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改善するユーロ圏の対外バランス、「ユーロ離れ」兆候なし

森 佳子記者

 6月14日、ユーロ安の追い風を受け、ユーロ圏の対外バランスが急速に改善している。写真はユーロなどの為替レートを表示する電光掲示板。ブダペストで7日撮影(2010年 ロイター/Laszlo Balogh)

 [東京 14日 ロイター] ユーロ安の追い風を受け、ユーロ圏の対外バランスが急速に改善している。為替市場は問題山積のユーロに警戒感を解除できず、悪材料に焦点を当ててきたが、今後とも投機的なユーロ売りのスタンスがワークするか注目されている。 

 ユーロは対ドルで過去7カ月間に20%以上減価し、6月上旬に4年3カ月ぶりの安値となる1.18ドル台まで下落した。その後1.22ドル台まで値を戻したが、上昇基調が続いた昨年とは様変わりの状況を目前に、為替市場は欧州における危機の連鎖から目が離せないようだ。 

 <ユーロ安の追い風>  

 ユーロにネガティブな材料に事欠かない中、重要なファンダメンタルズであるユーロ圏の経常収支は、ユーロ安の恩恵で大幅に改善した。また、市場では、各国の公的外貨準備や政府系運用機関の「ユーロ離れ」が話題を呼んでいるが、実際、外国資本の対ユーロ圏証券投資は高水準を保っている。 

 欧州中央銀行(ECB)によれば、ユーロ圏の経常収支(季節調整済)は、3月に17億ユーロの黒字で8カ月ぶりに黒字転換した。3月まで1年間の累計では417億ユーロの赤字と、前年の1640億ユーロの赤字から赤字額が4分の1に急減し、域内総生産(GDP)比では約0.5%となった。

 対外バランス好転の背景は、財の貿易収支の劇的な改善で、前年の232億ユーロの赤字から一気に505億ユーロの黒字へと転換したことが貢献した。

 「6カ月移動平均でみてもユーロ圏の経常赤字は縮小傾向にあり、今後も大きく増えることはないだろう。経常収支面からはユーロ安材料に乏しい」と大和総研投資調査部のシニアストラテジスト山崎加津子氏は指摘する。

 「市場のテーマとしては、個別国の財政赤字問題があるだろう。ただ、ユーロ圏は双子の赤字という問題を抱えていない」と同氏は付け加えた。

 ユーロ圏の経常収支は基本的にバランスしており、スペインでは内需が後退し輸入が減少する一方で、ドイツでは輸出が急速に回復している。

 <ユーロ圏へ資本流入>

 ユーロ圏の資本収支は、3月までの過去1年間の累計で、直接・証券投資合わせて1470億ユーロの純流入となり、前年の1885億ユーロの純流入からは流入額が減少したものの、ユーロ圏に向けた資本流入は継続していることが確認された。

 ECBのトリシェ総裁は10日「ユーロは信頼ある通貨であり、十分な価値を持っている」と述べたが、投機筋のユーロ売りブームとは対照的に、外国資本はユーロ圏証券への投資を継続している。

 「外国資本はユーロ圏証券を買い越す一方で、ユーロ圏資本は足元ではリスク回避姿勢を強め、域内回帰している」と山崎氏は指摘する。

 また、ユーロ相場との関係について、「これまでのユーロ安は、量的な要因より、リスク・プレミアムが加味された結果の価格的な要因が主導してきた可能性がある。域内では資金の偏在が生じ、独国債には買いが先行している。ユーロ離れとは言えない」と第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は言う。

  ECBのシュタルク専務理事は11日、ロイター・インサイダーに対し、「今回の危機はユーロの危機ではなく、ソブリン債務の危機。そしてソブリン危機はユーロ圏特有の現象ではない」とした。

 「ユーロ圏が深刻な問題を抱えていることは否定しないが、市場の反応が示唆するほど深刻なものだとは思わない。市場は明らかにオーバーシュートしている」とシュタルク専務理事は述べ、「欧州にとってユーロに代わるものは無い」との見解を明らかにした。

  <景気と金融セクター>  

 ECBは10日、ユーロ圏経済に関するスタッフ予想を発表し、10年のユーロ圏GDPの伸び率見通しを0.7―1.3%と、前回3月時点での予想0.4―1.2%から上昇修正した。

 ECBのトリシェ総裁は10日「一部の金融市場セグメントにおいて引き続き緊張がみられるなど、非常に不透明な環境において、ユーロ圏経済は緩やかなペースで拡大していくと予想される」と語った。

 シュタルク専務理事は「市場参加者は現状において思いも及ばないだろうが、危機前、危機の間、そして危機後も、経済のファンダメンタルズは変わらずに堅調であり続けるだろう」という。

 他方、ユーロ圏の金融セクターに対するECBの「危機対応モード」は続いている。 ドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)3カ月物は11日に0.53706%と1カ月前の0.42281%から上昇し、現在は高止まりしている。「国際的な決済通貨としてのドルのLIBORの高止まりは、一部欧州金融機関が資金調達面で困難に直面しているためだろう」と熊野氏は言う。

 ドル資金需要はユーロ短期金利にも上昇圧力を及ぼしており、金融機関の間で流動性の偏在が顕著になっていることを表している。

(ロイター 森佳子記者 編集 橋本浩) 

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