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菅財務相で脱デフレ・景気配慮型政策にシフトか=民間エコノミスト

 [東京 7日 ロイター] 藤井裕久財務相の後任として、菅直人副総理が財務相を兼務することに伴い、エコノミストの間では中期的な経済財政政策の行方に関心が集まっている。

 1月7日、藤井財務相の後任として菅副総理(写真)が財務相を兼務することに伴い、エコノミストの間では中期的な経済財政政策の行方に関心が集まっている。6日撮影(2010年 ロイター/Toru Hanai)

 菅氏の政策運営は「藤井氏と大きく変わらない」との指摘が出る一方で、昨年の「デフレ宣言」を踏まえると景気配慮型にシフトし、財政規律が緩むとの観測が出ている。財政赤字問題で日本国債の格下げリスクが懸念される中、7月の参議院選挙に向けた政権公約と財政規律のバランス、日銀との距離感について関心が高く、発言が注目されている。国家戦略担当相を兼務することになった仙谷由人行政刷新担当相に関しては、消費税率引き上げ議論の重要性を指摘している点を踏まえて、その議論の位置付けが従来より高まる可能性があるとの見方が出ている。 

 エコノミストの見方は以下のとおり。

  <みずほ証券・シニアエコノミスト 飯塚尚己氏>

 政治家としてはベテランであるし民主党内においても重鎮であるので役不足ということはない。マクロ経済政策にもある程度通じている。脱デフレを主張してきたこともあり、円高論者ではないだろう。為替介入へのハードルもやや下がったのではないか。 ただ官僚との対決姿勢を持ち味としてきただけに、通常国会での2010年度予算案審議や2011年度予算編成、中期的な経済財政政策の策定などにおいて、官僚の代表とも言える財務官僚とどのようにつきあうのかという点が懸念される。 株式市場などマーケットでは現時点で特段大きな反応はないだろう。お手並み拝見というところだ。

  <バークレイズ・キャピタル証券・チーフエコノミスト 森田京平氏>

 中期的な財政再建については、菅氏の人事よりも仙谷氏の方が重要とみる。国家戦略を担うことになった仙谷氏が、鳩山内閣の中で際立つのは、消費税引き上げ議論の重要性を指摘していること。消費税議論の位置付けが従来より高まる可能性がある。財政については、7月の選挙に向けて与党の支持率が下がると、だれが財務相であろうと、何らかの景気対策を考えることはあると思うが、それを日銀にさせることはないと思う。 

 菅氏が財務相となることで、日銀との距離は近くなる。しかし白川総裁が言っているのはデフレ対策で重要なのは流動性よりも需要。これは金融政策より財政政策の方が出遅れていることを示す。菅氏が昨年の「デフレ宣言」で日銀に投げたボールは、12月1日の新型オペの導入で、日銀としては政府に投げ返しているという意識がある。日銀としては、今回の菅氏の財務相就任で具体的な政策をとるプレッシャーにさらされるということはあまりないと思う。

  <三井住友アセットマネジメント・チーフエコノミスト 宅森昭吉氏>

 菅財務相になっても、藤井氏とは大きく変わらないとみる。国債をばらまくこともないだろう。 昨年、菅氏はデフレ宣言を行ったが「コンクリートから人へ」という民主党の政策には、物価下落要因になるものが多い。例えば高校授業料無料化は、消費者物価指数の前年比を0.4%ポイント程度押し下げる見込みだが、実質購買力の上昇要因にもなるため、良いデフレという側面がある。デフレであると過度に騒がないほうがよい。 消費者物価をどうしてもプラスにしたいならば消費税引き上げという手があるが、簡単なことではない。現状は、経済全体の動きを踏まえてデフレの状況をとらえる局面だ。 経済成長戦略の基本方針では、名目3%成長が目標として掲げられたが、具体的にどのように達成したいのか、といった論点にも注目している。

 <野村証券金融経済研究所・チーフエコノミスト 木内登英氏>  

 健康問題を理由に辞意を表明した藤井財務相の後任人事は、予算の実務に明るい若手を登用するか、財務相のポストに相応しい大物を充てるかという2つの選択肢があったようだが、最終的には後者が選択された感じだろう。 菅副総理は経済通とは言えないかもしれないが、足元で景気配慮型志向を強めている点に注目したい。2009年度2次補正予算案では、住宅エコポイント制度導入を強く推進した。昨年末にはデフレ対策で日銀に追加策実施を強く求め、また成長戦略のとりまとめも実施している。財務省寄りで、財政規律重視の傾向が強い藤井財務相から菅財務相に変われば、財政・経済政策はより景気配慮型にシフトすることが期待される。

 菅財務相の誕生は、金融市場では円安、債券安、株高要因と考えられる。今後厳しい経済情勢が続いた場合、7月の参院選挙に向けて小沢幹事長主導で追加の財政出動が検討される可能性があると思われるが、その際には、景気重視派の菅財務相の下で財政規律を緩める形で財政出動が実施される可能性は、財政規律重視派の藤井財務相と比較して高まるのではないか。小沢幹事長との人間関係から考えても、藤井財務相と比べて菅財務相がそのような政策を受け入れる可能性はより高まるようにも思われる。財政規律が緩み、景気重視型の財政・経済政策の傾向が強まるとの観測は、債券安、株高要因だ。

 為替市場では、藤井財務相は円高容認で為替介入に否定的とのレピュテーションが定着した感がある。他方、菅副総理は景気配慮型傾向を強めており、短期的な景気下振れリスクを高めかねない円高傾向の抑止に、より前向きである可能性がある。この点から、為替市場は菅財務相の誕生で円安に振れる可能性は比較的高いとみられる。

 財政・経済政策を巡る藤井財務相と菅財務相の違いはすぐに明らかにはならないと思われるが、今後数カ月のうちに景気情勢の悪化、円高再燃などが生じた場合に、その違いが徐々に浮き彫りになると考える。

 (ロイター日本語ニュース マクロ経済分析チーム 編集:石田仁志)

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