[東京 7日 ロイター] - 今週の外為市場では、ドルの底力が試されることになりそうだ。決め手となるのは米長期金利の動向で、騰勢が続く米インフレ指標を受けて金利高となれば、ドル買いが促される公算が大きい。ただ、原油高を背景に底堅い資源国通貨や、3年ぶり高値圏にあるユーロ、英ポンド、人民元とライバルは多く、「ドル一強」にはなりにくい。
予想レンジはドルが108.50━110.50円、ユーロが1.2050―1.2250ドル。
5月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比55万9000人増と、市場予想の65万人に届かず、連邦準備理事会(FRB)が早期に金融引き締めに着手するとの観測が後退し、ドルは3日ぶり安値109.37円まで下落した。
上田東短フォレックスの営業推進室長、阪井勇蔵氏は「日本の景気回復の遅れなど、積極的に円を買う要因は見当たらず、(ドル/円は)上方向の余地がある」としながらも、米雇用統計後にドル高の勢いが急激に失速したため、「いったん仕切り直しになりそうだ」とみている。
一方で、原油高を背景とする資源国通貨高や欧州通貨の底堅さは続いており、ドルが上昇トレンドに復帰しても、「ドル一強になりにくい」(同)という。
ドル/円の先導役である米長期金利については、FRBが今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング(量的緩和の段階的縮小)の地ならしを始めるかが焦点となる。
10日には5月の米消費者物価指数(CPI)の公表が予定されている。4月の総合指数は前年比4.2%上昇と12年7カ月ぶりの高い伸びとなり、テーパリング観測が広がった。
FXcoin取締役の上田眞理人氏は「テーパリングの議論は高値圏にある米国株を不安定にしやすく、一本調子にドルが買われる可能性を低下させる」とみている。
「投資家はドルの代わりに、ワクチン普及で景気回復が先行する英国のポンドやユーロに資金を回しやすい。このため、クロス円にはまだ上昇余地がある」と同氏は予想する。
先進国で最も早く緩和縮小に乗り出したカナダ中央銀行は9日に政策決定会合を開く。今回は政策変更はないとみられるが、ロイター調査では、同中銀は第3・四半期に追加のテーパリングに動く見込みだ。
欧州中央銀行(ECB)の定例理事会(10日)では、資産購入プログラム(PEPP)の規模を現行の1兆8500億ユーロに維持すると予想されているが、インフレに関する見解が注目される。
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