[北京 11日 ロイター] 11日に発表された8月の中国の各種経済指標は、鉱工業生産やマネーサプライM2の伸びが加速し、市場予想も上回るなど、政府の融資・不動産抑制策にもかかわらず、経済活動が依然活発なことを示した。
固定資産投資も底堅く、消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比3.5%と1年10カ月ぶりの高水準となった。
市場では、政府の抑制策と世界経済の軟調さが中国経済を圧迫する可能性が懸念されていたが、一連の経済指標はソフト・ランディング(軟着陸)シナリオを描かせる結果だった。
ストーン・マッカーシー・リサーチ・アソシエーツ(北京)のエコノミスト、トム・オーリク氏は「すでに一部でソフト・ランディング説が出ていたが、この結果をみると、滑走路に足をつくことなく浮上していくかのようだ」と述べた。
国家統計局によると、8月の鉱工業生産の伸びは前年比13.9%となり、7月の同13.4%から加速した。
消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年比3.5%。これも7月の3.3%から加速した。前月比では0.6%上昇した。
生産者物価指数(PPI)は前年比4.3%上昇となり、7月の同4.8%上昇から鈍化した。前月比では0.4%上昇だった。
小売売上高は前年比18.4%増となり、7月の同17.9%増を上回った。
1─8月の都市部固定資産投資は前年比24.8%増加となった。1─7月は同24.9%増だった。
各種指標のうち、鉱工業生産、CPIの前年比上昇率、小売売上高、都市部固定資産投資が市場予想を上回り、PPIの前年比上昇率だけが下回った。
ロイターがまとめたエコノミストの予想は、鉱工業生産が前年比13.0%増、CPI上昇率が前年比3.4%、PPI上昇率が前年比4.5%、小売売上高が前年比17.8%増、都市部固定資産投資は前年比24.5%となっていた。
市場の関心は不動産抑制策に集中しているが、ゴールドマン・サックスのエコノミスト、Yu Song氏とHelen Qiao氏は、政府がここ数カ月インフラ投資を加速させ、実際は緩和的な政策を実施していると主張。
両氏はリポートで「政府のそうした緩和策の規模はこれまで明らかになっていなかったが、前日発表された8月の貿易統計で明らかになった輸入の増加、きょうの固定資産投資と鉱工業生産は、緩和の程度が当初予想していた以上であることを示唆している」と指摘した。
税関総署が10日発表した統計によると、8月の輸出は前年比34.4%増、輸入は同35.2%増となった。輸入が予想以上に増加し、貿易黒字は7月から縮小した。
CEBM(上海)のエコノミスト、Wang Han氏は「8月の経済指標は、鉱工業生産の回復など、経済の安定化トレンドを確認し、内需主導型経済への転換をうかがわせている」と指摘した。
中国人民銀行(中央銀行)が発表した8月のマネーサプライM2伸び率は、前年比19.2%。7月の同17.6%から伸びが加速し、エコノミストの予想の17.5%も上回った。
人民銀行のウェブサイト(www.pbc.gov.cn)によると、8月の人民元建て新規融資はネットベースで5452億元となり、7月の5328億元から増加した。
8月末時点の人民元建て融資は前年同月を18.6%上回った。
ロイターがまとめたエコノミストの予想中央値は、新規融資が5000億元、月末時点の融資は前年比プラス18.4%となっていた。