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国内半導体、東芝はNAND・ルネサスは次世代無線で攻勢

[東京 26日 ロイター] 国内半導体メーカーの間で反転攻勢に向けた投資や事業展開が広がってきた。東芝6502.TがNAND型フラッシュメモリーの新製造棟を着工し、ルネサスエレクトロニクスはフィンランドのノキアNOK1V.HEから次世代無線通信規格に通じる携帯電話用の部品技術を買収する。

 7月26日、国内半導体メーカーの間で反転攻勢に向けた投資や事業展開が広がってきた。写真は都内で2008年1月撮影(2010年 ロイター/Toru Hanai)

 世界市場での巻き返しに向けた国内勢の戦略的投資が目立ってきた。

 <東芝、フラッシュでサムスン005930.KS追撃>

 東芝は今月14日、三重県四日市市のNANDフラッシュの生産拠点で、新棟(第5製造棟)の起工式を行った。第5製造棟では、2期に分けて生産能力を上限に引き上げるために必要な製造装置の搬入し、第1期は早ければ来年夏に稼動する。生産能力は今後、市況をみながら判断するが、共同運営する米サンディスクSNDK.O社と合わせ最大で8000億円規模に上る可能性があるとみられる。

 フラッシュメモリーは携帯電話やデジタルカメラなどの記録媒体に使われる半導体製品だが、最近はパソコンのハードディスクを置き換える「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)」やスマートフォン(多機能型携帯電話)など、より大きな記憶容量が求められるデバイスへの搭載が広がっている。さらに電子書籍などの機能を含む米アップルAAPL.Oによる「iPad(アイパッド)」といった新製品の登場で、NANDフラッシュの需要は今後、飛躍的に拡大する可能性がある。

 東芝の小林清志・上席常務(セミコンダクター社社長)は14日の記者会見で、「NANDフラッシュはリーマンショック後に一番早く市況が元に戻った製品だ。電子ブックなど、非常に裾野が広がった用途も出てきたので、将来の需要の伸びに備えるために建設を判断した」などと語り、同社の屋台骨を支える事業での巻き返しに手応えを示した。

 米調査会社アイサプライによると、NANDフラッシュの世界シェア(2010年1─3月)は韓国サムスン電子005930.KSが首位(38.5%)で、東芝は2位(33.8%)。この分野でもサムスンの強さが目立つが、携帯電話で日本トップのシャープ6753.Tは出荷台数でサムスンに20倍以上の格差をつけられ、薄型テレビでも世界市場における日本トップのソニー6758.Tが世界シェアでサムスンの半分以下(1─3月出荷金額でサムスン22.4%・ソニー10.1%、米ディスプレイサーチ調べ)の水準で推移していることと比較すれば、東芝の健闘ぶりが目立つ。

 東芝の場合、自己資本に対する有利子負債の割合を示す「DEレシオ」が2010年3月末で153%とサムスン(同11%)と比べ財務健全性で大きく見劣りする。こうした財務力の格差が巨額投資を要するNANDフラッシュメモリーの競合で不利にならないか懸念する向きもあるが、アイサプライ・ジャパンの南川明・副社長は「東芝の投資額はサムスンに比べて低いかもしれないが、それでいい。サムスンと同じ額を投資する必要は全くない。そこまでリスクを取ることはない」と指摘する。

 <ルネサス、次世代無線通信の覇権に標準>

 フラッシュメモリーのほか、エルピーダメモリ6665.Tが手掛けるDRAMなどのメモリー製品は、市況が好調ならば収益回復も早いが、計算や機器の制御、画像などのデータ処理といった機能を担うロジック系半導体は「日本が世界市場で競争力を失った分野」(大手電機メーカー役員)で、国際競争力が回復しない限り、業績回復も難しいといえる。世界の半導体需要は、中国やインドなど新興国におけるパソコンや情報機器への旺盛な需要にけん引され、5月の世界売上高は前年同月比47.6%増(米国半導体工業会調べ)と過去最高を記録。ただ、日本のロジック系半導体メーカーが、この追い風に乗っているのかどうかについて南川氏は「世界の完成品メーカーに食い込めていないため、感覚的に言うと世界の伸び率の半分くらいではないか」との見方を示す。

「日の丸ロジック」復権に向け発足したのが、日立製作所6501.T、三菱電機6503.T、NEC6701.Tの電機大手3社を母体として、今年4月に合併によって誕生したルネサスエレクトロニクス6723.Tだ。10年3月期の旧ルネサステクノロジと旧NECエレクトロニクス合算の連結業績は、営業損益が1133億円の赤字(前年は1630億円の赤字)、当期純損益が1378億円の赤字(同2884億円の赤字)と低迷が続いている。

 そのルネサスが、今後の成長戦略の柱として打ち出したのが、携帯電話に使う通信用部品「ワイヤレスモデム」事業の買収だ。ルネサスは2010年末までにノキアから同モデムの技術資産と約1100人の開発人員を引き継ぐ。買収金額は約2億ドル(約180億円)。09年にノキアからライセンスを受け、モデムを搭載したシステムLSI(大規模集積回路)の供給を間もなく始める予定だったが、買収により世界最大の携帯電話メーカーであるノキア向けに、ライセンスを受けることなしにシステムLSIが供給できるようになる。次世代の高速無線通信サービス規格「LTE」などに対応したモデム技術をルネサスとノキアが長期的に共同開発することでも合意した。

 ルネサスの茶木英明・執行役員は、今回の買収について「日本のロジック系半導体メーカーが反転攻勢をかけていく上で有力な手段となる」と強調する。特に期待するのが、今後、日本を含む世界各地で普及が見込まれる「LTEによる無線通信インフラ」の構築だ。それによって「ネットブックパソコンや電子書籍、デジタルカメラやカーナビゲーションなど携帯電話以外の様々な機器にもLTEのモジュール(複合部品)が搭載され、クラウドコンピューティングにつながるようになり、この関連のビジネス拡大を想定している」(茶木執行役員)という。ルネサスは09年度に約1000億円だった携帯電話を含むモバイル機器向けの売上高を2015年度には4000億円に引き上げる目標だ。

 みずほ証券・シニアアナリストの大森栄作氏は今月7日のレポートで、ルネサスによる買収について「中期的には海外の事業拡大につながるポジティブな投資。ただ、短期的には約1100人のの従業員を引き受けることで、年間で約100億円の固定費の増加につながると考えられる」と指摘した。

 <三洋半導体は米社傘下で再生賭ける>

 米オン・セミコンダクターONNN.Oへの売却が決まった三洋電の子会社、三洋半導体(群馬県大泉町)は、今後の設備投資回復を復活の手掛かりにしたい考えだ。三洋半導体は、映像や音声信号の出入力時の処理など様々な用途に使われるアナログ系デバイスに強みを持つが、2004年の新潟中越地震で工場が被災したことや、その後の三洋電機の経営不振により投資抑制を強いられた。2000年度には566億円だった三洋電の半導体事業への設備投資額は、08年度には48億円に落ち込んだ。「コストダウン投資が不足した」(田端輝夫・三洋半導体社長)ことによる競争力低下も2010年3月期までに3期連続の営業赤字の原因となった。

 オン社のキース・ジャクソン社長は今月15日、買収合意後の記者会見で「三洋半導体に向こう数年間でもっと投資を行いたい」と語り、田端社長も「今よりはずっと最先端の投資ができる」と期待感を示した。

 (ロイター日本語ニュース、浜田健太郎;編集 田巻 一彦)

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