December 9, 2011 / 4:17 AM / 8 years ago

コラム:欧州危機、IMFが中心的役割果たすべき局面に=サマーズ氏

ローレンス・H・サマーズ

 12月8日、サマーズ元米財務長官が、欧州債務危機はIMFが中心的な役割を果たすべき局面になったとの見解を示した。ニューヨークで2009年10月撮影(2011年 ロイター/Nicholas Roberts)

[ケンブリッジ(米マサチューセッツ州) 8日 ロイター] 欧州のリーダーらはきょう、再び「歴史的な」首脳会議に臨むことになる。欧州の運命は今回の会合にかかっているが、これが金融危機解決に向けた最後の会議となるわけではない。

フランスやドイツの方針を参考にすれば、首脳会議では財政規律の強化や、共通の危機対応メカニズムを構築することで合意する見通しだ。イタリアが打ち出した緊縮財政策を歓迎する意向が示され、通貨統合の維持に向けた強力な政治的コミットメントについても再確認されそうだ。これらはいずれも必要かつ望ましいことではあるが、世界経済は今後も厳しい状況が続くだろう。

欧州が世界最大の経済圏であることを考えれば、他の国々にとって、大規模な金融危機を回避するため支援することは大きな利益となる。欧州経済の成長や欧州の金融システムを支えることも、世界全体の投資にとって好ましい影響を与える。

国際通貨基金(IMF)にとっても「歴史的な」局面が到来している。危機対応策の焦点は、ブリュッセル(欧州連合)やフランクフルト(欧州中央銀行)からIMFに移りつつある。

1970年代の英国やイタリアの危機から1980年代の中南米債務危機、1990年代のアジアやロシアの金融危機に至るさまざまな危機の局面で、IMFは当事国が回復に向けて必要な措置を講じることについて強いコミットメントを示すことを条件に、流動性供給を通じて支援を行ってきた。

IMFが過去に実施してきた政策については、大きな議論の余地がある。だが、IMFは一貫して、経済原則が政治圧力に屈することは好ましくないとの立場を維持してきた。重要な局面では、IMFは資金の借り入れを必要としている国ばかりでなく、世界経済にとって重要な国に対して処方箋を提供してきた。

IMFのラガルド専務理事は8月、ジャクソンホールに金融関係者が集まった際、欧州が深刻な問題を抱えていると警告。その上で、欧州の銀行システムが資本不足に陥っており、成長を持続させる方法で構造調整が必要になるとの見方を示した。IMFにとって、さまざまな問題について声を上げ、行動すべき時がやってきた。

第1に、イタリアはIMFのプログラムに沿って改革を実行することが不可欠だ。欧州の当局者はギリシャが完全な債務返済能力を持っていると強調しているが、彼らだけで市場を納得させることができるとは思えない。しかも、北部の欧州諸国がイタリアに条件を課すかどうかにかかわらず、欧州内部で政治的に大きな溝が生まれている。これらのトラウマはIMFに委ねる方が望ましい。

第2に、IMFは欧州それぞれの国を支援する際、彼らが金融システムや数多くの国際的なコミュニティーに組み込まれていることを、これまで以上に認識する必要がある。中央銀行が適切な金融政策をとっていない国や、銀行システムにおける責務を無視する国に対して資金を融資することは考えにくい。IMFによる欧州各国の支援策は、当事国の金融政策をコントロールする欧州中央銀行(ECB)による理解を前提に実施される必要がある。

第3に、IMFはユーロ圏のメンバー国を支援する際、その国だけの見通しについて評価してはならない。ある国の貿易赤字が減少すれば、他の国の黒字が減少することになる。黒字の削減に向けた明確な道筋が描けなければ、赤字削減に向けた明確な道筋を定めることもできず、債務返済能力を確実なものとすることも難しい。もっと一般的に言えば、いかなるプログラムについても、経済動向に関する現実的な予測に基づいて持続可能性を評価する必要がある。IMFは現実離れした調整プログラムを承認しないよう、細心の注意を払わなくてはならない。

第4に、IMFは世界経済を脅かしている脅威について明確に発言する責任がある。たとえ欧州債券のスプレッドが縮小し、欧州が緩やかな成長を回復したとしても、欧州の銀行による大規模なレバレッジ解消の動きが世界経済を脅かしている。各国の財政状況が改善すればプラス要因となるが、それでは不十分だ。銀行が迅速に大規模な資本再編を実施しなければ、世界的に大規模な信用収縮が起きる恐れがある。

9日のEU首脳会合以降はIMFに注目が移る見通しで、そうならなくてはならない。IMFは大胆な行動をとる必要があるが、過去の危機からの重要な教訓を忘れてはならない。国際社会は支援を提供できるかもしれないが、各国や地域の繁栄は、つまるところ当事者それぞれの努力にかかっている。

(ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官)

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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