[東京 13日 ロイター] 日本航空(JAL)9205.Tは13日、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争手続き)を申請し、受理されたと発表した。
また同日の決算会見で西松遥社長は、業績悪化と公的支援に対して「経営責任を感じている。道筋がついてから進退を決めたい」と述べ、申請中の企業再生支援機構による支援決定などを経て引責辞任する可能性を示唆した。
JALは10月末、企業再生支援機構に対して支援要請を行ったが、機構による支援決定は年明け以降になるため、つなぎ融資の確保が急務となっている。事業再生ADRを活用すれば、融資している銀行からの資金回収を止める「一時停止措置」を取ることができ、法的整理に移行した際も優先的に弁済されるため、金融機関が追加融資しやすくなる。
JALは金融機関に対して追加融資を要請中としたが、要請額などは明らかにしなかった。会見した金山佳正取締役は「11月末にも必要額を借りられる見通し」と述べた。
<上期は過去最悪決算、通期見通し公表せず>
同日発表した4─9月期連結営業赤字は957億円(前年同期は302億円の黒字)、連結純損益も1312億円の赤字(前年同期は366億円)となり、上期として過去最悪の決算内容となった。
支援機構による支援の是非が未定の現状では「継続企業の前提に疑義がある」(金山佳正取締役)として、通期の従来予想を撤回し、見通しを公表しなかった。従来9円43銭を予定していた期末・年間配当も未定とした。
<債務超過の可能性については明言せず>
ビジネス旅客の減少や新型インフルエンザの影響で、売上高が前年同期比28.8%減の7639億円と大幅に落ち込んだ。特に旅客収入は国際線が43%減、国内線が12%減だったほか、国際貨物収入が半減したのが響いた。会見した西松遥社長は、全日本空輸9202.Tなどと比べて業績の落ち込みが大きい理由として、「需要変動の大きい国際旅客・貨物事業の比率が高いため」と説明した。
国土交通相直轄の専門部会、JAL再生タスクフォース(作業部会)が実質債務超過状態と判断していることについて、西松社長は「企業再生支援機構が査定中の現在、(債務超過かどうか)答えるべきでないと考える」と述べ、明言を避けた。
<「国内2社あってこそ切磋琢磨」>
JALの支援をめぐっては、3000億円以上とされる年金債務の減額が焦点のひとつとなっているが、西松社長は「公的支援受ける重みをOBに伝えたい」として、年金減額への理解を求める姿勢を強調した。
また財務省が公的資金の注入に難色を示しており、理由としてJALの中期的な成長戦略が不透明な点を挙げているとの指摘に対して、「日本やアジアの国際航空需要は拡大の余地が大きく、当社も成長しやすい環境だ」(西松社長)と説明。国内2社体制についても見直すべきとの声があることに対しては「韓国や中国、台湾も複数航空会社が並立している。全日空と当社の(大手)2社あってこそ切磋琢磨できる」と反論した。
米航空大手のアメリカン航空とデルタ航空DAL.NがJALへの出資も含めた提携を模索しているが、西松社長は、現状ではJALと同じ航空連合「ワンワールド」に所属するため「アメリカンとの提携がスムーズにいく」としたほか、「航空連合の移籍には時間と費用もかかる」と語った。
(ロイターニュース 竹本 能文記者)