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欧州緊急支援措置、効果は短期的か

 [ロンドン 10日 ロイター] 欧州連合(EU)財務相理事会と欧州中央銀行(ECB)は10日、ギリシャ危機の波及を防止するため、巨額の緊急支援措置を打ち出した。

 5月10日、EUとECBは、ギリシャ危機の波及を防止するため、巨額の緊急支援措置を打ち出した。写真は記者会見するレーン欧州委員と、スペインのサルガド経済・財務相(2010年 ロイター/Thierry Roge)

 これを受け、市場は短期的には落ち着きを取り戻す可能性が高いとみられている。

 ただ、今回打ち出した措置を長期間、積極的に実行する政治的な意思があるのかとの疑問の声や、安全網の導入では財政悪化の根本原因に対処できないとの指摘もあり、ユーロ建て資産が今年初めの危機前の水準を回復する可能性は低いとみられている。 

 EUは、支援が必要になったユーロ圏加盟国に総額5000億ユーロの融資・融資保証を提供する緊急支援措置を打ち出した。国際通貨基金(IMF)もさらに2500億ユーロを拠出する。

 こうした巨額の支援策は、2007─09年の世界的な金融危機で効果を発揮した。米政府の不良資産救済プログラム(TARP、7000億ドル規模)がその一例だ。  

 民間エコノミストの試算によると、ギリシャの次に財政悪化が懸念されているポルトガル、アイルランド、スペインの3カ国が金融市場から資金を調達できなくなった場合、2012年末までに4440億ユーロの支援が必要になる可能性がある。

 この試算によると、ポルトガル、アイルランド、スペインの3カ国に救済が必要になっても、資金は残る。ギリシャ向けの追加支援も可能だ。  

 しかも、TARPなどの金融危機対策では、実際の拠出額が対策の規模を大幅に下回っている。米財務省は、TARPの下で拠出する資金が5500億ドルを超えることはないと予想している。 

 今回の緊急措置でも、同じことが起きる可能性がある。アナリストの試算によると、たとえ現在の金利水準が続いたとしても、ポルトガルとスペインの財政が回復不能な状態になるのは、1年以上先だ。今回の対策で、調達金利が一段と低下し、救済が不要になる可能性もある。

 仮にすべての対策資金を使ったとしても、対策資金の5000億ユーロは、ユーロ圏の域内総生産(GDP)の約6%だ。資金が数年間にわたって拠出されることを考えれば、ユーロ圏には十分対応な金額といえる。  

 <政治的な意思>   

 ただ、資金を拠出するEU主要国が、数年先も資金を積極的に拠出するのか、という疑問は残る。

 9日投開票された独ノルトライン・ウェストファーレン州議会選では、メルケル首相率いる中道右派連合が上院で過半数を割り込んだ。ギリシャ支援に対する有権者の反発が敗因の1つとみられている。

 ギリシャ支援を積極的にとりまとめたドイツのショイブレ財務相は今年、入退院を繰り返しており、10日の財務相理事会も入院のため欠席した。 

 このため、ドイツ政府が将来的に、ユーロ加盟国への支援に消極的になる可能性は残されている。特に救済条件となる緊縮財政を実行できない国には支援を渋る可能性が高い。 

 今回の緊急支援措置では、ECBも前例のない措置に踏み切った。

 ECBは10日、ユーロ圏の政府債および民間債券を購入すると発表。これは、一部アナリストの間で、市場の懸念払しょくに必要不可欠と指摘されていた「究極の手段」だ。 

 ただECB内部では、これまで国債買い入れに反対する声が多く、トリシェ総裁は、先週のECB理事会でも、国債買い入れについては協議しなかったと述べていた。

 したがって、ECBの国債買い入れは、非常に慎重に進められる可能性がある。少なくとも、07─09年の金融危機で大量の資産を買い入れた米連邦準備理事会(FRB)のような積極的な買い入れはないだろう。

 ECBは政府債・民間債買い入れに際して、流動性吸収オペを実施して「不胎化」を図る方針も示しており、買い入れの効果が弱まる可能性もある。   

 <時間稼ぎ> 

 今回の緊急支援措置では、財政悪化の根本原因に対処できない。財政健全化と競争力強化のため、3年間の時間的猶予を与える対策に過ぎないといえる。

 一部のアナリストの間では、ギリシャやポルトガルが、問題の根本原因に対処できず、債務再編を余儀なくされるとの見方が出ている。

 政府が、債務再編は避けられないと判断した場合、改革の痛みを和らげるため、早めの債務再編を選択する可能性もある。 

 ロイターが先月後半にエコノミスト54人を対象に実施した調査では、ギリシャ支援策にもかかわらず、今後1年以内にギリシャが債務再編に踏み切る確率は20%、今後5年間では30%との結果が出た。5年以内にギリシャがユーロ圏を離脱する可能性は9%となっている。  

 スイス・プライベートバンク協会のコンラード・フムラー会長は、金融機関が保有しているギリシャ国債について、額面の30─50%の評価損計上が必要になると指摘。ギリシャの国債発行残高は3000億ユーロにのぼる。

 ギリシャが債務再編に踏み切れば、他のユーロ圏加盟国の債務再編懸念が強まり、緊急支援措置の発動が必要になる可能性がある。

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