。

<為替安定に中銀がコミットすること適当でない、財務省との協力模索>

佐藤氏は、今年7月の就任会見で、新たな緩和手段として日銀による外債購入に言及した。現時点での円高は「日本経済にマイナスの影響が大きい」とした上で、「外債購入は、為替レートの減価を通じて期待インフレ率を引き上げる有効な政策の一つ」との認識をあらためて示した。しかし、為替安定を目的とした外債購入は財務省の所管で、「中央銀行が何らかのコミットを行うことは適当ではなく、日銀単独の判断ではできない」と言明。日銀法上の制約や外国当局との交渉など課題の多さを挙げながらも、「財務省と日銀が協力して何がしかの対応ができないか模索していきたい」とも語った。

<市場との対話、正確な動向把握と政策伝達が重要>

民間エコノミスト出身の佐藤氏には、市場とのコミュニケーションを円滑に行うための手腕にも期待がかかる。この点について「市場が政策を理解できない場合は、政策効果が減衰されてしまう」とし、「中銀が市場との対話を行うに当たっては、市場の動きを正確に理解したうえで、自らの政策判断を市場に正確に伝えるという姿勢が重要だ」と語った。

佐藤氏は、モルガン・スタンレーMUFG証券で経済調査部チーフエコノミスト兼債券調査本部長として景気全般、金融政策、財政政策など幅広い分野の分析・情報発信を手掛け、今年7月24日に日銀審議委員に就任した。

*インタビューの一問一答を後ほど配信します。

(ロイターニュース 伊藤純夫 木原麗花 竹本能文:編集 石田仁志)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below