[ワシントン 16日 ロイター] 米連邦航空局(FAA)は16日、全日本空輸(ANA)9202.T機がバッテリーの異常で緊急着陸に至ったことなどを受け、ボーイングBA.N787型機を運航する航空会社に運航停止を指示した。今回の一連のトラブルで問題になっているリチウムイオン電池は、自動車や米政府が導入するF35戦闘機や人工衛星にも使用されている。
787型機に搭載されているバッテリーに関する情報、およびリチウムイオン電池技術に関するポイントを以下に列挙した。
*787型機に搭載されているリチウムイオン電池はジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)6674.T製。仏タレスTCFP.PA製の関連回路とともに補助動力装置(APU)に使われている。APUは米ユナイテッド・テクノロジーズUTX.N傘下のUTCアエロスペースが供給している。
*米政府が導入するロッキード・マーチンLMT.N製のF35戦闘機もリチウムイオン電池を使用する。メーカーは仏サフトS1A.PA。ロッキードは、B787の問題が米政府の計画に影響を及ぼすことはないとの見通しを示した。
*欧州の大手航空機メーカー、エアバスEAD.PAのエアバスA350もサフト製リチウムイオン電池を搭載する予定。エアバスA350は今年中に初飛行することになっている。
*B787やエアバスのA380などは、非常用照明などの目的でより小型のリチウムイオン電池を使用している。
*リチウムイオン電池は過度に充電された場合に発火する可能性があり、発火すると化学物質が酸素を発生させるため消火しにくい。
ボーイングは過充電を防ぎ、バッテリー火災を封じ込め、煙が客室に達する前に吸い上げるための複数のシステムを設計したと説明している。
*ボーイングによると、B787に搭載されたバッテリーは車のバッテリーの2倍の大きさで、実験室でも実際の使用環境でも広範なテストが行われた。米国家運輸安全委員会(NTSB)によると、1月7日にボストン・ローガン国際空港に駐機中のB787で発火したAPU用バッテリーは、重さ63ポンド、サイズは19インチ×13インチ×10.2インチ。
*同様のバッテリーは、米ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nが製造するPHV(プラグイン・ハイブリッド車)「シボレー・ボルト」などの電気自動車のほか、人工衛星、ノート型パソコン、携帯電話などの電子機器に採用されている。この技術はソニー6758.Tが1991年に最初に電子機器に採用した。
*GMの「シボレー・ボルト」は2011年、米道路交通安全局(NHTSA)が衝突テストを実施した3週間後に発火する問題を起こした。NHTSAはその後、「シボレー・ボルト」などの電気自動車は、ガソリンを使用する自動車より発火リスクが高いとの判断を下した。フィスカー・オートモーティブのPHV「カルマ」に使用されていたA123システムズ製のリチウムイオン電池もリコールされた。
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