October 25, 2016 / 7:51 AM / in 3 years

訂正:邦銀のTLAC債、内外投資家のマネー引き寄せ 高利回りの魅力

[東京 25日 ロイター] - 日本のメガバンクグループが発行するTLAC(Total Loss-Absorbing Capacity)債に対する海外や国内機関投資家の注目度が上がっている。世界的な低金利による運用難の下、相対的に高い利回りが「干天の慈雨」となっているためだ。さらに日本国内の法制上の特徴によって、邦銀には実質的な「政府保証」が付いているとの思惑も人気の一因になっている。

 10月25日、日本のメガバンクグループが発行するTLAC(Total Loss-Absorbing Capacity)債に対する海外や国内機関投資家の注目度が上がっている。写真は都内で2010年8月撮影(2016年 ロイター/Yuriko Nakao)

<応募殺到で増額も>

「邦銀は今度、いつTLAC債を発行するんだ」──。国内投資家だけでなく、海外投資家からも質問される機会が増えていると、国内金融機関のアナリストは話す。

TLAC債は、FSBが指定するグローバルなシステム上重要な銀行「GーSIBs」30行が発行する(訂正)新型の債券だ。

リーマン・ショック後、各国政府では経営破綻の危機に陥った金融機関を公的資金で救済したケースが続出し、各国の納税者の不満が高まった。2015年、20カ国・地域(G20)の金融規制当局で構成する金融安定理事会(FSB)は、巨大銀行グループを対象に、経営破綻時に投資家に損失負担を強いるTLACの仕組みを作った。

日本で対象になるのは、3つのメガバンクグループ。所要自己資本8%を含めて損失吸収の対象となるTLACとして、2019年までにリスク・アセットの13.5%、22年までに同14.5%の積み上げを求めている。

16年春に三菱UFJフィナンシャルグループ(8306.T)が50億ドルを発行したのを皮切りに、三井住友FG(8316.T)が40億ドル、みずほFG(8411.T)が40億ドルの発行で続いた。三菱UFJFGは、当初30億ドルを予定していたが応募が殺到し増額。その後も各行は、随時発行し続けている。

魅力は、その高い利回り。10年米国債の利回りは今年の春先に1.7─1.9%程度だったが、邦銀3グループのTLAC債のクーポンは3.4─3.8%だった。「ドル建てだが、ヘッジ付きでも利益が取れる」(国内生保)と、米国勢だけでなく、日本勢も飛びついた。

経営破綻時に元本き損リスクがあるTLAC債は、格付けが低く設定されるのが通例だと、スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン(S&P)の主席アナリスト、吉澤亮二氏は話す。

ドイツ銀行(DBKGn.DE)への懸念が高まった9月、自己資本比率が一定レベルを下回った時に普通株に強制転換されるという、TLAC債と似た仕組みの同行の偶発転換社債(CoCo債)をめぐって、市場の警戒感が高まった。

<実質的な「政府保証」との見方>

しかし、S&Pの吉澤氏によれば、邦銀3グループのTLAC債は、他国の銀行のTLAC債に一般的に用いられるノッチ差の拡大が、適用されない。日本には、預金保険法で予防的な資本注入制度があるため、元本き損のトリガーとなる経営破綻の可能性が低いためだ。

FSBが決めたTLACの仕組みは、公的資金を注入しないことが前提。イタリアやドイツでは、国として金融機関に公的資金を入れたい場面でも欧州中央銀行(ECB)の方針で認められないジレンマに陥った。

日本では1990年代の金融危機を経て、預金保険法の整備が進んだ。経営破綻前の段階での予防的な公的資金の注入が可能で、りそな銀行などの経営危機の際でも「日本では劣後債を含めてデフォルトしていない」(吉澤氏)。

邦銀のTLAC債人気は、財務面の信用力の以前に、日本独自の法規制が「実質的な政府保証」(先の国内生保)と受け止められている面もありそうだ。

預金保険法102条や126条で、破綻前の公的資金注入が可能で、この規定が適用されれば、破綻は回避し得る。

日本は欧米に先行して法整備した経緯があり「現状が安定している以上、欧米当局があえて改革を求めるという議論にはなっていない」(国内金融筋)という。

金融庁幹部は「経営危機に陥った金融機関への対応は、個別の事案ごとに決定すべき問題のため、TLAC債の損失吸収を含めて、実際にどのような処理ツールを用いることになるかは、あらかじめ申し上げられない」と話している。

しかし、同じTLAC債という名前でも、欧米銀と邦銀とでは発行した債券のリスクに、現実には格差がある。ある国内金融機関の関係者は「こうした規制の『歪み』が、邦銀のTLAC債の投資妙味を高めた」と指摘する。

この実態は、徐々に市場でも認識され、今年夏以降の発行では、クーポンが春先の発行分に比べて10年もので1%程度低めに設定された事例もあった。それでも「クーポン次第では、追加で引き受けたい」(別の国内生保)と意欲的な投資家は依然多い。

フィッチ・レーティングス・ジャパンのダイレクター、森村直樹氏の試算では、今後、2019年までに邦銀3グループのTLAC債は最低でも100億ドル(約1兆円)の発行余地がある。

*25日に配信した以下の記事で、3段落目の「20行の持ち株会社が発行する」を「30行が発行する」に訂正します。

平田紀之 編集:伊賀大記、田巻一彦

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below