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シナリオ:米政権が強硬姿勢堅持の場合、金融規制で想定される変化は

 [東京 22日 ロイター] オバマ米大統領が新金融規制案で自己勘定取引の禁止などを打ち出したことは東京市場でも予想外に厳しい内容と受け止められた。

 1月22日、オバマ米大統領(右)が新金融規制案で自己勘定取引の禁止などを打ち出したことは東京市場でも予想外に厳しい内容と受け止められた。写真左はボルカー経済再生諮問会議議長、21日撮影(2010年 ロイター/Kevin Lamarque)

 関係者の間では、同案は実害のないように現実路線に修正される、との期待感が広がっているが、仮に、米政権が法案成立に向けて強い姿勢で臨んできた場合、金融市場はどのような展開をみせるのか。また、米銀のビジネスモデルはどう変化するのか。シナリオを探った。

 <バブル発生力が低下>

 金融市場を震撼させたのは自己勘定取引、いわゆるプロップトレーディングの禁止案だ。ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドへの投資や保有・出資制限と相まって、レバレッジ投資が一段と縮小することが予想されている。

 欧米金融機関は、バーゼル銀行監督委員会で検討中の新たな自己資本規制や、6月にも実施される英国の流動性強化策に備えて資本を拡充し、短期資金への依存度を低下させており、レバレッジによる収益力は既に低下傾向にある。そこに同規制案が登場し、金融機関の投機ビジネスに対して最後の一撃を加えたとの見方もある。

 「今は、かつてLTCMが活用したようなファンディング・レバレッジ(短期資金調達によるレバレッジ)が使えない状態だ。現在はフォワード市場が投機の資金源として主流だが、ファンディング・レバレッジが可能だった時代に比べ、投機が誘発するバブルの持久力は格段に低下している」(外銀、為替担当マネージャー)という。

 <新興国から資金流出、ウォール街に波及>

 為替市場では、資金コストの増加を背景に短期的な収益確保を目指す短期筋の動きが活発化し、市場は上がり下がりを繰り返す鯨幕相場となっている。同規制案を受け、「短期で実需を伴わない空中戦」(外銀)的な値動きは縮小する公算が高い。

 邦銀系の株式トレーダーは、新興国株がまずクラッシュ、そして、米株にも伝播するとみる。「米金融市場が混乱すれば米長期金利の高騰といった形で表れる」と警戒する。日本株への影響については「足元ではアジア政府系ファンドのリスク回避による日本株買いなどもみられるが、取引規制が実施された場合には米株に連動して日本株も下げる。特に流動性のないものは売られるのではないか」と話す。

 米債入札への懸念も吹き出しそうだ。国債入札がリスクイベントとなり、入札のたびに米国債利回りが乱高下する可能性もある。円債市場には「大手銀行に対する資産サイズに応じた課税も検討されているが、これもレポ市場や短期国債市場に大きな影響を与える可能性が高い。短期市場の流動性低下も懸念される」(欧州系証券)との見方もあった。

 <行き着くところは衰退産業、米銀の日本化>

 一方、金融機関のビジネスモデルも当然、影響を受ける。

 国内証券の株式トレーダーは「米ゴールドマンなどは公的資金を入れてリスク商品に投資し、収益をあげてから税金を返した。他の商業銀行も、投資銀行部門が収益の柱になっているので、その部分がなくなればビジネスが成り立たなくなる」と指摘する。

 ヘッジファンドなどへの出資制限は「投資銀行部門を切り離せば良いのではないか」(UBS証券・チーフストラテジストの道家映二氏)との声が出ているが、それが認められるかどうかは不透明。同法案の趣旨からすると単純な部門切り離しは認められない可能性もある。

 そうなった場合、規制でがんじがらめになった米金融機関が結果的に「ジャパナイズ(日本化)」されることが想定される。

 邦銀は、投資銀行業務を中心にビジネス展開をしてきた欧米大手銀と異なり、預金が潤沢で短期資金への依存度が低く 、投資銀行業務では出遅れてきた。また、1997年に三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が相次いで資金繰り倒産した経験を経て、金融機関の日々の流動性管理については、日銀による綿密な流動性モニタリング下にある。

 「欧米金融機関は、文化的にもオペレーション的にも、日本のような流動性モニタリングは受けつけないが、(流動性強化策やレバレッジ規制で)資本コストが上がり、狭いスプレッドでビジネスをしなければならないのは、邦銀と似たような環境だ」(外銀)という。

 コスト増分は顧客に転嫁するため、貸出金利は上昇、預金金利は低下する。行き着くところは衰退産業としての地位、という悲観的なシナリオだ。

 (ロイター日本語ニュース 金融マーケットチーム:編集 石田仁志)

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