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邦銀の金利リスクが過去最大に、国債相場下落の要因とする声

 [東京 26日 ロイター] 財政不安を抱えながらも長期金利が一段と低下して安定性を示す日本国債市場に、金利リスクの増大という大きなアキレスけんを意識する声が金融市場関係者の間で増えている。

 5月26日、日本国債市場に、金利リスクの増大を意識する声が増えている。写真は昨年1月、都内でイルミネーションに照らされた歩道を歩く人(2010年 ロイター/Toru Hanai)

 大手銀や地銀などの国内金融機関が大量に日本国債を保有した結果、金利リスク量が過去最大規模に達している。大手行が現在のペースで国債を増やせば2015年頃には国際決済銀行(BIS)の金利リスク基準を超過するとの試算もある。財政規律への不信などのトリガーが引かれて金融機関が国債売却に走りだした場合には、日本国債市場が大崩れする可能性もある。日本政府が財政の持続可能性に向けて対応可能な時間は、それほどないとの悲観論も出ている。

 <長めの債券投資シフトで金利リスク増加へ>

 ギリシャ問題による市場の混乱が続き、景気回復期待の低下リスクが意識されはじめ、銀行の資金運用難にますます拍車をかけるとの見方が強まっている。みずほ証券・チーフストラテジスト・高田創氏は「家計のリスク資産からの回避志向が続くと見込まれ、預金と貸出のギャップは高水準が続く見通し」と指摘。運用難を背景に銀行では債券投資に傾斜し「財政への不安を抱えながらも、着実に長期ゾーンを取り込む状況になりやすい」とみている。これまで大手銀行は短期国債など年限が短めの債券運用にシフトとしてきたが、新年度に入り足元でキャリー収益を確保しやすい長期ゾーンを含めた運用を積極化する動きも出てきた。

 日銀が25日に発表した3月末の都市銀行の国債保有残高は前月末比7.0%増の85兆3529億円、地銀も同3.6%増の26兆7525億円だった。銀行の債券保有高は未曾有の規模に膨張し、その分、金利リスク量もすでに過去最大の規模に膨れ上がっている。

 日銀によると、金利が1%上昇した場合の保有債券にかかる金利リスク量は、09年9月末に大手行、地銀でそれぞれ3兆円、4兆円規模に達し、過去最大圏にある。大規模なロスカットが急激な金利上昇を招いた2003年の「VaRショック」時のように、何らかの外的ショックが働いた場合、銀行勢が保有国債のポジション圧縮に走り、長期金利が急上昇するなど不安定な動きになるリスクがある。

 野村総研金融市場研究センター・主席研究員の井上哲也氏は、デフレ状況や日銀の金融緩和の下で国債金利の跳ね上がりは想像しにくいとしながらも、財政プレミアムへの意識が強まるなど何かのきっかけで金利リスクが顕在化すれば「国債の利払い負担が大きくなり、財政への影響ははかりしれない」と指摘する。さらに国債が金融機関の資産サイドにおいて大きなウエートを占め、クレジットの基準としも機能していることから、国債市場の動揺は金融システムにも影響しかねないと井上氏は指摘する。

 <貯蓄率マイナス、財政への影響大きく>

 国債市場が大きく動揺するきっかけとして、日本の貯蓄超過率が低下し、マイナスに転じる時期を指摘する声が出ている。家計の貯蓄超過はかつての10%近辺から08年度で2.9%まで低下。三菱東京UFJ銀行・経済調査室長の内田和人氏によると、2015年に貯蓄率はゼロに陥ると試算した。大手銀行が国債保有を今のペースで増やせば2015年頃に金利リスク量がBIS規制による基準を上回ると試算している。企業部門の資金余剰も、海外投資に資金が流出し始めており、余剰幅は縮小に向かいそうだと指摘する。海外投資家による国債消化が上昇すれば、日本国債の格下げリスクも高まると同氏は指摘する。

 また、日本の場合、消費税引き上げなど増税余地が大きいことが安心材料との指摘があるが、ある政策当局者は「いざ相応の幅で消費税の引き上げとなれば、実施までに時間がかかるのは必至。財政赤字の拡大に追いつかなければ、その間に格付けの引き下げや財政規律の信認低下など非常に厳しくなる可能性がある」と指摘する。 

 <日銀や政府は本腰を入れた対応が必至>

 ギリシャ問題を契機にようやく民主党政権でも財政への危機意識が高まっている。次期総選挙後の消費税増税をマニフェストに明記すべきとの指摘が党内から出るなど「日本の政治家にもようやく財政への危機感が出てきた」(モルガンスタンレーMUFG証券・チーフエコノミスト兼債券戦略部長・佐藤健裕氏)とみる市場関係者もいる。  

 日銀でも、公債残高が膨張しているリスクに着目し、景気回復下でも金融緩和環境を維持する姿勢を示している。4月30日発表の展望リポートではその点を明示。「中長期的な財政の見通しに対する市場の評価次第では、長期金利の大幅な変動など金融資本市場への悪影響を通じて実体経済が下押しされるリスクがある」と指摘。金融政策運営については「極めて緩和的な金融環境を維持していく考え」を示した。みずほ証券・高田氏は、次に金利上昇局面を迎える局面では「日銀の政策も国債管理政策を含めた対応が必要になってくる」と見ている。

 政府も6月には「中期財政フレーム」や「財政運営戦略」を策定し、財政健全化目標を明示する方針。「他山の石」であるギリシャ問題を教訓に、財政再建と国債市場の安定に向け、腰を入れた対応が求められる。

(ロイター日本語ニュース 中川 泉記者;編集 田巻 一彦)

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