December 21, 2012 / 4:57 AM / 7 years ago

焦点:インフレ抑制一辺倒を再考する世界の中央銀行

[ニューヨーク 20日 ロイター] 新世代のセントラルバンカーが登場し、金融政策に微妙な変化が生じようとしている。彼らは世界経済の回復を確かなものにするため、何が何でもインフレと闘うという古い教義に挑む覚悟だ。

12月20日、新世代のセントラルバンカーが登場し、金融政策に微妙な変化が生じようとしている。写真はロンドンのイングランド銀行(英中央銀行)。2008年3月撮影(2012年 ロイター/Toby Melville)

近くイングランド銀行(英中央銀行、BOE)の総裁に就任するカナダ銀行(中央銀行)のカーニー総裁が先週行った講演は、意図したかどうかは別として、どの程度倦まず弛まずでインフレを抑制するかをめぐる高レベルの論争を巻き起こした。

それから2日のうちにオズボーン英財務相、BOEの金融政策委員2人、そして多くのエコノミストが、カーニー総裁の発言が中央銀行の将来にもたらす意味に関する議論に加わった。

この鮮烈な反応は、世界経済危機を経て回復の足取りが鈍い時代にあって、世界の主要中銀の政策運営姿勢が変化することへの当惑を反映している。

米連邦準備理事会(FRB)から日銀に至るまで、政策当局者らは長い間金融政策の存在理由だったインフレ目標の見直しや緩和を実施し、公式な使命(マンデート)ではなくても経済成長により重きを置き始めている。

元FRB幹部で今は米資産運用会社ノーザン・トラストのチーフエコノミスト、カール・タネンバウム氏は「インフレターゲティングという単一の目標に対する一途な献身が後退した」と語る。

雇用促進や成長加速のためにインフレ率の跳ね上がりを許そうとしているセントラルバンカーは皆無だ。彼らはまた、名目国内総生産(GDP)ターゲットなど、現在の目標に代わる革新的な目標に対して概ね否定的でもある。

しかし金融危機が、危険を防げない中銀の姿を白日の下にさらし、中銀が低利かつ大量の資金供給により対応している今、小幅なインフレ率の上振れはかつてほどのタブーではなくなったのかもしれない。

<カナダ中銀が草分け>

バーナンキFRB議長はFRBの二重マンデートのうち雇用の方に焦点を定め、資産買い入れにより過去数年間で約2兆5000億ドルの資金を市場に供給してきた。

議長のアプローチはグリーンスパン前議長とも、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁とも異なり、カーニー総裁と同じグループに属するように見える。

FRBは先週、失業率を先月の7.7%から6.5%に引き下げる目標を掲げた。

前代未聞のこの措置は、グリーンスパン氏やボルカー前FRB議長が追求してきたインフレ中心の政策運営モデルからの離脱の結実かもしれない。また、雇用を増やすためのコストであるなら、インフレ率が目標の2%を超えることも看過するという明確なシグナルだ。

かつてニューヨーク地区連銀でエコノミストを務めたTDセキュリティーズのエリック・グリーン氏は「バーナンキ議長はインフレ制約を緩和」し、実質的にコアインフレ目標を1.75%から2.5%に引き上げたと記している。

カナダ中銀のインフレ目標は長年、幅が1─3%で中心は2%だ。

しかし47歳のカーニー総裁は過去の総裁と異なり、金融市場と経済の安定に資するならインフレ率が通常よりも長い間目標から外れることを許す「フレキシブル・ターゲティング」の考え方を強調してきた。

総裁は今月の講演で、カナダ中銀はインフレ・ターゲティングを撤廃する案も検討したが、リスクが高過ぎると判断したと述べている。

総裁は、英国の金融政策についての計画を示唆したわけではないと強調したが、BOE幹部らはすぐに反応し、金融政策運営アプローチの変更を牽制。フィッシャーBOE理事は、英国は2%のインフレ目標の変更に慎重になるべきで、カナダ中銀のように低金利を長期間約束する手法を採用する必要はないと発言した。

BOEの主任エコノミストのデール理事も、中銀の目標変更に「フリーランチ(うまい話)はない」と釘を差したが、オズボーン財務相は意外にもカーニー氏が論争の口火を切ったことを歓迎。議会で「体制の変更を望むなら、かなり強い論拠を示す必要がある」と述べた。

<最後のインフレファイター>

カーニー総裁は来年7月、キングBOE総裁の職務を引き継ぐ。キング総裁はインフレと闘う(この点での成績にはばらつきがあったが)セントラルバンカーとして最後の番人の1人と見られており、白川方明・日銀総裁やトリシェ前ECB総裁もこの仲間だ。

ドラギ現ECB総裁はECBの物価安定という呪文を慎重に守る一方で、金融市場にことし1兆ユーロ以上の潤沢な資金を供給し、ユーロ圏防衛のために無制限に国債を買い入れると約束している。

日本では白川総裁が、安倍晋三・自民党総裁からデフレ脱却のために2%の物価目標を定めるようにと異例のあからさまな圧力を受けている。

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは、白川総裁は財政ファイナンスによるリスクを懸念する最後の「普通の」日銀総裁になると予想する。

菅野氏は「日本では、デフレ脱却を望み、インフレを生み出すため日銀に魔法の杖を振るわせるべきだと感じる人が増えてきている」と説明。「日本に残された選択肢は日銀が国債の買い入れをさらに増やすことでプリントマネーを行うことかもしれない。国民がそれを望むなら、(白川総裁の)後継者はその道に踏み込まざるを得ないだろう」と語った。

(Jonathan Spicer記者)

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