for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

焦点:過剰流動性相場の「宴の終わり」、市場に警戒感

 [東京 12日 ロイター] 過剰流動性相場の「宴の終わり」が近付いているのではないかとの警戒感が市場関係者の間で強まっている。米金融緩和を織り込み過ぎたヘッジファンドが11月の決算を前に、コモディティや高金利通貨、株式などに広げたポジションを巻き戻す可能性があるという。

 10月12日、過剰流動性相場の「宴の終わり」が近付いているのではないかとの警戒感が市場関係者の間で強まっている。写真は2006年1月、東京証券取引所で(2010年 ロイター/Toru Hanai)

 現在は米景気減速懸念による米金融緩和観測が株価上昇をもたらす「不況下の株高」だが、景気減速自体や企業業績の悪化に市場の関心が移れば構図は崩れる。一方、景気や企業業績の改善期待が強まれば、金融緩和観測は後退する。財政に頼れない各国の低金利状態はしばらく続くとしても過剰流動性だけでリスク資産の価格を押し上げ続けるには限界があるとみられている。

 <米金融緩和を過剰に織り込みとの見方>

 米連邦準備理事会(FRB)の10月6日時点のバランスシートの規模は2兆2900億ドル。これに対しロイターが8日の米雇用統計発表後に実施した米プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)調査では回答した16社すべてがFRBによる追加の量的緩和を予想。緩和規模の予想レンジは5000億─1兆5000億ドルとなっている。

 バランスシートの20%から65%という巨額の量的緩和実施という予想を背景にヘッジファンドなどは思惑先行のポジションを拡大。マクロ指標が悪くなればなるほど金融緩和規模が大きくなるのではないかとの観測が強まり、米金利が低下、ヘッジファンドなどが低コストのドルを調達し、コモディティや高金利通貨、新興国の株式などに投資するという構図(ドルキャリー)になっている。前週末に発表された9月米雇用統計も市場予想より悪化し米緩和観測の材料となった。

 しかし、最近では米金融緩和を過剰に織り込み過ぎではないかとの声も多くなってきた。バーナンキFRB議長は必要に応じて追加金融緩和を実施する用意があるとは述べているが、量的緩和に関する言質を与えてはおらず、市場の思惑だけが先行しているためだ。

 「景気減速を阻止しようというバーナンキFRB議長の崇高な理念が投機筋に利用されている」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は話す。金、銀、銅などのコモディティだけでなく、出遅れていた原油価格も米在庫が増加したにもかかわらず上昇するなど投機マネーの勢いが増している。 

 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は8日、FRBが追加緩和を決定し国債の買い入れを拡大する場合、慎重なペースで行うべきとの見解をあらためて示した。イエレン米連邦準備理事会(FRB)副議長は就任後初の講演で、政策金利を低水準に抑えることは金融バブル発生につながる恐れがあると警告した。タカ派で知られるホーニグ・カンザスシティ地区連銀総裁とフィッシャー・ダラス地区連銀総裁は米追加金融緩和に反対の考えを示している。「米国債を買い入れるにしても小刻みに購入する可能性もある」(藤戸氏)とされ、ヘッジファンドなどが過剰に織り込んだ緩和観測の反動が懸念されている。

 <ヘッジファンドの巻き戻しを警戒>

 前週、米市場でエクイニックスEQIX.Oという会社の株価が急落したことが「宴の終わり」を感じさせたとの指摘もある。エクイニックスは米国のデータセンター大手でクラウド・コンピューティング関連銘柄として7月以降で約30%近い上昇をみせていたが、通期の売上高予想を12億3000万ドルから12億2000万ドルに1000万ドル下方修正すると一気に30%以上の株価急落となった。米セールスフォース・ドットコムCRM.Nなど人気を集めていた他のクラウド関連銘柄も調整局面に入っている。

 12日には米半導体大手インテルINTC.Oの7─9月期決算発表があるが、先にガイダンスを発表した韓国のサムスン電子005930.KSの第3・四半期業績見通しは市場予想を下回った。「7─9月期の業績が良かったのはすでに織り込み済み。10月以降の見通しが株価を左右する」(東洋証券・情報部長の大塚竜太氏)。ミクロに対するセンチメント悪化が相場のムードを変える可能性もある。

 ヘッジファンドの多くは11月に決算を迎えるため、ポジション巻き戻しの警戒感が強まっている。週末の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では「通貨安競争」を阻止するための合意には至らなかったほか、9月米雇用統計が予想を下回ったことで米金融緩和観測を背景とするドル安・円高が一段と加速しているが、イベント通過でいったんの材料出尽くし感も出ているという。

 大和証券キャピタルマーケッツ金融証券研究所・投資戦略部部長の高橋和宏氏はマクロ指標が好転すれば流動性相場が逆回転を起こす可能性もあると警告する。「9月米雇用統計を通過し、これ以上米金融緩和観測を強める材料も当面見当たらない。米雇用統計はそれほど悪くなかった。米金融緩和期待を背景にした流動性相場の持続にもいったんの限界が来る可能性がある」という。

 米金融緩和観測の後退はドル安・円高トレンドの転換も意味し、日本株にとってはポジティブだが、世界的な資金巻き戻しの中で、どこまで「円安」が日本株を下支えてくれるかは不透明だ。

 景気減速自体や企業業績の悪化に市場の関心が移ればポジションの巻き戻しが起きる半面、景気や企業業績の改善期待が強まっても金融緩和観測は後退するという狭い道を流動性相場は歩んでいる。財政赤字に苦しむ先進国は低金利状態をしばらく続けるとみられ、折に触れて過剰流動性相場が復活する可能性があるが、ファンダメンタルズの裏付けがない以上、常に危うい「砂上の楼閣」ともいえる。

 (ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者;編集 石田仁志)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up