[バルセロナ(スペイン) 16日 ロイター] スペインのバルセロナで開催中の国際見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」では、ノキアNOK1V.HEと米マイクロソフトMSFT.Oの新たな提携が話題の中心だった一方、米グーグルGOOG.Oの基本ソフト(OS)「アンドロイド」が業界の活力の中心になっていることが浮き彫りとなった。
アナリストや投資家、メディアの間では、ノキアとマイクロソフトのスマートフォン(多機能携帯電話)事業での提携が賛否両論を巻き起こしたが、そうした騒ぎをよそに、端末メーカーからは新型のアンドロイド搭載機の発表が相次いだ。
韓国のサムスン電子005930.KSや台湾のHTC2498.TW、ソニー・エリクソン6758.TERICb.STは、今回の見本市の目玉として新型のアンドロイド搭載機を大々的に宣伝。台湾のエイサー2353.TWがマイクロソフトのOS「ウィンドウズフォン7」を搭載したタブレット型端末を披露した以外は、主要な新機種のすべてがアンドロイド端末だった。
ノキア・マイクロソフト連合から出てくる最初の端末は、早くても2011年末になるとみられている。
CCSインサイトのアナリスト、ベン・ウッド氏は「モバイル・ワールド・コングレスはただ単に、アンドロイドが業界にまん延していることを確認しただけだ」と述べた。
登場からわずか数年でここまで存在感を高めたアンドロイドだが、かつてパソコン業界でマイクロソフトがそうだったように、グーグルが携帯端末業界で圧倒的優位に立つことを懸念する声もある。
調査会社カナリスによると、昨年10─12月の世界のOS別スマートフォン販売で、アンドロイドがノキアの「シンビアン」を抜いて首位となった。
誰にでも無償で提供されるオープンソースのアンドロイドは、携帯電話の魅力を大きく左右するアプリケーションソフトの開発メーカーをひき付けるが、それこそが、ノキアがマイクロソフトとの提携を決めた大きな要因。
ノキアのスティーブン・エロップ最高経営責任者(CEO)は、パートナーとしてグーグルではなくマイクロソフトを選んだ理由として、スマートフォンOSでの米アップルAAPL.Oとグーグルによる寡占を避けるためと説明している。
業界は両社の提携について、競争やイノベーション促進の観点から概ね好意的に受け取めているが、株式市場の反応は冷ややかだ。
<オープン陣営の勝利か>
一方グーグルは、アンドロイド端末は27社から170機種が市場投入されており、スマートフォンの多様化に貢献していると主張。エリック・シュミットCEOは、基調講演後に記者団に対し「われわれはマイクロソフトとは完全に違う道を走っている。価値感、オープンソースで無償というアプローチ、われわれの取り組みは何もかもが異なっている」と述べた。
アンドロイドの採用が、端末メーカー独自での取り組みに比べ、タッチパネルなどの機能をスマートフォンに格段に早いスピードで行き渡らせたことは間違いない。
ただ、アンドロイドによって似たような製品が市場にあふれるようになり、端末メーカーの個性が奪われると懸念する声もある。また、アンドロイド端末の普及で本当に恩恵を受けるのは、グーグル・マップやGメールなどのサービスが爆発的に広がるグーグルだけだとの見方もある。
米インテルINTC.Oのポール・オッテリーニCEOは、コンピューター業界がたどってきた歴史を見れば、アップルのような閉ざされたものから、アンドロイドのようなオープンなシステムに移行するのは自然な成り行きだと指摘。同CEOは、パネルディスカッションの席で「閉ざされたモデルの一部は経験を最適化できるので生き残るだろうが、一般的に言えば、もし世界のエンジニアと開発業者すべての能力を生かすなら、オープン側が勝利する」と語った。