June 11, 2018 / 9:26 AM / 4 months ago

焦点:値上げ銘柄に明暗、力強さ欠く消費 インフレ相場はまだ先

[東京 11日 ロイター] - 値上げを発表した企業の株価が明暗を分けている。人件費や材料費などコスト増に耐え切れず、値上げを決定する企業が増えてきているが、株価の反応はまちまち。値上げが消費者に受け入れらないと市場が「判定」を下す企業も少なくない。こうした二極分化は日本経済に力強さがないためとみられ、「インフレ相場」への移行は、まだ先のようだ。

 6月11日、値上げを発表した企業の株価が明暗を分けている。写真は都内で昨年8月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<山パンで期待も>

値上げ圧力が日本株を押し上げるか──。そうした期待を市場に抱かせたのが、山崎製パン(2212.T)だった。同社は6月1日、原材料高や人件費・物流費の増加を背景に、7月の出荷分から一部のパン製品を値上げすると発表。翌営業日4日の株価は一時15%高と急伸した。11日の終値は1日終値に比べ13%高。高値圏を維持している。

値上げが消費者にすんなりと受け入れられるようになれば、企業は値上げを行いやすくなり、デフレからの完全脱却も見えてくる。物価調整をしない(実質ではない)名目の企業利益をベースとする株式市場にとって、インフレはポジティブな環境だ。

しかし、他の値上げした企業の株価をみると、必ずしも値上げはプラス材料というわけではない。乳業3社は4月に家庭用チーズの値上げを発表したが、明治ホールディングス(2269.T)が上昇基調を継続しているものの、森永乳業(2264.T)と雪印メグミルク(2270.T)は、日経平均をアンダーパフォームしている(表参照)。

3社とも値上げ発表直後の株価はポジティブな反応をみせたが、直近1カ月の株価は高安まちまち。決算発表シーズンを通過すると違った動きをみせるようになった。

雪印メグの19年3月期の営業利益は前期比1.9%減、最終利益は0.9%増の計画。森永乳は営業利益で3.8%増、最終利益で14.5%減の見通し。一方、明治HDは営業利益で5.1%増、最終利益で2.8%増を見込む。

雪印メグはチーズの販売促進費用などが利益を圧迫する見込み。森永乳は前期に固定資産の売却を計上し純利益が増加した反動が響く。一方の明治HDは、20年度までの中期経営計画で、アナリストらのコンセンサスを上回る営業利益目標を発表。業績見通しが株価の明暗を分けた格好だ。

<個別次第の評価変わらず>

値上げを株価のプラス材料と評価するかどうかは、あくまで個別企業の状況次第という、これまでのマーケットの評価が変わったわけではなさそうだ。実は、値上げに対し株価が大きくプラス反応した山崎製パンも、「伏線」があったとの指摘が出ている。

同社は2月、初となる自社株買いを発表。市場では「資本効率を意識した経営にかじを切りつつある」(外資系証券)との評価が広がっていた中での値上げ発表だった。

ドルトン・キャピタル・ジャパンのシニアファンドマネージャー、松本史雄氏は「原料が下がれば今度は値下げするかもしれない。長期でみれば、値上げそのものは、企業価値を高める話ではない」と話す。

<牛丼には別の期待も>

値上げが明暗を分けている例は、他にもある。牛丼を値上げしたゼンショーホールディングス(7550.T)の株価は堅調だが、昨年に280円均一のメニュー価格の値上げに踏み切った居酒屋の鳥貴族(3193.T)はさえない。

鳥貴族の新規店は堅調だが、5月の既存店売上高は5カ月連続で前年割れ。

しんきんアセットマネジメント投信・運用部長の藤原直樹氏は「類似の居酒屋が増えており、業態として競争が激しい。顧客が他店に流出しているのだろう」と分析。一方、牛丼は寡占化され、セットメニューを作り客単価を高めようとしていると指摘する。

牛丼チェーンに関しては「日米の通商交渉が始まれば、結果として米国産牛肉の関税が引き下げられる可能性がある。原材料価格が下がる期待もある」(内藤証券・投資調査部長の田部井美彦氏)との指摘もあった。吉野家ホールディングス(9861.T)や日本マクドナルドホールディングス(2702.T)の株価も直近では堅調だ。

<「デフレ銘柄」堅調、弱い消費>

値上げに対する市場の評価が渋いのは、やはり日本経済や消費に力強さが足りないためだ。

総務省が5日に発表した4月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の消費支出は、前年同月に比べ実質で1.3%減少(変動調整値)。3カ月連続で減少したことなどを踏まえ、個人消費の基調判断は「弱さがみられる」に引き下げられた。

また、18年の春闘は6月11日時点の途中集計でベースアップ分が0.53%と、15年の0.67%にも達しない情勢だ。

業種別指数の食料品.IFOOD.Tの騰落率は年初来、直近の1カ月間でみても日経平均を下回っている。業種別指数の小売業.IRETL.Tは年初来で7%高と、東証33業種の中で上昇率は電気・ガスに続き2番目の高さとなり、11日には年初来高値を更新した。

ただ、値下げに動くイオン(8267.T)が26%高となるなど、いわゆる「デフレ銘柄」の上昇も顕著だ。

日本総研・主任研究員の小方尚子氏は「消費者は食べるものにはお金を払うが、財布の中身が増えている訳ではない。当然、他のところで節約することとなる。消費全体をみたときには楽観できない状況」と指摘。「夏のボーナスは昨年よりは上がるとみられており、雇用も増えている。『腰折れ』を心配するほどではないが、景気回復が実感できるには程遠い状況が続きそうだ」と話している。

長田善行 編集:伊賀大記

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