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中国の内需拡大でアジア経済の「デカップリング」論が復活

 [北京 26日 ロイター] 人民元が切り上げられ、中国国内の購買力が高まれば、中国の消費者の台頭という大きな変化が起きる。中国の旺盛な輸入意欲は既に世界経済を変えた。中国は昨年、オーストラリアやブラジル、日本、および南アフリカにとって最大の輸出先となり、アフリカ全体の最大の貿易相手国としての座も米国から奪った。

 4月26日、中国の内需拡大でアジア経済の「デカップリング」論が復活。写真は22日、北京で(2010年 ロイター/Jason Lee)

 中国の輸入は大半が資源や部品で、これらは加工され先進国に輸出される。こうしてみると、中国と中国への輸出国が先進国から「デカップリング(非連動)」できるという、理論は正しくないようだ。

 アジア開発銀行(ADB)のエコノミスト、ヨランダ・フルナンデス・ロメン氏は「中国がアジア地域の成長にとっての本当のエンジンとなるには、技術開発や人材育成を通じて真の『メード・イン・チャイナ』の製品を生産、輸出しなければならない。収入と消費が十分に増加した結果、域内からの輸入品を加工・輸出するのではなく、国内で消費されるようにならなければならない」との見方を示している。 

 しかし「デカップリング」論を裏付ける経済統計もある。中国の日本からの輸入は第1・四半期に、前年同期比で56%増加した。また、韓国からの輸入は61%増加し、オーストラリアからは64%、台湾からは95%、インドネシアからは105%それぞれ増加した。

 ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ユ・ソン氏は「多くのアジア諸国と資源輸出国にとって、中国は米国と同様に重要」と話す。

 輸出の増加は、比較対象となる前年の水準が低いことや、商品価格の急上昇が背景。さらに企業の在庫を積み増しの動きや、中国の刺激策が輸入への需要を一時的に高めていることも考慮する必要がある。

 これらの要因と、依然低調な海外需要を背景に、中国の3月の貿易収支は74億ドルの赤字と、2004年4月以来の赤字に転落した。

 しかし、中国の内需拡大は本物であり、特にアジアなどの貿易パターンを変える可能性がある、と考えるエコノミストも増えている。 

 <アジア経済が西欧から「分離」> 

 野村のエコノミスト、孫明春氏は、中国の輸入のうち国内消費が占めるシェアは第1・四半期は55.8%で、3年前の44.4%から上昇したことを指摘。「中国の輸入には2007年以降、構造的な変化が起きている。これは、内需拡大と海外からの需要への依存低減を狙った、中国政府のリバランスへの努力のたまものだ」としている。

 一方で同氏は、自動車販売がアジア全域で力強く成長していることなどにより、より大きな力が働いていることが分かるとしており「緩和政策や堅調なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を背景に、アジアでは中国以外でも、内需が拡大している証拠だ」と指摘した。 

 ANZバンクのエコノミスト、ポール・グリーンワルト氏とウェイ・リァン・チャン氏は、中国の消費が東アジアからの輸入に統計上、大きな影響を及ぼすようになったのは2007年から、と話す。

 経済規模でみると、中国は米国やユーロ圏の3分の1以下。また国内総生産(GDP)に占める個人消費の割合はわずか35%にすぎず、米の70%、欧州連合(EU)の60%を大幅に下回っている。

 それでも両氏は、東アジアの輸出が最近、予想外に増加したのは、アジア域外からの需要ではなく、中国の消費の強さが原因、とみる。

 両氏は「アジアでは、域内で生産した製品に対する域内の需要が強まっている。西欧からデリンク(分離)し始めている」としている。 

 <中国、各国中銀の政策にも影響> 

 中国はすでに世界最大の輸出国。ゴールドマンによると、中国は2016年までに米国を抜いて最大の輸入国となり、2025年までに世界の輸入の20%を占める見通し。クレディ・スイスは、中国は10年以内に、世界最大の消費国としても米国を抜く、とみている。

 こうした中国の躍進が他国の政策に与える影響は、それほど明確ではない。中央銀行はかつては、米国の成長と金利に注視していればよかったが、今では中国の先行き見通しにも目を配るようになっている。

 ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)のベン・シンプフェンドルファー氏は、豪準備銀行(RBA)が2月2日に利上げを見送った際に、その理由として、中国の信用引き締めの影響を見極めるためとしたことについて、驚くべきことだ、との見方を示した。

 ゴールドマンのソン氏は、アジアとの経済的な結びつきが深化するにつれ、中国にとって政策決定が複雑になったと指摘。「かつては海外の需要を受け入れるだけだったが、今では、自国の政策変更が通商を通じてもたらす二次的影響も考慮しなければならない」と述べた。 

 (Alan Wheatley記者;翻訳 吉川彩;編集 宮崎亜巳)

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