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国債で増幅する「鳩山不信」、財政プレミアム論議再浮上も

 [東京 11日 ロイター] 鳩山由紀夫首相が掲げた2010年度新規国債発行額を44兆円以下にする「鳩山シーリング」をめぐり、国債市場参加者の不信感が増幅している。

 12月11日、鳩山首相が掲げた2010年度新規国債発行額を44兆円以下にする「鳩山シーリング」をめぐり、国債市場参加者の不信感が増幅している。11月撮影(2009年 ロイター/Toru Hanai)

 11日の国債市場で長期金利の指標銘柄である10年最長期国債利回りが一時前日より4.5ベーシスポイント高い1.285%となり、8日以来3営業日ぶりの高水準に逆戻りした。

 首相自らが掲げた目標が安易に撤回されれば、政府に対する信認が揺らぎかねず、外国人投資家から再度、財政プレミアムを突き付けられる事態に陥りかねない。長期金利は今年10月以降乱高下を続けており、鳩山政権下での迷走ぶりが際立ってきた。

 ロイターが11日実施した「財政緊急インタビュー」の詳細は以下の通り(順不同)。

 ◎ビー・エヌ・ピー・パリバ証券東京支店の島本幸治・投資調査部長「金融緩和に生じた限界、財政に負担」

 (1)新規国債発行額              45兆円

 (2)市中消化額(カレンダーベース)     145兆円

 (3)10年度長期金利レンジ    1.20―1.80% 

 ――2010年度国債発行額が「鳩山シーリング」を超える可能性が高まっている 

 「09年度2次補正後の新規国債発行は53.5兆円に上っており、10年度当初時点での44兆円枠は、もはや実態面で形がい化している。借換債も財投債も膨らんできており、新規財源債以外の国債も増え、国債供給圧力の高まりと同時に需給増への不安感が広がっている」

 「44兆円を超えること自体にインパクトはない。しかし、鳩山シーリングを守れない背景には予想以上に歳出削減が難しいことや、デフレによる税収不足があり、これは債券市場にネガティブで国債利回りの傾斜化バイアスとなりかねない」 

 ――ギリシャ国債が格下げされた。日本国債もそうしたリスクにさらされるか 

 「市場で財政政策が注目されやすくなっているのは、予算編成大詰めの段階で鳩山シーリングが崩れた国内要因と、先進国共通の要因として金緩緩和に限界が生じており、財政政策に負担がかかり始めているからだ。米国は国債買い入れ措置を止めている」

 「財政悪化が一部の新興国で話題となり、その連想でソブリン格付けに関する関心が高まり始めていることも、日本の財政状況が健全ではないだろうとの思惑を呼びかねない面もある」 

 ◎富国生命投資顧問の櫻井祐記社長「国債がリスク資産に変わる可能性も」

 (1)新規国債発行額              46兆円

 (2)市中消化額(カレンダーベース)     145兆円

 (3)10年度長期金利レンジ    1.10―1.70% 

 ――政府高官の発言がぶれている 

  「国債44兆円以下撤回について意外に思っている人は少ないのではないか。国債増発額がどの程度に膨らむのかがポイントだが、現状では大きな価格下落はなさそう。ただ、マニュフェストをどこまで実行するのかや、景気悪化でさらに税収が目減りするなどすれば国債増発は避けれず、さらに状況が厳しくなりかねない」 

 ――ギリシャ国債が格下げされた。日本国債もそうしたリスクにさらされる可能性があるか 

 「日本政府の負債はGDPの1.8倍程度になっており、欧米諸国に比べると高い。国債増発規模はわからないが、財政規律の問題もあり、格付け機関としてはこれで良いのかという問題も浮上してくる可能性がある」 

 ――2010年度の市場動向をどう読むか 

 「民主党政権が、財政規律についてどう考えているのかがポイント。日本の貯蓄率は下がってきており、政府が安心して国債を増発できる状況ではなくなってきている。金利上昇期には一斉に売りが出る可能性もある。安全資産と思われていた国債がリスク資産に転じる可能性もある」 

