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中国レアアース禁輸報道、代替ビジネス活発化の可能性も

  水野 文也記者

 9月24日、中国レアアース禁輸報道について株式市場では、代替ビジネスが活発化するきっかけになるとの指摘もある。写真は中国・江西省のレアアース採掘場で8月撮影(2010年 ロイター)

 [東京 24日 ロイター] 中国が日本へのレアアース(希土類)輸出を禁止したとの報道に関して、株式市場では材料として消化難となった。中国高官が報道内容を否定したほか、この問題の根源となっている衝突事件について、那覇地検が中国人船長の釈放を決定したことで事態は収束に向かう可能性が高まってきた。 

 しかし、レアアースに関しては今回の件にかかわらず、供給確保は将来的な課題となっているため、代替ビジネスが活発化するきっかけになるとの指摘もある。

 23日付のニューヨーク・タイムズ紙は、尖閣諸島付近で発生した日本の巡視船と中国の漁船との衝突事件を受けて両国間の緊張が高まる中、中国が日本へのレアアース輸出を禁止したと報じた。匿名の業界関係者の話としている。同紙によると、禁輸はすべてのレアアースが対象で今月末まで。中国のレアアースのトレーダーはロイターに対し、禁輸は聞いていないと述べた。ある日本の通商担当高官はロイターに、禁輸のうわさは聞いたことがあると語ったが、これ以上のコメントはしなかった。

 24日の東京株式市場では、欧米景気に対する不安、米国株安や外為市場でドル/円が円高方向に振れていることを嫌気し、輸出関連株を中心に売り優勢の展開となったものの「レアアース問題をメインの材料として織り込む様子にはならなかった」(準大手証券情報担当者)という。フィノウェイブ・インベストメンツ・チーフストラテジストの山岸優氏は「この問題は市場にネガティブな材料ではあるが、現時点では消化難といった感じだ。日中政府が緊張を高まる要因となった衝突事件の打開に向けて歩み寄るとの期待もある」と指摘する。実際、共同通信によると、漁船衝突事件で那覇地検は24日、中国人船長を処分保留で釈放する決定。市場では、これをきっかけに両国の緊張が和らぐと期待する声が出ていた。

 他方、レアアースに限って論じれば、目先の材料ではなく「今回の問題が生じなくても今後の課題として注目される」(中堅証券幹部)という。既に、中国政府は今年7月、レアアースの輸出に急ブレーキをかけており、液晶パネルやハードディスクドライブ(HDD)に使われるガラス製品の生産・出荷に支障が出るリスクが浮上。レアアースの生産は中国が世界で9割以上のシェアを握っているが、中国国内の需要拡大もあり、毎年更新される輸出許可枠が来年以降、かつての水準に戻るめどが立っていないためだ。

 こうした中、レアアースの代替技術について関心が集まっている。東洋証券・ストラテジストの檜和田浩昭氏は「安定調達が課題となる中、この一件をきっかけに、代替ビジネスが見直される可能性がある」と話す。実際、24日の株式市場では、貴金属リサイクルを手掛けるアサヒホールディングス5857.Tや松田産業7456.Tが連想買いを集めた。

 ただ、アサヒホールディングスでは「レアアースは事業として行っていない」(広報担当者)という。一方、松田産業の広報担当者は「技術的にレアアースの中で抽出できるものもあり、顧客からも引き合いはある。ただ、価格面から現時点ではビジネスとはなっていない。今後について、事業化はあくまでもコスト面で折り合うかどうかだ」と語っていた。

 資源関連としてマーケットで注目される大手商社の中で、レアアースの回収事業に取り組む動きが出ている。例えば、住友商事8053.Tでは、既に、カザフスタンの国営原子力公社カザトムプロムと共同で、同国におけるウラン鉱残渣を活用したレアアース回収事業を検討する事に合意し、合弁会社を設立。ここではレアアース分離品の生産体制を確立し将来的には現地でレアアースを活用した高付加価値品の生産を行うことも視野に入れている。カザフスタンで生産するレアアースには、電気自動車のモーターなどに欠かせないディスプロシウムや、ネオジムが豊富に含まれているという。

 また、丸紅8002.Tの子会社である丸紅テツゲンは、使用済みの自動車からレアアースを回収・リサイクルする事業に乗り出し、モーター向けに使うネオジムやディスプロシウムのレアアースを回収、販売するとしている。同社でも、松田産業と同様にビジネス上で課題となるのはコスト面。現状の技術では市況が2─3倍上昇した程度ではとても採算に合わないという。さらに、自動車を採取源とするためには、エコカーの廃車を待つ必要があり、数年先をにらんだビジネスと位置付けている。

 このビジネスに関して丸紅テツゲンの広報担当者は「政府が補助金を出すなどの施策を打ち出さなければ、現状ではビジネスとして難しい。今回の衝突事件、禁輸報道などが、レアアース関連の政策を進展するきっかけになればと思っている」と語っていた。

(ロイター日本語ニュース 編集 宮崎 大)

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