March 13, 2013 / 5:07 AM / 6 years ago

焦点:イタリア問題は市場の動揺誘わず、ECBの国債買入策などで

[ローマ 12日 ロイター] イタリアでは、先の総選挙でどの政治勢力もはっきりした主導権を握ることができないという、投資家からみて想定される中で最悪の結果となった。景気後退の深刻化は続き、債務は増加、このほど格下げにも見舞われた。だがなぜ、市場はほぼ無関心のように見えるのだろうか。

3月12日、イタリアでは、先の総選挙でどの政治勢力もはっきりした主導権を握ることができないという、投資家からみて想定される中で最悪の結果となった。ミラノで昨年7月撮影(2013年 ロイター/Paolo Bona)

イタリア国債の指標利回りは選挙前の4.5%から4.6%程度に上がっただけ。ドイツ国債との利回りスプレッドも約2.9%ポイントから3.1%ポイントに拡大したにすぎない。

イタリアの経済のひどさや政治の停滞に対する動きとしては無視できる範囲内といえる。ユーロ圏債務危機が最も深まった2011年11月に利回りが7%を超えたというのも、今は遠い記憶になった。

ドイツ銀行の欧州経済調査責任者、ギレス・モエク氏はこうした状況について「驚いている。市場が無関心になっているのかもしれない」と話した。

他のエコノミストも首をひねり、現在は嵐の前の静けさかもしれないとの疑いを抱いている。その嵐は、新たな格下げや政権の枠組み作り失敗、あるいは米国の経済指標悪化がきっかけに起きる可能性がある。

ただ、市場がイタリア問題に比較的無頓着でいる論理的な根拠は存在する。第1の、そして最も重要な点は、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が昨年夏にユーロ圏防衛のためにやれることは何でもやると発言して以来、ユーロ圏全体の危機が沈静化し、イタリアがその恩恵を受けているという事実だ。そのほか、海外経済の成長見通し改善に伴う市場心理の好転や、イタリア国債における国内投資家の保有比率上昇といった要因も挙げられる。

ECBが、支援要請があれば実施すると約束した新たな国債買い入れプログラム(OMT)には多くの疑問点があるが、実際に失敗が証明されない限り、市場は局面転換をもたらす道具だとの見方を維持し続ける。

ウニクレディトのチーフ・ユーロ圏エコノミスト、マルコ・バッリ氏は「OMTの効果は本当に強力だということが目の当たりになってきている。1年前にイタリアが今の状況に置かれていれば(国債利回りは)天井を突き抜けていただろう」と述べた。

<ギリシャ型の不況に陥るリスク>

ユーロ圏危機がもたらしたもう1つの結果は、イタリア国債の国内保有比率が上がったことだ。逃げ出した外国投資家の穴を国内の銀行が埋めた。このために海外勢のイタリアに対する心理変化が、イタリア国債に影響しにくくなった。

昨年のイタリア国債の外国人保有比率は、2010年半ばの51%から35%まで落ち込んだ。

同時に海外経済の情勢は改善している。米国経済が持ち直し、世界経済の成長は加速しつつあり、イタリアで何が起きようともあまり重要でなくなったようだ。強気の市場は今、イタリアの状況がいかに厳しくなっても前途に光明を見出せるようになった。

ただ、これはイタリアが何カ月も完全に機能する政府を持てず、予見しうる将来には構造改革が視界に入ってこないかもしれないという事実を無視するものだ。

みずほのチーフエコノミスト、リカルド・バルビエリ氏は「事態が早急に打開されないと、イタリア経済は政治の行き詰まりに苦しみ、ギリシャのような不況に陥るリスクがある」と指摘する。

2011年は、市場はあらゆる良いニュースに目もくれずに悪材料にのっかってイタリアの国債利回りを押し上げるという正反対の状況だったが、動きの甚だしさでは当時と今で良い勝負だろう。

実際、国債利回り以外の要素を見れば、イタリアの状況は1年半前よりもずっと悪くなっている。

経済成長率は6四半期連続のマイナスで景気後退の長さは20年ぶり。経済規模は実質ベースで2001年よりも小さくなった。つまり11年間、平均して景気後退の状況にあるわけで、これは欧州では例がなく、世界でもまれな事態といえる。

経済の落ち込みが和らぐ兆しはなく、税制にも深刻な影響を与え続けるだろう。企業の資金調達環境はなお引き締まり、不良債権は増加している。

フィッチは8日にイタリアの格下げを発表した際に、今年の同国の成長率はマイナス1.8%と、昨年のマイナス2.4%に続く低調さになるとの見通しを示した。

アナリストによると、こうした経済不振の一因は2011年初め以降、市場を落ち着かせ、公的債務を抑制するために導入してきた緊縮策にある。もっとも市場は静まったが、債務は増え続けている。昨年の公的債務の対国内総生産(GDP)比率は127%と過去最悪になり、フィッチは今年末までに約130%に達すると予想している。

<指導者不在で自動操縦か>

モンティ氏が首相の職にあった間は、市場はイタリアが抱える問題を無視してきたが、先月の選挙でモンティ氏も退場してしまった。選挙結果は政治を不安定化させるための完璧なレシピを提供し、議会はベルサニ氏率いる中道左派、ベルルスコーニ氏率いる中道右派、グリッロ氏の「五つ星運動」という3つの勢力が並存する形となった。

連立政権が速やかに発足するかどうかは疑わしく、仮にそれが実現できたとしても、新政権の政策姿勢はモンティ氏が推進した市場に友好的な路線を追求しそうにはない。ただ市場は、ECBのバックストップの存在もあって、イタリアの新しい指導者が誰でもかまわないと考えている可能性もある。

ECBのドラギ総裁は7日の会見で、イタリアがこれまでに打ち出した緊縮措置の大半は「自動操縦」で実施されるとの見方を示した。

みずほのバルビエリ氏は、イタリアの停滞は民主主義における通常の「ひとこま」で心配は無用だという趣旨のこの発言を「政治的な傑作」と評したが、それが信じられるかどうかはまた別の問題だと強調した。

一方、ドイツ銀のモエク氏はドラギ総裁の発言は「言い過ぎ」としつつ、恐らくは2013年の予算が承認済みなので、新政権が即座に減税や歳出拡大をやらない限り、今年の財政赤字はそれほど増えないという意味だろうと解釈している。

いずれにせよこれは今年の話にすぎず、イタリアの債務の持続性はどんなケースであれ、すべて経済成長にかかっていて、財政政策の調整とはほとんど関係しない、というのがエコノミストの一致した見解だ。

(Gavin Jones記者)

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