[サンフランシスコ 8日 ロイター] 米グーグルGOOG.Oが発表したパソコン用の基本ソフト(OS)開発方針は、「ウインドウズ」を抱える米マイクロソフトMSFT.Oに正面から挑戦状を突きつける格好となった。ネットブック・パソコンの登場によって下押し圧力の高まるパソコン価格だが、グーグルのOS市場参入でさらに下落する可能性がある。
グーグルは2010年下期に「グーグル・クローム・オペレーティング・システム(クロームOS)」をリリースし、当初はネットブックに搭載する予定。アナリストらは、同OSが低額もしくは無償で提供されるとみているが、そうなればマイクロソフトは価格競争に引きずり込まれる公算が高い。
パソコン向けOS市場は現在、世界全体でシェア約90%を抑えるウィンドウズの独壇場だが、アナリストらは、今年10月に「ウィンドウズ7」を発売するマイクロソフトにとって、グーグルの挑戦は軽視できないとみている。
ベンチマークのアナリスト、ブレント・ウィリアムズ氏は「マイクロソフトの戦略は、価格面での競争になる可能性が高い。影響力があってブランドも認知されている競争相手が登場する。グーグルだ」と述べた。
グーグルは、オープンソース型OS「リナックス」をベースにする「クロームOS」について、すべてのパソコンで使えるように設計するが、当初はネットブックをターゲットにするとしている。
ネットブックは、インターネットやいくつかの基本的なアプリケーションに使用を特化した低価格なパソコン。グーグルにとって、パソコン市場で唯一成長しているネットブックをターゲットにするのは理にかなっている。
通常300─400ドルで販売されるネットブックだが、新たな機種が相次いで市場に投入されているほか、電話会社が携帯電話端末と同様にネットブックでも販売奨励金制度を取り入れていることもあり、価格は下落傾向にある。
カウフマン・ブラザーズのアナリスト、ショー・ウー氏は、パソコンを構成するほぼすべての部品は価格が下落しているが、OSだけがそれを免れてきたと指摘。マイクロソフトには今後プレッシャーがかかると予想している。
マイクロソフトはパソコンメーカーに対するウィンドウズの提供価格を明らかにしていないが、ネットブックの多くに採用されている「XP」が20─40ドル、「ビスタ」は少なくとも150ドルとみられている。
ウー氏は、OSの価格競争は最終的に「PCベンダーの採算性を改善させることになる」と指摘。その上で「それを彼らが消費者にどれだけ還元するかが問題になってくる」としている。
<塗り替えられる業界地図>
2009年は2000万─3000万台のネットブックが出荷されると予想されており、PC業界の既存の「地図」は今後も塗り替えられていくとみられる。
米ヒューレット・パッカード(HP)HPQ.Nや米デルDELL.Oといった世界的な大手PCメーカーが相次いで新型ネットブックを市場投入しているが、アナリストの間では、台湾の部品メーカーのみならず、米AT&TT.Nなどの大手通信キャリアからも、米インテルINTC.Oの「×86」系プロセッサーや英ARMARM.Lのプロセッサーを搭載したネットブックが出される可能性が指摘される。
グーグルのクロームOSは、どちらのプロセッサーを搭載したパソコンでも稼動するよう設計されるという。
コリンズ・スチュワートのアナリスト、アショク・クマール氏は、クロームOSがマイクロソフトにとってすぐに脅威になるとの意見には懐疑的な見方を示した上で、「マイクロソフトはどんな挑戦にも価格面の柔軟性で受けて立つだろう」と述べた。
さらに「時間とともにリナックスは勢いを増すだろうし、ネットブックのチャンスに飛びつく通信キャリアも増えるだろう。グーグルはプラットフォームの差別化方法を彼らに提供するかもしれない。しかし、これはマラソンの最初の段階に過ぎない」と語っている。
また、ガートナーのアナリスト、マイケル・シルバー氏は、グーグルのOS参入はマイクロソフトには確かに多少のリスクとなるが、それが直ちにウィンドウズの値下げに結びつくとは考えていないと語る。「マイクロソフトはそれが脅威と見れば対応してくるだろう。しかし、ネットブックはこれまでウィンドウズXP搭載で出荷されており、リナックスと比べると価格は高いにもかかわらず非常に健闘している」のがその理由だという。