[イサカ(米ニューヨーク州) 25日 ロイター] 米ニューヨーク連銀のダドリー総裁は25日、連邦準備理事会(FRB)は「魔法の杖」を使って一夜にして経済を立て直すことはできないが、景気に「不可欠な」支援を提供することはできるとの認識を示した。
また、経済状況が改善しない限り、FRBは景気回復に向けた追加措置を講じるべきとの考えをあらためて表明した。
ダドリー総裁はFRBの中でも追加金融緩和に肯定的な立場を最も明確に示している当局者の一人。
市場では、11月2─3日の連邦公開市場委員会(FOMC)で長期資産の追加買い入れが決まるとの見方が強まっている。
<ホーニグ総裁は「危険なギャンブル」と批判>
ただ、カンザスシティ地区連銀のホーニグ総裁は、さらなる金融緩和は米経済をリスクにさらす、との考えを示した。
同総裁は「量的緩和には現実的なリスクがある」として、追加的な資産買い入れに踏み切ることは「非常に危険なギャンブルだ」と述べた。
ホーニグ総裁は自身が連銀内で少数派であることを認めている。同総裁は今年、FOMCの決定に6回にわたって反対票を投じている。
<「追加措置は正当化される可能性が高い」>
ダドリー総裁は講演で、経済が完全に回復するまでの道は「長く、困難」になる可能性が高いとし、過去数カ月間で勢いは弱まったと指摘。
「FRBが魔法の杖を振って、過去の行き過ぎが残した問題を直ちに消滅させることはできない」とした上で、「しかし、必要な調整のために不可欠な支援を提供することは可能だ」と述べた。
さらに「現在の失業率およびインフレの水準と、これらの指標が望ましい水準に戻るまでにかかると予想される期間の長さは受け入れがたい」とした自身の最近の発言を繰り返し、「雇用とインフレの双方でほどなく改善が見られるとの自信が高まる方向に経済見通しが変化しない限り、FRBの追加措置は正当化される可能性が高い」との考えをあらためて示した。
<インフレリスク>
追加緩和に反対する陣営からはインフレリスクを懸念する声が出ているが、経済再生諮問会議議長を務めるボルカー元FRB議長は、米国は今後数年にわたりインフレ高進のリスクには直面しないとの認識を示した。
ボルカー氏は金融規制改革に関する討論会で「現在、インフレは問題ではない。来年も、今後数年間も問題にはならない」と指摘した。
その上で「率直に言って、デフレに陥る可能性は見受けられない」とも述べ、「一定期間にわたり、物価安定は力強い経済の一助になる」との見方を示した。
<段階的なアプローチか、大規模な買い入れか>
ダドリー総裁は、FRBによる資産買い入れについて、段階的なアプローチと一度に大規模な買い入れを行う手法のいずれがより有効かは経済の状況次第との認識を示した。
総裁は「経済見通しが急激に悪化した場合、いかなる措置でも大規模に実施することが適切かもしれない」とした一方、「金融政策がほぼ適切だと判断し、微調整を行いたいのであれば、そうとは限らない」と述べた。
FRBが11月のFOMCで追加緩和(QE2)を発表するとの市場の観測をめぐる質問には、「市場に織り込まれているかどうかはほとんど重視しない。FRBはその使命を果たすために最も適切な方法に基づいて決定を下す」と答え、「QE2はコストと効果を慎重に検討した上で、実施が理にかなうかどうか判断する必要がある」との見方を示した。
為替相場については、ドルはFRBの政策目標ではないと指摘。FRBが完全雇用と物価安定に専念していれば「ドルはドルで動くだろう」と述べた。
住宅差し押さえ手続きをめぐる問題については、FRBとして住宅市場や金融市場、経済全体への影響を注意深く見守っているとあらためて述べた。