[東京 7日 ロイター] - 来週の外為市場では、円が底堅い展開となりそうだ。貿易摩擦や新興国動向への懸念など、円買いにつながりそうな材料が多いためで、ドル/円は7月以降続いた110円付近を下限とする取引レンジを切り下げる可能性もあるという。
予想レンジはドル/円が109.50━111.50円、ユーロ/ドルが1.1500―1.1700ドル。
市場では、今月25日にも行われる見通しの日米首脳会談と、それに先立つ日米通商協議(FFR)で、日本が米国に貿易赤字削減の具体策などを求められるのではないかとの警戒感が強まっている。
きっかけは米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道。同紙コラムニストによると、トランプ米大統領は電話で「自身と日本の指導者との良好な関係に言及する一方、『もちろんそれは彼らがいくら支払わなければならないのかを伝えればすぐに終わるだろう』と付け加えた」という。
日本にとって、貿易黒字の削減は通貨安圧力にもなり得る。しかし、貿易摩擦の激化による国内景気減速や株安への懸念、市場心理の冷え込み、それに伴う国内大手投資家の海外投資手控えリスクなどは、いずれも円高材料だ。
テーマ的に円安けん制の思惑も広がりやすい。「10%の追加関税と10%のドル安の効果は経済的に同じ。気の短いトランプ大統領がここに訴える可能性はある」(みずほ銀行国際為替部チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏)との声が早くも出ている。
米国が示している2000億ドル相当の中国からの輸入品に25%の関税を上乗せする方針の行方も重大だ。何らかの措置が取られた場合、外為市場では、やはりアジア景気の減速など「リスクオフムードの高まりを見越した円買いが強まりやすい」(外銀)とみられるためだ。
テクニカル的にもドル安/円高に振れやすい状況だ。日足の一目均衡表は雲の下限を割り込みつつあり、最近の取引レンジ下限だった110円を明確に割れると、8月安値の109.77円が目前に迫る。「そのまま109円半ばも割れれば、ターゲットは5月安値の108.11円」(信託銀)へ切り下がるという。
新興国ではトルコ中央銀行が13日に開く政策決定会合が注目点。中銀は3日に声明を発表し「金融スタンスは最近の動向を踏まえ、9月の金融政策委員会で調整される」と明言した。すでに市場では利上げ予想が出回っているが、その幅は3─7%程度とかなり大きい。利上げが小幅にとどまれば、リラ安が再び円高へ波及する可能性もある。
為替マーケットチーム
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