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五輪取材ノート:金メダリストは数学者、会見で見せた笑顔と信念

 7月25日の女子自転車ロードレースを大番狂わせで制したオーストリアのアナ・キーゼンホファー(写真中央)は、がちがちに緊張した様子で優勝会見に臨んだ。7月25日、静岡県小山町で撮影(2021年 ロイター/Christian Hartmann)

[小山町(静岡県) 26日 ロイター] - 25日の女子自転車ロードレースを大番狂わせで制したオーストリアのアナ・キーゼンホファーは、がちがちに緊張した様子で優勝会見に臨んだ。同時通訳のイヤホンも、司会者に促され慌てて付ける。「何もかもが初めてなので」とはにかむ姿に、会見室の空気も和んだ。

しかし、 いざ会見が始まると、強い意思と信念を持った受け答えが続く。自己トレーニングではまず基本を押さえ、学術書を読み込む。その日の食事や水分の採り方も、自己分析を重ねた上で決めるという。

世界ランク94位のキーゼンホファーは現在30歳で、本職は数学者。並みいるプロ選手を押しのけて金メダルに輝いた。チームで戦う自転車ロードだが、彼女はコーチも栄養士も雇っていない。レース中も単独で走った。

「訳知り顔であれこれ指示するコーチに限って何もわかっていない」、「見通しを立てる過程に近道はない」とコメントも印象的。英語だけでなく、仏語、独語、スペイン語も堪能だ。

誰もが予想していなかった優勝であったということは「そうでしょうね」と話すが、一方で「私は奇跡を信じていない」と断言する。緻密な自己分析と地道の努力に裏付けられた自信を感じた。

レース以降、スマホはリュックのどこかに紛れ込んだままで、全幅の信頼を寄せているという家族やボーイフレンドとはまだ話をしていない。「きっと皆喜んでいる思う」と話す笑顔がとてもチャーミングだった。

(田中志保)

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