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特集マネー奔流:ドル安一服、年内に再び80円接近も

 [東京 19日 ロイター] 今春からのドル安・円高傾向に一服感がみられるが、現在は売られ過ぎたドルを買い戻す調整局面であり、ポジション巻き戻しが一段落すれば、再び円高に振れる場面が到来するとの見方が多い。

 11月19日、ドルは年内に再び80円接近も。写真は8日東京の為替両替コーナーで(2010年 ロイター/Issei Kato)

 米景気回復が鮮明になり、景気回復に根差した金利上昇が見込めるまでは、ドルの本格的反発は棚上げされ、80―85円での攻防が続きそうだという。 

 <ドル安基調が変化するとの見方は少ない>

 11月1日に15年半ぶりの安値80.21円まで下落したドルは、その後じりじりと上昇し、18日は1カ月半ぶりの高値83.79円をつけた。米国の追加量的緩和観測が後退したほか、米長期金利が上昇、米経済指標の一部が予想外に堅調だったことを背景に、春ごろから続いてきたドル安/円高の流れに変化が現れている。

 しかし市場参加者の間から、ドル安基調が変化するとの声はあまり聞こえてこない。現在のドルの上昇は、経済指標などのファンダメンタルズに反応したものではなく、あくまでファンドなどによるドル買い戻しに過ぎないとの見方が支配的であるためだ。

 「このまま一本調子でドル高/円安が進むと考えている人はそれほどいない。ポジションの巻き戻しが一巡して、もう一度80円に向かって円高になる局面が年内にあると思う」と、バンクオブアメリカ・メリルリンチのシニア金利通貨ストラテジスト、藤井知子氏は言う。 

 来週の感謝祭までは、ポジション調整によるドル買い戻しが続く可能性がある。だがその後は「12月の初めぐらいで転換して、年末に向けて元の(ドル高/円安)トレンドに戻ることはありうる」と、JPモルガン・チェース銀行の債券調査部長、佐々木融氏は話す。そのうえで「米国金利の上がる方向が明確にならないと、ドルは長期的には反発しない。それは年内にはない」と同氏は続ける。

 現在のドル高/円安の原動力は「11月に決算を控えるファンドのドル買い戻しや、年末特有の買い戻しといった、テクニカルな要因のほうが大きい」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア投資ストラテジスト・服部隆夫氏)とみられている。このため「海外短期筋の間では、ドル買い戻し気運が高まり、ポジションを閉じただけではなく、既にドル・ロングに傾いている。ドルが下落する火種はくすぶっている」(運用会社のファンドマネジャー)との見方は少なくない。

 <ポジション調整終了後は米長期金利とドルの関係修復へ>

 ドル/円相場と米長期金利はこれまで「正の相関」を保ってきた。このため、米国の量的緩和第2弾(QE2)をけん制する発言が米国内から相次ぎ追加緩和観測が後退したり、米国の長期金利が上昇すると、ドル/円相場が敏感に反応し上昇した。

 しかし、このところは、正の相関が崩れている。「(11月16日に)米国の長期金利が低下した場面でもドル/円は上昇した。ファンダメンタルズよりも、ポジションの巻き戻しでドルが買われていることを裏付けた」(邦銀)という。

 ポジション調整というイレギュラーな状態が終了すれば、正の関係が復活する可能性が大きい。このため、ドル/円の上昇には米金利の動向がカギになるが、このまま上昇を続けるとの見方は少ない。  

 15日のニューヨーク債券市場では、30年債利回りが4.4028%と半年ぶりの高値に上昇、10年債も2.9635%と3%台を視野に入れる水準にまで上昇した。しかし、その後は長期ゾーンの利回り上昇は一服している。

 クレディ・アグリコル証券の加藤進マネージング・ディレクターは「現時点で緊急性はないが、米長期金利が3.5%などの水準に跳ねた場合、金利上昇リスクを抑えるため、(QE2の1回当たりの国債買い入れ額を増やして、6000億ドルの買い入れ終了時点を来年の6月から)前倒しすることなども検討されうる」と指摘する。

 市場では「FED(連邦準備理事制度)は金利低下、あるいはドル安を通じた景気刺激策に頼らざるをえない」(バークレイズ銀行のチーフFXストラテジスト・山本雅文氏)ため、むしろ米国債の金利は低下する可能性があるとの見方も出ている。 

 (ロイターニュース 久保 信博記者 編集:伊賀 大記)

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