 ◎バークレイズキャピタル証券の森田長太郎・チーフストラテジスト「新規国債47―48兆円なら影響せず」

 (1)新規国債発行額            46.2兆円

 (2)市中消化額(カレンダーベース)   146.2兆円

 (3)10年度長期金利レンジ    1.00―1.60%  

 ――鳩山由紀夫首相の発言がブレている。相場への影響はあるか 

 「44兆円を上限にすることで財政規律をと口にしながら守れないとなれば、政治的には財政規律が緩んだと批判を受けそう。実質的な議論としては、暫定税率引き下げによる減収を埋め合わせるために環境税の4月からの創設といった抜本的な増収措置をとらなければ、44兆円以下への国債発行抑制が困難なことは明らかだった。ただ、国債市場参加者が鳩山シーリングを絶対的な前提とみていたとは思えない」 

 「10月中旬に概算要求が95兆円に達したと発表された時には、それ以降の約3週間で10年利付国債利回りが20ベーシスポイント近い上昇劇を演じており、今回もこうした事象が生じる可能性がないとは言い切れない。新規国債50兆円に膨らめば増発プレッシャーがきつくなる。しかし47―48兆円程度であれば、実質的な市場需給へのインパクトは限られるのではないか」 

 ――複数年にわたる大型発行は市場にどのような影響を及ぼすか 

 「水準が高いというだけでリスクプレミアムが漸増するわけでもない。経常収支や民間貯蓄といった国債の需要サイドに関わるマクロ変数の動向とも、あわせて見る必要がある。来年度の長期金利は1.00―1.60%で推移するとみている」 

 ◎シティグループ証券の佐野一彦氏・チーフストラテジスト「長期金利、来年はやや上ブレか」

 (1)新規国債発行額            45.1兆円

 (2)市中消化額(カレンダーベース)   146.2兆円

 (3)10年度長期金利レンジ    1.10―1.70%

 ――2010年度国債発行額が「鳩山シーリング」を超える見通しになった 

 「中長期的にほとんど影響はないのではないか。市場関係者は44兆円枠が絶対的なものとは思っていない。民主党の閣僚発言にはブレもある。事前にこうした可能性が十分あると思っていた。新規国債発行額は45.1兆円、カレンダーベース市中発行額は146.2兆円と予想している」 

 ――一部新興国のソブリンリスクが話題にあがっているが、日本国債もそうしたリスクにさらされる可能性があるか 

 「ノーコメントにしたい」 

 ――長期金利の目先の推移はどうか 

 「10年最長期国債利回りは来年度に1.1―1.7%で推移するのではないか。今年に比べれば、来年の方が平均的な利回り水準は高いとみている。世界的な景気回復が背景にある。財政に対する懸念も今年より来年の方が強いだろうが、財政悪化だけが金利を決める要素ではない」

 ◎日興コーディアル証券の末澤豪謙・国際市場分析共同部長「日本国債の格下げは当面予想せず」

 (1)新規国債発行額              47兆円

 (2)市中消化額(カレンダーベース)     148兆円

 (3)10年度長期金利レンジ    1.25─1.75%

 ――10年度当初予算における新規国債発行額が44兆円を超えた場合、市場はどう反応するか 

 「上値を重くしかねない。しかしこれまでにも大量増発が続いており、売り込まれることはなさそう。財務省はゆっくりと増発を継続しているため、10年度当初計画においてカレンダーベース市中発行額が急激に増額することもないだろう。短期的に大きな影響はないとみている」 

 ――日本の財政悪化がクローズアップされる可能性はあるか  

 「当面、日本国債の格下げはないとみている。現状、欧米がAAA格で、日本の格付けを先に下げるということは考えにくい」 

 ――長期金利はどのような推移をたどるか 

 「来年度は1.25―1.75%で推移すると予想する。国債増発は避けられそうにないが、一方で国内金融機関のリスク回避志向も強く残りそう。結果的には過去10年間の長期金利の平均水準である1.5%を挟んだレンジ水準は変わらないのではないか」

 (ロイター・ニュース 山口 貴也記者、伊藤 武文記者 編集 橋本浩)

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