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中国の人民元政策変更は危機前への回帰

 [北京 20日 ロイター] 中国は事実上の人民元のドルペッグ制を正式に放棄した。しかし実際には、世界金融危機前の制度に戻る可能性が高く、世界の不均衡是正は限定的で、数カ月のうちに、結果的に政治的にも市場からも失望視される可能性がある。

 6月20日、中国は事実上の人民元のドルペッグ制を正式に放棄した。写真は江西省の銀行で(2010年 ロイター/Bobby Yip)

 今回の方針は、各国の在北京大使館が19日夕方に中国外務省から呼び出されて告げられるほどの国際的な重大事項だったが、中国ウォッチャーの間では、中国人民銀行(中銀)は当初、人民元上昇をかなり慎重に進めるとみている。 

 中国は2005年7月21日に人民元を2.1%切り上げ、その後3年間で19%上昇させた。しかし05年だけみれば、当初の切り上げ後は0.56%の上昇に過ぎなかった。

 米議会は中国の政策変更を歓迎するものの、遅々とした上昇には満足せず、言行一致を求めるだろう。しかし予測可能性や透明性が中国にはないことから、今後数日間、数週間で何が起こるかは実際のところ誰もわからない。 

 モルガン・スタンレーの首席中国エコノミスト、Qing Wang氏は「今回の政策変更の特徴を端的にいえば、『危機前の制度への変更』だ。以前の制度で起こっていたことは、今後起こりえる」との見解を示した。 

 <外からの圧力>  

 当初は漸進的に進むと考える理由は以下のとおりだ。

 まず経済状況。人民銀も声明で、対外黒字は減少しており「人民元相場の大幅な上昇の根拠は存在しない」と指摘した。中国最大の貿易パートナーであるユーロ圏債務への懸念もある。

 次に政治状況。関係筋によると、今回の決定は非常に重要なため、最高議決機関である共産党の政治局常任委員会で決められた。

 通貨高は内需を促進し、共産党の方針である富の分配、所得の不公平削減と合致し、多大な設備投資が必要な輸出産業への依存を低下させる。またインフレ圧力の抑制にも役立つ。

 このほか米議会の圧力も、少なくとも一時的には緩和し、米当局から為替操作国と断定されなくなる。 

 しかし中国の国内派からは外国からの圧力に屈したと批判される可能性がある。もし急速な人民元上昇を容認すればなおさらだ。

 人民銀の金融政策委員会で学識経験者として委員を務める李稲葵氏は「国外へのメッセージは、われわれに圧力をかけるなということだ」と述べた。

 金融政策委をよく知る別のエコノミストも匿名で、「あなた方は今回われわれを窮地に立たせた。もう二度としないでくれ」というのが、今週末開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議での胡錦濤国家主席の立場となるだろうと指摘。

 このエコノミストによると、人民銀はペッグ制放棄について12月から真剣に議論してきたという。 

 <ドルに注目> 

 人民銀はドルへのペッグ制により、金融政策の一部を米連邦準備理事会(FRB)に握られていることから、政策決定上の自律性を求めてきたが、国内の輸出重視派の意向には逆らいにくい。

 前出の匿名のエコノミストは、人民銀は05―08年のクローリングペッグ制に戻る可能性が高いと指摘。その理由について、政治家に通貨バスケットに対しての人民元管理政策は伝わりにくい点をあげた。

 また前回と同じペースで人民元が上昇するとも指摘した。これに基づくと、年間7%程度の上昇となる。「年によっては8%にも、5%にもなる。30%も上昇することはない。日本で起こった事態を忘れてはいない」と述べた。日本は1985年のプラザ合意など外圧により円の急上昇を経験、その後長期間、低成長とデフレに苦しんだ。

 CLSA(上海)のストラテジスト、アンディ・ロスマン氏も同様の見解を示し、欧州の状況が落ち着くまで切り上げ幅は月間0.2%になるとの見方を示した。「その後05―07年と同様の5―7%に戻るだろう」と述べた。また通貨バスケットに対する管理に中銀は言及しているがこれはリップサービスで、対ドルだけでの為替レートを焦点にするとみている。 

 <世界の不均衡是正への影響は限定的>  

 今回の政策変更は、経済のリバランス化に向け重要で、グローバル経済にも影響する。中国南部での大幅な賃上げとともに、国内の購買力を増すことになる。

 しかし貯蓄率や投資割合を決定するマクロ経済の要因、そして対外収支は複雑で緩やかに影響する。05―08年と比べて人民元上昇が、世界的な不均衡の状況を一変させるわけではない。

 2010年代半ばから見込まれる中国の労働人口の高齢化も、貯蓄率の低下につながり、転換点になる可能性がある。前出のロスマン氏は「短期的に人民元の上昇率は、中国の輸出に実質的な影響を与えない程度の緩慢なものになるだろう」と述べた。

 米中ビジネス評議会のジョン・フリスビー代表は声明で、今回の政策変更は米中の貿易収支にあまり影響ないとの指摘。「輸入面では、中国からの輸入品の多くは、以前は別の先から輸入していたもので、中国から輸入しなくなっても他から輸入するだけだ」と述べた。

 また、為替レートが中国への輸出の障害になっているとの声は、評議会メンバーから上がっていないという。「マクロ経済からみて、人民元の切り上げは貿易の流れにある程度の影響はるが、おそらく実際は多大なものではない」と指摘した。 

 (Alan Wheatley記者;翻訳 村山圭一郎 ;編集 宮崎亜巳)

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