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焦点:中国が再びインフラ投資に傾斜、効率悪く地方政府に巨額の赤字

[中国・江西省南昌市 18日 ロイター] 中国は経済成長率が13年ぶりの水準に鈍化し、政府は景気てこ入れのため再び社会インフラ投資への傾斜を強めている。ただ、人口の寡少な地域での地下鉄建設など非効率な投資が行われ、地方政府は巨額の赤字を抱え込んでいる。

12月18日、中国は経済成長率が13年ぶりの水準に鈍化し、政府は景気てこ入れのため再び社会インフラ投資への傾斜を強めている。上海で2010年3月撮影(2012年 ロイター/Aly Song)

中国政府は成長促進に向けて立案済みのインフラ投資計画の承認を加速。わずか半年間で23都市での地下鉄の建設・延伸を承認した。江西省南昌市はこのうちの1つで、承認を受けた中で都市の規模が最も小さい部類に属する。

南昌市当局によると、市の人口は2015年までに15%増える見通しで、地下鉄網の建設はこれに対応するのが目的。15年までに2路線(総延長51キロメートル)を建設する予定で、費用は274億元と市の2011年の総生産(GDP)の10%、歳入の67%に相当する。2020年までにはさらに3路線、117キロメートル分を整備する予定だ。

しかし近代的な駅舎はガランとした街の赤茶けた土地に建設されており、周辺の人影はまばら。南昌市は人口が300万人と中国の基準では小粒で、地下鉄建設が財政負担に見合うのか疑問だ。

ノムラのエコノミストのZhang Zhiwei氏は「将来、成長の下支えが必要になれば、もっと大きな投資プロジェクトをひねり出さなくてはならなくなる。こうしたことをいつまでも続けることはできない」と話す。

インフラ投資に批判的な向きは、政府の無駄遣いぶりは中国が投資を抑え、消費を増やさなければならないという事実を明確に示していると指摘する。

国際通貨基金(IMF)も同じ見方だ。エコノミストによると、中国の今年の投資の対GDP比は昨年の49%とほぼ同水準になる見通し。一方、先進国は消費がGDPの60─75%を占める。

成長の投資への依存には、途中で途切れてしまう道路など無駄が生まれ、不良債務が積み上がって国の財政が逼迫し、国内消費が窒息状態となるリスクがある。

IMFは11月、中国は年間にGDPの4%に相当する3030億ドルの投資が過剰で、経済の安定維持には投資をGDP比10%抑制すべきだと指摘した。

<大量の債務>

反対派はインフラ投資がリスクを内包する証拠として、2008/09年の金融危機後に地方政府の債務が10兆7000億元積み上がったことを挙げる。アナリストによると、このうち最大で3分の1が不良債権化している可能性がある。

南昌市の昨年の財政収支は、中央政府からの財政移転や土地売却収入などにより112億元の黒字だった。しかし他の地方政府と同じように南昌市もペーパーカンパニーを使って資金を借り入れ、予算外の支出を賄い、地元経済の押し上げを図っている。公式記録によると南昌市はこうした金融関連会社を少なくとも2社保有しており、両社は大量の債務を抱えている。このうちナンチャン・ミュニシパル・パブリック・インベストメント・ホールディングス社は昨年の負債が135億元で、営業キャッシュフローの28倍近い。またナンチャン・シティ・コンストラクション・インベストメント・デベロップメント社は昨年の負債が106億元で、キャッシュフローは1億5560万元のマイナスだった。

フィッチ・レーティングスは、こうした巨額の負債について、景気が失速すれば不履行が発生する恐れがあると指摘する。フィッチの中国の現地通貨建てソブリン格付けはAAマイナスで、見通しは「ネガティブ」だ。

ただ、地下鉄建設に莫大な費用が掛かり、リターンが低い傾向があるのは確かだが、中国の全ての地下鉄建設計画が愚かなわけではないとの声もある。またインフラ投資支持派は、投資は過去5年間に大量に実施されたが、まだ余地は残っていると主張する。経済研究機関GKドラゴノミクスによると、中国の昨年の国民1人当たりの資本財投資は米国の6─7%にすぎない。

世界銀行の運輸専門家のジェラルド・オリビエ氏は、人口密集地での地下鉄建設はコストが高くつき、人口が少ないうちに建設した方が費用を抑えられるとしている。

(Koh Gui Qing記者)

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