[北京 21日 ロイター] 中国の人民元政策変更について、市場の関心は実施するかどうかではなく、いつ決定するかに集まっている。ただ、利害関係が多様で政治的問題でもあるため、どのような方法でいつ変更するか予想は不可能とする声が強い。
重要事項のため、決定は胡錦濤・国家主席と共産党幹部により下される見込み。
以下は政策変更に関連した予想シナリオ。
<変更のタイミング>
◎第2・四半期が落ち着きどころ、第3・四半期にずれ込む可能性も:
輸出を重視する商務省などを除き、当局の間では現在の人民元政策は期限切れになったとの見解で一致しているもよう。従属的にドルに追随するとの道理に合わないとの見方だ。
しかし、政治的要因が事態を複雑にしている。中国は他国の意見を素直に聞くとはみられていない。一方で、中国は米政権に対する議会の圧力も警戒している。
ガイトナー米財務長官は、5月24―25日の米中戦略経済対話、6月の20カ国・地域(G20)首脳会議などが措置を講じる機会を提供すると指摘していた。
中国のある政府顧問は、米中戦略対話が開かれる前に、人民元上昇を再開させる可能性があると指摘した。
スタンダード・チャータードのエコノミストは、上海万博開幕後の5月10日の週の可能性を挙げた。しかし他のエコノミストは、それ以降を予想している。
<変更の程度>
◎緩やかな上昇の可能性が高い、小幅切り上げも可能:
前出の政府顧問は、日々の基準値を小幅切り上げていくことで、静かに措置を講じると見込んでいる。
スタンダード・チャータードは4月19日付リポートで、日々の基準値での一段の柔軟性拡大を見込んでいる。温家宝首相が先月、人民元は過大評価されていないと発言したことから、大幅な1回の切り上げの可能性はないとみている。
ソシエテ・ジェネラルは4月か5月の5―10%切り上げを見通しているが、この見方は少数派。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのエコノミスト、Ting Lu氏は「(2005年7月の2.1%よりも小さい)小幅な1回の切り上げを見込んでいるが、それもない可能性がある」と述べた。
年末までドルへのペッグ制が維持されると見込む市場関係者はほとんどいない。
<公表するかしないか>
◎変更を確認する可能性、しかし直後ではない:
中国は為替改革を進めると表明している。人民銀総裁も、08年半ば以降のドルペッグ再開は「特別な政策」と表明している。
この観点から、2年前のペッグ再開時に公表しなかったのと同様に、中国は人民元の緩やかな上昇を再開すると表明する必要性を感じていない可能性がある。
いかなる形での公表も、国内の批判派からは米国の圧力に屈したとみなされる可能性がある。一方で人民元上昇を求めているのは米国だけではないことから、国際的なアナウンス効果を得たいと考えるかもしれない。
前出の政府顧問によると、妥協案として実施後に、例えば米中対話での声明などでこれを確認する可能性がある。
<最初の措置実施後に可能性>
◎徐々に変動幅を拡大の可能性、おそらくは通貨バスケットに対する人民元管理に移行:
多くのエコノミストは、現在基準値に対する上下0.5%の変動幅を人民銀は拡大し、双方向のリスクを市場に導入すると想定している。トレーダーはもはや、上方向だけの取引を見込むことはできない。
ドルに対してだけではなく、シンガポールのような通貨バスケットでの価値に基づき人民元を管理すると予想するエコノミストが増えつつある。
バスケットの構成通貨は変動するため、中国が緩やかな上昇傾向を目標としていても、人民元の日々の方向は不確実だ。