[フランクフルト 24日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)が来週5月2日の理事会で25ベーシスポイント(bp)の利下げを決定するとの観測が出ている。実際に利下げした場合、2012年7月以来となる。
ECB高官によると、理事会ではユーロ圏経済がリセッションに陥ったことに対応すべきというムードが広がっている。インフレ率がECBの目標を大きく下回っているという環境も後押しする。タカ派の急先鋒であるバイトマン独連銀総裁さえ態度が軟化しているという。
前回4月4日の理事会後の会見でドラギ総裁は、ユーロ圏経済を支援するため「行動する用意がある」と発言。利下げが近いことを示唆した。
ECB高官は「今やわれわれは自由」とし、次回理事会について「自分なら確実に政策金利について検討する」と語った。
ECBの理事会は年2回、本部があるフランクフルト以外で開催される。5月2日の理事会はスロバキアのブラチスラバで開催される。これまで「アウェイ」で金利変更を決定した例はほとんどないが、今回は厳しい経済情勢がECBの背中を押す可能性がある。
5月理事会で利下げに踏み切るかどうか、カギを握るのは経済指標だ。ハト派とされるクーレ専務理事は22日、前回理事会以降、経済データに改善の兆しがみられないと指摘している。
ECBは、ユーロ圏経済について「下方リスクあり」で年後半の穏やかな回復を予想している。
4月の購買担当者景気指数(PMI)速報値や独IFO業況指数など、今週、弱い経済指標が相次いでいる。
ECBのシナリオより景気が弱いと予想させるデータは、利下げの理由付けを強くする。
理事会メンバーは、利下げが経済に与えるインパクトは限られるだろうが、少なくとも景気を支援しようとするECBの姿勢は示せると考えている。
利下げする場合、対象は最重要のリファイナンス金利で、現在ゼロ%の中銀預金金利をマイナスにする可能性は小さいとみられる。
リファイナンス金利は現在、過去最低の0.75%。それでも、日本や米国に比べれば高い。
ベレンバーグ・バンクのエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏は「ドイツの景気減速と低インフレ、原油価格下落、これらはインフレ抑制要因でドイツ連銀さえ利下げ反対姿勢を弱めている」と指摘した。
<流動性を注視>
リファイナンス金利の引き下げは、ECBからの資金調達コストが減ることになり、特にECB頼みの周辺国の銀行にはありがたい話。ただ、それが融資促進につながるかどうかは分からない。
ECBの市場操作に詳しいある専門家は、銀行がリファイナンス金利の25bp引き下げをそっくり貸出金利に反映させるのか、それとも財務基盤の強化に回るのか、現段階では見極められないが、いずれの場合でも好ましいと指摘した。
ドラギ総裁も、4月理事会後の会見で、必要なら銀行の耐久性を強化することが肝要との見解を示している。
今の低金利がユーロ圏に等しく行き渡っているわけでなく、財政危機国の銀行はより高い調達コストを融資先に転嫁している。利下げは景気配慮の姿勢をアピールできるが、経済的効果は限定的とECBが考えるのはそうした状況がある。それもあって、ECBは短期金融市場、銀行の資金繰りを注視している。
世界的な信用収縮に対応してECBが実施した2回の期間3年の流動性供給オペ(LTRO)は、早期返済が可能となってからこれまでに全体の4分の1以上が返済され、銀行が自力で資金調達ができるようになったことを示している。
この先、ユーロ圏の金融システムが新たなショックに見舞われる可能性はある。その場合、ECBがどう対応するか現段階では未知数だ。
ドラギ総裁は4月の会見で「ECBの金融政策スタンスは必要な期間(as long as needed)緩和的であり続ける」と述べ、「必要な期間(for as long as necessary)」無制限に流動性を供給し続ける方針を示した。
米連邦準備理事会(FRB)のような超低金利政策を継続する数値基準を示す可能性は低いが、銀行への流動性供給に関し何らかのコミットメントを示すことはありそうだ。
ECB高官は「『必要な期間』について、もう少し具体的に踏み込む可能性がある」と語っている。
(Paul Carrel、Andreas Framke、John O’Donnell記者;翻訳 武藤邦子;編集 内田慎一)
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