[東京 12日 ロイター] - 前場の東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比415円54銭高の1万6124円36銭と大幅に続伸した。取引時間中としては、英国の欧州連合(EU)離脱が決まった6月24日以来、約半月ぶりに1万6000円台を回復した。ドルは午前の取引で、朝方の安値102.45円付近から一時103.29円まで買い進まれた。その後、買いが一巡すると、折り返して102.83円まで急落するなど、不安定な値動きとなった。市場関係者のコメントは以下の通り。
<パインブリッジ・インベストメンツ 執行役員 前野達志氏>
相場の先行きを左右する米国景気については、6月米雇用統計は良好だったかもしれないが、全体をみる限り、強い米国経済は期待できない。この見方は維持している。米長期金利は依然として1.5%を下回っている。陰の極とみるまで強気にはまだなれない。
国内では参院選後、経済対策などに関心が移っている。財政出動は一時的な経済の引き上げ効果を生み出すかもしれない。だが、労働市場改革のような痛みを伴う成長戦略が、中長期の成長に求められているのは変わらない。ここに視点を移す限り、日本株の一方的な上昇が続くとは見込みにくい。
日経平均は1万6000円前後を行き来する展開となるとみている。米国経済の将来とともに、安倍政権の経済対策が本当の意味で日本経済のサスティナビリティにポジティブな内容なのか、中期的な判断に迫られる時期がいずれくるだろう。
<東海東京調査センター チーフストラテジスト 隅谷俊夫氏>
英国の欧州連合(EU)離脱決定後、世界的に株式は売られたが、欧米株などが急落前の水準を回復する一方、日本株は出遅れていた。そのなか参院選の結果を受けた大規模な経済対策期待などにより円高進行に歯止めが掛かり、日本株の上昇に拍車がかかっている。これまで円買い・株売りを積み上げてきた短期の海外勢などがポジションを巻き戻しているようだ。
7月28─29日の日銀金融政策決定会合に向けて量の拡大など一段の追加緩和の思惑も広がりやすく、日本株は当面戻りを試すだろう。日経平均は今年に入り1万6500円を中心に主に上下1000円程度のレンジで推移しており、1万7500円程度までの上昇はあり得るとみている。
もっとも、短期資金の戻りが主体であり、継続的に上昇するためには中長期の投資家からの資金流入が必要。東証1部の売買代金が2兆円前後でとどまっているようでは短期筋のみといえる。2兆円台後半から3兆円程度まで膨らめば新たな資金が入っているとみられ、先高観につながるだろう。
<クレディ・アグリコル銀行 外国為替部長 斎藤裕司氏>
ドル/円は103円前半まで回復してきたが、海外の2つの不透明要因が解消されたことが下地にある。まず、6月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)の増加が28万7000人と、市場予想を大幅に上回ったこと。4─6月の3カ月を平均すると15万人弱で、まずまずの数字だ。労働市場の基調に変化が起きたとは言えず、米連邦準備理事会(FRB)の次の一手は、利下げより利上げというイメージがしやすくなった。
また、英国の欧州連合(EU)離脱に関連し、キャメロン首相の後任にメイ氏が就任することが決まった。英国側の交渉相手が誰になるのか分からないという状況がなくなったことも、先行き不透明感の払しょくにつながっている。
その中で、日本の経済対策への期待が高まっている。報道では、10兆円を超す大型対策になると伝えられており、安倍政権の並々ならぬ覚悟がうかがえる。アベノミクス再始動に向けては、日銀追加緩和への期待もかかりそうで、日銀は7月末の決定会合で動く可能性がより高まったとみている。追加緩和があれば、ドル/円は105円絡みの新しいレンジを形成する可能性がある。
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