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焦点:アイルランド支援で市場の関心はポルトガルやスペインに

 [ブリュッセル 28日 ロイター] 欧州連合(EU)がアイルランド支援を決めたが、これでユーロ圏債務危機がポルトガルに伝播するとの観測が払しょくされたり、スペインに防護壁が築かれる可能性は低い。

 11月28日、アイルランド支援で市場の関心はポルトガルやスペインに集まっている。写真はブリュッセルの欧州委員会本部。10月撮影(2010年 ロイター/Francois Lenoir)

 ギリシャから始まった欧州ソブリン債務危機。アイルランドは、ギリシャとは違う、財政赤字や銀行セクターの問題への取り組みで外部の支援は必要としない、と繰り返し主張したが、数カ月で危機の渦中に陥った。

 850億ユーロのアイルランド支援が決定したことで、金融市場でのユーロ圏債に対する圧力は一時的に和らぐかもしれないが、ポルトガルとスペインに新たな圧力がかかる可能性が大きい。前週、アイルランドの次に支援が必要となるのはポルトガルとスペインとの見方から、両国国債利回りは急上昇した。

 「伝染を止めるのはほぼ不可能」と言うサウスウェスト証券のシンジケート・仕組み社債部門責任者、マーク・グラント氏は「アイルランドに対処しても解決しないだろう。そうなれば債券保有者の関心は、ポルトガル、スペイン、イタリア、ベルギーといったEUで構造的な財政問題を抱える国に向かう。ドイツは例外として、安全なソブリン債はないと思える」と指摘した。

 スペインのサパテロ首相は前週、ギリシャやアイルランドに追随して支援を要請する可能性はない、と述べた。同国のサルガド経済・財務相も28日、同様な見解を示した。

 ポルトガルのソクラテス首相も、支援要請の可能性を否定している。

 アイルランドの状況はギリシャとは違い、ポルトガルの状況はアイルランドと異なり、スペインの状況もポルトガルと違うと言えるが、いずれの国も、高水準の財政赤字あるいは低成長見通し、多額の債務、経営難の銀行など、市場に不透明感をもたらし、リスク警戒感を強めるのに十分な悪条件を備えている。

 インベステックのチーフエコノミスト、フィリップ・ショウ氏は「合意されたアイルランド支援策がイベリア半島から広がるこうした懸念を緩和する、という兆しはまったくみられない」と指摘した。

 <厳しい試練>

 EUの首脳や財務相は今、さまざまな試練に直面していると認識しているだろう。

 アイルランド支援が欧州ソブリン不安に歯止めをかけられなければ、金融市場に対し、ポルトガル、そしてスペインも救済する能力があるとアピールする必要が出てくる。

 理論上、ポルトガルとスペインを支援する財源は確保している。5月に創設されたセーフティネットの規模は7500億ユーロ。1100億ユーロのギリシャ支援は別枠で行われている。

 エコノミストの試算では、ポルトガルが支援を要請した場合に必要となるのは最大1000億ユーロ。欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の範囲内に十分収まる。しかしスペインとなると状況が違ってくる。スペインの経済規模は、ポルトガルの2倍、アイルランドとギリシャの合計に相当する。理論上、スペインも支援する資金はあるが、両国を支援すると資金を使い果たしてしまう。それは、次にベルギーやイタリアが危機に陥った場合、EUがどういう対応をとるかと、という憶測を呼ぶことになる。

 マクロ経済的ファンダメンタルズ(基礎的条件)の観点で言えば、ポルトガルもスペインも支援を必要としない。しかし、今回の危機は、ある国をめぐる不安感からその国の債券利回りが上昇して資金調達コストを押し上げ、当該国が危機的状況に追い込まれる、というセンチメント主導の様相を呈している。

 ブロックスハムのチーフエコノミスト、アラン・マクアイド氏は「問題は、市場が動いてしまったこと。市場参加者はもはや、アイルランドのことをさほど気にしていないと思う。すでにかれらの矛先はポルトガルとスペインだ。危機は動いた。政治家は認識していないようだが、市場はすでに認識している」と述べた。

 長期的に最善の防護策は、ポルトガル、スペイン、アイルランドなどが基礎的財政収支を改善し、生産性と成長を高め、失業率を下げるような経済再建策を策定することだ。

 短期的には、EUが直近の問題に対処し、また問題をどう克服するかをきちんと説明する必要がある。これまでのEUのコミュニケーションは断片的で、かえって危機を深刻化させた感がある。

 EUの財務相は28日、アイルランド支援と併せて、2013年からの恒久的な危機対応メカニズムについて討議した。

 ドイツはかねてより、民間投資家も一定の負担をすべきと主張。しかし、前週の金融市場は、これが要因で一段と不安定となり、アイルランド、ポルトガル、スペインの状況をさらに悪化させた。

 結局、一律民間負担論は取り下げられ、EU財務相は、民間負担の件はケースバイケースで対応という玉虫色の方針に落ち着いた。

 今回のEUの対応で批判的な声は落ち着くかもしれないが、EUが危機を掌握できていると十分金融市場を納得させられるかどうかは、まだ分からない。

 (Luke Baker記者;翻訳 武藤邦子;編集 田中志保)

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