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景気の谷は09年3月と判定、回復力弱く踊り場的調整も

 [東京 7日 ロイター] 内閣府の景気動向指数研究会(座長・吉川洋東大教授)は7日、全員一致で景気の谷は2009年3月だったと暫定的に判定した。

 6月7日、内閣府の景気動向指数研究会が全員一致で景気の谷は2009年3月だったと暫定的に判定。写真は2008年7月、都内で(2010年 ロイター/Toru Hanai)

 景気の底打ちから既に1年以上にわたり景気拡張期が続いているものの、戦後最長となった前回の景気拡張期(69カ月)と比べると、回復の持続力は弱いとの声がエコノミストからは出ており、今後は踊り場的な調整局面が想定されている。

 <グローバル・ファイナンシャル・リセッション>

 サブプライムやリーマンショックなど世界的な金融危機・同時不況の下で、景気悪化の度合いやスピードが非常に速く、大恐慌以来最悪の不況とも言われた今回の景気後退期。岩田一政・内閣府経済社会総合研究所長は会見で「リーマンショック後は過去の景気後退を上回る速度で落ち、金融面でのグローバルなショックが影響した」と分析し、「グローバル・ファイナンシャル・リセッション」と名付けた。

 戦後の景気後退期は平均16カ月だが、今回は17カ月となり、懸念されたほど長引かなかったのが今回の特徴だ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券・景気循環研究所・シニアエコノミストの鹿野達史氏は「内外ともに踏み込んだ財政・金融政策を実施したことが奏功した」と分析する。

 鉱工業生産やその他の関連指標は回復を示しており、景気動向指数の一致指数の大半も回復傾向ということで、景気拡張期に入っているとの認識はエコノミストの間では以前から広がっていた。三井住友アセットマネジメント・チーフエコノミストの宅森昭吉氏も「谷から1年以上にわたり拡張局面であることがあらためて確認された。水準的にはまだ厳しいが、方向的には早めに立ち直れたことで安心感がある」と述べた上で、「実質的には景気回復宣言のようなもので、民主党政権には明るい材料だ」とみている。

 景気が底打ちした「谷」の時期は、日銀短観の大企業製造業の業況判断と相関性が高い。内閣府によれば、今年1─3月期のGDPギャップはマイナス4.8%となり、需要不足額は名目年率25兆円程度。過去最悪だった2009年1─3月期(マイナス8.1%)からはギャップは縮小している。

 <前回ほどの力強さに欠けるとの見方>

 前回の景気拡張期は2002年─07年秋まで5年あまり続き、先進国や新興国も含めた世界経済が持続的に拡大する中で、日本もその恩恵を大きく受けた。クレディ・スイス証券・チーフエコノミストの白川浩道氏は、世界経済の動向が日本経済が成長を続けていく上での1つの必要条件であると分析。その上で「今回は、世界経済の拡大が前回のような形で続くとは思えない」として、力強さに欠けるとの見方を示す。金融規制強化に伴いマネーの流れが抑制される可能性のほか、新興国の成長が持続するかという懸念、高齢化問題を抱える先進国などの財政問題が影を落としている。その中で、日本では輸出・生産の循環的な回復が設備投資に結びついていないという投資不況にあり、輸出依存の成長には限界があるためだ。

 アジア、中国向け輸出が今回の景気回復の大きな力になる中で、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鹿野氏は「中国の景気先行指数は2009年10月をピークに低下しているほか、韓国、台湾でも2010年1月をピークに弱含んでいる。2010年夏場から秋にかけ、アジア経済の減速が明確となる可能性が示されており、日本経済も2011年には踊り場的な調整局面を迎える可能性が高い」とみている。

 経済企画協会によるESPフォーキャスト調査によると、民間エコノミストの実質国内総生産(GDP)見通しは、2010年度がプラス2.22%、2011年度がプラス1.80%となっており、成長率は緩やかに減速する一方で、物価はデフレが継続する見通し。景気は回復しても所得の伸びが抑制された前回同様、実感なき景気回復となる可能性も否めない。

 景気は大きな方向では回復だが、落ち込みが大きかっただけに、水準が戻りきれていないことも留意点となる。輸出の増加や政策効果で、生産や消費関連の指標では持ち直しのテンポが比較的速い一方、設備投資や雇用関連指標では反転が遅く勢いも緩やかだ。三井住友アセットマネジメントの宅森氏は「問題なのは雇用関連の数字。例えば有効求人倍率は、前回の景気の谷では0.50倍で2人に1つしか職がない状況だったが、今回はそれよりも悪い」と指摘。およそ半年ほど先取りする景気動向指数の先行指数にも、陰りの兆しがあると分析する。

 エコカー補助金が9月で打ち切りになるため、政策期限の到来で耐久財消費の反動減の要因となる可能性もある。来年度の成長率が1%台に減速する中で、景気腰折れにはならないものの、一時的な調整局面が訪れるとの見方がエコノミストの間で広がっている。

 (ロイター日本語ニュース 寺脇 麻理)

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