[東京/幕張(千葉市) 29日 ロイター] 任天堂7974.OSは29日、2011年3月期の連結営業利益を従来予想の3200億円から2100億円に下方修正したと発表した。前年同期は3565億円。
携帯型ゲーム機「DS」と据置型ゲーム機「Wii」の販売が想定を下回っているほか、円高進行も響く。同日、発売日と価格を公表した「ニンテンドー3DS(スリーディーエス)」の販売開始が国内で来年2月26日からとなり、最大商戦期の年末に間に合わない予定になることも要因。
裸眼で3D映像のゲームが楽しめる「3DS」の国内での希望小売価格は2万5000円。米国、欧州、オーストラリアでは来年3月中に発売する予定で、時期や価格の詳細は各国で発表するという。
千葉市内のホテルでアナリスト説明会を開いた任天堂の岩田聡社長は「期初には年内に発売できることが望ましいとの前提で今期の予想を作った」ことを明らかにした上で、3DSの発売が年末商戦に間に合わなくなったことで「通期の業績予想にマイナスの影響が及んだのは事実」と認めた。発売日の遅れの理由については「年内に市場投入すると十分な数量を用意することは難しい」と指摘し「新製品の完成度を高めて、十分な数量を揃えて発売することが望ましいと判断した」と語った。
3DSの発売時期が当初想定より遅れたこともあり、今期のDS販売計画は従来予想の3000万台から2350万台に引き下げた。このうち、2月以降に発売する3DSは400万台と見込む。Wiiの販売計画も前回予想の1800万台から1750万台に下方修正した。前年同期の実績はDSが2711万台、Wiiが2053万台で、今期はともに前期を下回る見込み。
岩田社長は、DSの販売計画の下方修正について「3DSを年内に発売しないことのほか、今年の上期は昨年に比べるとDSの販売数が減っている」と説明した。また、Wiiの下方修正については「大きな変動の数字ではない。現状の足元をみて新しい予想で再計算した」と述べた。
<為替の想定はドル85円・ユーロ110円>
これまで、通期予想の前提とする為替レートは、ドル/円を95円、ユーロ/円がを120円としていた。しかし、足元の円高進行を受けて、下期以降の為替レートを、ドル/円を85円、ユーロ/円を110円に変更した。
営業利益予想のほか11年3月期の連結業績は、売上高予想を1兆1000億円(従来予想は1兆4000億円)、経常利益を1450億円(同3200億円)、当期利益予想を900億円(同2000億円)にそれぞれ下方修正した。4―9月期の業績予想は、売上高が3600億円(従来予想5500億円)、営業利益が500億円(同1200億円)にぞれぞれ下方修正した。円高進行による為替差損によって、経常損益は従来予想の1150億円の黒字から50億円の赤字に、当期純損益は従来予想の700億円の黒字から20億円の赤字に修正した。
アナリスト説明会に同席した森仁洋専務は、円高進行による業績予想への影響について「上期の予想は今日の為替レートで、ドル85円・ユーロ110円を前提に計算した」と述べた。下期については「(前提レートを見直したので)大きな影響は出ないと思う」と語った。
配当予想は、従来まで年間配当を1株あたり830円(中間310円)としていたが、550円(中間130円)に変更した。前年同期の年間配当は930円(中間270円)だった。
<3D撮影・通信機能を充実>
3DSは「ニンテンドーDS」シリーズの後継機で、従来のDSソフトも利用可能な互換機能がある。DSシリーズは、04年12月の発売以来、10年6月末での全世界の累計販売台数が1億3000万台を超える。DSシリーズは、04年12月の「初代DS」のほか、本体を軽量化した「DS Lite」(06年3月発売)、カメラ内臓の「DSi」(08年11月発売)、大画面化した「DSiLL」(09年11月発売)がある。
3D画像を専用メガネなしで楽しめるのが3DSの最大の特徴だが、本体前面に搭載された2つの内蔵カメラで立体写真が撮影できる機能も付けた。さらに、街中のアクセスポイントでインターネットからのデータや無料ソフトなどを自動的にダウンロードする「いつの間に通信」や、街中ですれ違った3DSユーザーと自動的にデータ交換する「すれ違い通信」など通信機能を充実させた。
任天堂は同日、日本テレビ放送網9404.Tとフジテレビジョン(フジ・メディア・ホールディングス4676.T)とそれぞれ業務提携し、3D映像の自動配信サービスを始めると発表した。両テレビ局から数分間の3D映像の供給を受けて、3DSの「いつの間に通信」を通じて毎日配信する。
3DSの発売に合わせて、カプコン9697が「ストリートファイター4 3Dエディション」、バンダイナムコゲームス(バンダイナムコホールディングス7832)が「リッジレーサー3D」、コナミ9766が「ウイニングイレブンシリーズ」、コーエーテクモゲームス(コーエーテクモホールディングス3635)が「戦国無双」などを用意し、任天堂だけでなく、複数のソフトメーカーが3DS向けのソフトを発売する予定。
アナリスト説明会に先立って幕張メッセで3DSの説明会を開いた岩田社長は「任天堂のハードで売れるのは任天堂ソフトばかりで、ソフトメーカーのソフトが売れていないのではないかという課題がある」と指摘した上で、「3DSではスタートダッシュの段階でソフトメーカーと足並みをそろえていく」と述べた。
(ロイター日本語ニュース 村井 令二)